side:kyuhyun
「ダニエルさん。このたびは本当に申し訳ございませんでした。」
目の前の師長とヒョンが深々と頭を下げたのに続いて
俺はもちろん、ヒョクと途中から巻き込まれた形になったリョウクも
ソファーに悠然と座る病院きってのVIPであるダニエルに頭を下げた。
「いや、師長。頭をお上げください…皆さんも…」
ダニエルはスッと手を掲げ頭を上げるよう皆に言った。
あの騒動から3時間後。
VIPルームはやっと静寂が訪れていた。
「…なぁ。これって俺たちのせいなのか?」
ヒョクがそっと俺に耳打ちした。
俺は首をゆっくり左右に振った。
「しっ…」
「っ痛…」
リョウクがヒョクの脛を蹴った。
そう。
事の発端はすべて目の前にいるこのダニエル,
彼がすべて発端だったのに
結局俺たちがこうして頭を下げることになった。
目の前のヒョンの背中を見つめながら苦々しい思いを噛みしめた。
処置後に額に貼られたテープの下で傷がジンジンする。
結局。
この一連の騒動の収集をつけたのはリョウクだった。
いつもはいかにも非力でか弱く便りない感じで
笑顔を絶やさず慈愛に満ちたかわいいリョウク…
そのリョウクの本当の怖さを改めてみんな再認識した。
俺がダニエルさんに覆いかぶさるような状況を目にして、
皆が唖然とする中、ちょうどコーヒーを片手に
ダニエルのボディーガードが現れた。
何を勘違いしたのか、俺がダニエルさんに襲いかかってる
暴漢か何かと思ったらしく、コーヒーを投げ捨て”うぉぉぉぉ!”と叫びながら
皆を押しのけこちらにかけより、俺を軽々と摘み上げ
ソファーの椅子に投げつけた。
あっという間の出来事で誰も止められなかった。
背中をしこたま打ち付けて一瞬息が吸えず
ソファーの上で転げた。
ダニエルさんのボディーガードがそんな俺に
もう一度掴みかかろうとした。
『待てっ!!』
ヒョンの声が聞こえて、気が付いたらヒョンとボディーカードが
もみ合いを初めた。
ビックリして駆け寄ろうとしたヒョクは
ボディーガードが投げ捨てたコーヒーで足を滑らせ
滑って転んで腰と後頭部をしこたま打ち付けた。
ダニエルさんは貧血を起こしたまま
起き上がろうにも起き上がれず、
ボディーガードを止められなかったし…
もうすべてがごちゃごちゃだった。
そんな中リョウクの声が部屋中に響いた。
「ストーップ!!ストップストップストッープ!!!
みんなストーップ!!」
リョウクの声に一瞬で固まった。
それからのリョウクはすごかった。
まず、ダニエルさんのボディーガードを叱りつけ
部屋から出ていくか、その隅で立っているか
どっちかにしろと命令…そう、まさしく命令した。
それから、俺の額の傷に気づき、ヒョクにすぐトゥギ先生を
呼ぶように指示し、コーヒーまみれのヒョクは慌てて
ピッチで先生に電話した。
俺の傷に気づいたヒョンは何を勘違いしたのか
ボディーガードがこのケガを負わしたと勘違いし、
また、そのボディーガードに掴みかかろうとして
リョウクに止められた。
そしてヒョンは、キュヒョンのことになると使い物にならない人は要らない!!と
ダニエルのボディーガードの隣に立ってろとしこたま怒られた。
「はい、これで傷押さえて!」
そう言いながらガーゼを差し出すリョウクに
「あっ、どうもありがとうございます。」
となぜか思わず敬語で答えた。
そして、ベットに横たわるダニエルさんに近寄ると
その手を取り脈を図り、血圧チェックを行い、
異常がないかの確認を手際よくした。
その間、ちょっとでも口を挟もうとしようものなら
ジロリとにらまれ、とても口を開ける状況になかった。
「ダニエルさん。御気分は?」
突然現れた新参者のナースを最初はびっくりした面持ちで
見ていたダニエルだったが、リョウクの手を借り、
ベットの上に体を起こし”ふぅ…”と大きく息を吐いた。
「ありがとう。もうだいぶ落ち着いたようだ。」
「それはよかったです。」
リョウクはダニエルに向かってにっこり笑った。
そしてダニエルにソファーに移るようにお願いし、
ダニエルはおとなしくそれに従った。
「ヒョク、ピッチ貸して!」
そう言ってヒョクが差し出したピッチを受け取り
あっちこっちに電話をかけた。
やがてやって来た掃除担当の職員たちが
あっという間に血液で汚れたリネンやらなんやらを取り換え、
コーヒーや点滴液やほかのもので汚れた床も
あっという間にピカピカに磨き上げ帰って行った。
「で、どうしてこうなった?」
喧噪の中、ヒョクから連絡を受けたトゥギ先生が
駆けつけ、キュヒョン額の傷を覗き込んでいた。
「ダメだ。」
「え?」
「ちょっと時間がたってしまったから
このまま縫合できない。一回傷を洗う。処置室へ行くぞ。
ウニョク君、君も来て。」
そう言われて俺とヒョクはトゥギ先生のあとにつして出口へ向かった。
ヒョンが心配そうに見ていたが無視した。
「キュヒョン君。」
ダニエルさんに声を掛けられた。
一瞬足元を見つめふっと息を吐き
「はい?」と言って振り向いた。
するとすぐ眼の前にダニエルさんが立っていた。
一瞬体が後方に引いた。
そして俺の手を取り、”すまなかった”と謝られた。
「あっ、いえ、大丈夫ですから。」
そう言って手を引っ込めようとしたが離してくれない。
皆はただ黙って俺たちを見つめている。
「先生。キュヒョン君のこの傷は本当に大丈夫なんだろうか。」
ダニエルさんがトゥギ先生に聞いた。
「あぁ、きちんと傷を洗って処置すれば大丈夫でしょう。
この場所は一回同じように受傷してるので開きやすかった
だけでしょうし…」
「よろしくお願いします。私のせいで彼に傷を負わしてしまった。
キュヒョン君本当にすまなかった。」
そう言ってダニエルさんはいきなり俺をハグした。
「あのダニエルさん。とにかく傷の手当てをさせて下さい。」
慌てたトゥギ先生がダニエルさんにそういって間に割って入った。
そしてそのまま腕を掴まれ俺は部屋の外に出た。
そして今…
一連の報告をした後、病院側からの正式な謝罪ということで
婦長共々みんなでこの部屋を訪れたのだった。
師長自ら今後の検査スケジュールの説明と、
ケガをしたので今日は俺を業務から外す代わりに
リョウクが付くこととなったとの説明をした。
ケガだからしょうがないし、ダニエルも文句は言えず
黙ってうなずいていた。
まぁ、俺が望んだ形とは違うけど、
とりあえず外してもらってよかった。
「じゃぁ、シウォン先生後はお願いしますね。」
師長はそうヒョンに声を掛けて出て行った。
俺とヒョクとリョウクは軽く申し送りをした。
そして”失礼します。”そう言って俺も頭を下げ部屋を後にした。
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リョウクの仕切りはお約束です。
さて、次は…
そろそろウォンキュかな
(6 ̄  ̄)ポリポリ