これ以上ないってほどの高まりの中、
宙に放り出された形になって、
半ば呆然したままだった。
耳の奥がぼぁーってなってて、
ヒョンとヒョクの声がよく聴こえない。
なんでヒョンは全然平気なんだ?
俺だけこんなどぎまぎして・・・
俺がおかしいのか?
『え?じゃあ、なに?また預かってきちゃったのか?』
ヒョクが無言でうんうんと首を振る。
『ちゃんと、説明したんだよな?俺から頼まれたって。俺は誰からも受け取らないってのも。』
ヒョクがさっきよりも大きくうんうんと首を振る。
『じゃあ、どうしてこうなった?』
俺たちはリビングのローテーブルの上に置かれた
例の細長い包みをじっと見つめた。
最初見た時の綺麗なラッピングからは程遠く、
なんだか、ずいぶんよれよれになっていて・・・
返そうと必死にやりとりしてたのが伺えるのはたしかなんだけど・・・
ヒョク・・・
なんで負けた?

「と、とにかく、すまん!!俺にはムリだった!!」
俺の気が伝わったらしく、ヒョンがいきなり土下座した。
おでこを床にこすりつけ平謝りに謝っている。
俺は無言でソファーのクッチョンをヒョクに投げつけた。
『理由があるんだろ?こうなった理由。なんなんだ?』
ヒョンがまぁまぁまぁと俺を制しながらヒョクに聞いた。
「聞いてくださいよ!あのね・・・実はね・・・」
ヒョクが事の次第を身振り手振りを加えながら説明を始めた。
はぁ?
10年前に亡くなったお父さんの面影?
はぁ?
ネクタイをプレゼントしてあげたかったけどできなかった?
はぁ?
せめて父親の面影のある先生にもらって欲しかった?
はぁ?
一回だけでもしてくれたらお父さんもきっと喜んでくれるだろう?
はぁ?
それ聞いてたら断れなくなった?かわいそうで?泣かれちゃって?
はぁ~?!
そんなん、嘘に決まってんだろヒョク・・・お前バッカじゃ・・・ね・・・って
えっ?
ヒョン?
もしもし、ヒョン?
「お前ら2人、何泣いてんだよ!!おかしいだろそれ!!!」
俺は思わず立ち上がりふたりを見下ろしながら怒鳴った。
ヒョクだけならまだしも、なんで俺のヒョンまで涙ぐんでんだよ。
この2人・・・ここまでバカだとは思わなかった。
口をあんぐり開けてる俺を尻目に
『何だキュヒョン。今の話聞いて感動しなかったのか?そうかそうか・・・』
「先生ありがとぉ~、わかってくれてぇ~。キュヒョン、お前冷たすぎだぞ!」
などと言いながら手に手を取って頷きあう始末。
『分かった。明日だけ、明日だけこれをするよ。』
「先生ほんとですか?ほんとにほんとですか?」
『あぁ、本当だ。このシウォン、嘘はつかない。ヒョク・・・すまなかったな。』
「せんせー!!ありがとうございますぅ~!!!」
いいんだいいんだ。と頷きながらヒョンがヒョクと肩を組み合った。
ちょっと待てよ。
なんなんだ?この茶番は。
ヒョン、本気かよ。
俺の意志は?
もうどうでもいいのか?
そうなのか?
どこの世界に今の話しそのまま鵜呑みにする奴がいるんだよ。
これだから金持ちは世間ズレしてるって言われるんだよ。
ペシッ!ペシッ!
目の前で感動に浸っている2人の頭をプレゼントの箱ではたきあげ、
それをふたりの前に投げ捨て俺は”頭冷やしてくる。”と言って家を出た。
すぐ側のコンビニでも行ってこようとひとり歩きながら、
リョウガの言葉を思い出していた。
「ジャキジャキに刻んでバラバラにしてもう一度ラッピングして渡す。」
ひどいなそれって思ったけど、今ならわかるよリョウガ・・・
俺もそうしてやればよかった。
足を止め、夜空を見上げ、大きなため息をついてまた歩き始めた。