突然のキュヒョンからの贈り物に天地がひっくり返るほど驚き、
そしてキュヒョンの気持ちを全身で受け止め、神に感謝した。
最初、キュヒョンに別れを告げられるかと思っていたので
本当に心臓が止まるかと思った。
誰に何と言われようが、どう思われようが、
キュヒョンを抱きしめ泣いてすがるつもりで
そんな情けない姿を自分で想像もした。
けれど今は違った意味で心臓が止まりそうだった。
(もう限界だ・・・)
キュヒョンへの溢れる思いとここ数日の禁欲生活で
シウォンは心身ともに限界を覚えていた。
キュヒョンがくれたペアリング。
本当に驚いたし、こんなに喜ばしい瞬間は今までなく
心の底から湧き上がる激情に興奮が収まらない。
自分の指に嵌められた指輪の意味。
それを思うだけで高揚する。
キュヒョンの周りをリョウクやウニョクが囲み、
みんなでキュヒョンの指に嵌った指輪の話で盛り上がっていた。
ここ最近で見たことのない、はじけた笑顔でみんなとはしゃぐキュヒョン。
そんなキュヒョンを見つめずにはいられない。
そんな自分の視線に気が付いたキュヒョンと目が合う。
キュヒョンが頬を赤らめ目線が泳ぐ。
(かわいい・・・本当にかわいい・・・)
シウォンはキュヒョンに見とれ、見つめることをやめない。
またみんなと話を始めるが、自分の視線に気が付きキュヒョンが
目線をこちらへ向ける。
口が半開きになり、何か言いたげだけどその言葉をのみ込み耳まで赤くしながら俯く。
『啼かせたい・・・』
「おい!お前大丈夫か?」
「はぁ?何言ってんだよお前。」
自分では口に出して言ったつもりではなかったのだが、
思わず言葉がこぼれてしまったようで、シウォンの言葉を聞いた
ヒチョルとイトゥクが同時に叫んだ。
『え?』
「お前、今のはヤバいって」
『・・・ん?何?』
ふたりの言葉が耳に入らないシウォンは
キュヒョンを目で追ったまま、生返事で答えた。
「おい、お前それ視姦!!キュヒョンがまた逃げるぞ!」
ヒチョルがそんなシウォンをからかったがシウォンはもうそれどころではなかった。
「ダメだこいつ・・・すっかり腑抜けてるぜ」
「こんなのもらっちゃったからなぁ~」
2人がシウォンの手を取り、その指に嵌められた指輪を眺めた。
「あっ、そうだこれ。これやるよ。」
ヒチョルの手にはきれいなチェーンが2本ぶら下がっていた。
職務上、どうしても指輪を外すことが多いため
チェーンに通し、首から下げられるようにとヒチョルが用意してくれたのだった。
「これもハンギョンがお前たちのリングに合うものを用意してくれた。
これは俺達からのプレゼントだ。」
シウォンはそれを手に取りしばらく眺め、弾かれたようにヒチョルとイトゥクに抱きついた。
「おいおい、抱きつく相手違うだろ!」
イトゥクがカラカラと笑い、ヒチョルが照れてシウォンの腕を振り払った。
☆
はぁ・・・
のぼせ上がった頭をクールダウンさせようとして冷たい水で顔を洗い、大きな鏡を覗き込んだ。
しかしそんなことぐらいでは、この胸の高まりはどうしたって収まるわけがなく・・・
iphoneを手に電話を掛けた。
『あっ、もしもし。どうも。チェ・シウォンです。急で申し訳ないが・・・』
「あっ、来た来た!先生早く早く!」
洗面所から戻るとリョウクに呼ばれた。
みんなで写真を撮ろうとリョウクの声掛けでスタンバイして待っていた。
みんなの輪の真ん中に座っていたキュヒョンの隣に座るよう促され腰を落とした。
キュヒョンの横顔を眺めていると不意にこちらを向きニッコリと笑いかけてきた。
シウォンの心臓は恋を仕立ての少年のようにその鼓動を早めた。
シウォンがキュヒョンの手をそっと握るとやんわりと握り返してくれた。
どちらからともなく指を絡め見つめ合い微笑みあった。
「もー、そこのお2人さん、ふたりの世界に浸ってないでこっち向いてよぉ~」
「そうだそうだ。リョウクが困ってるだろ。いちゃついてないでちゃんとこっち向け!」
イェソンとリョウクの言葉でその場が優しい空気に包まれ
みんな最高の笑顔でフレームに納まった。
「お前さぁ、ほんとすげぇ~な・・・」
ウニョクがキュヒョンの肩を抱きながらしみじみつぶやいた。
「え?なにが?」
キュヒョンは問い返した。
「え?なんとなく・・・うんスゲーよ・・・こんな・・・まさか自分から・・・」
「ヒョク、何言ってんだよ・・・
とにかくいろいろ心配かけて悪かったよ・・・」
何かを納得するかのようにうんうんと首を振るウニョクに
キュヒョンは涼やかに笑いながら声を掛けた。
不意にチャイムの音が鳴り響き、みんなが不思議そうに顔を上げる中
シウォンが大きなストライドで部屋を横切りドアを開けに向かった。
ドアの向こうにはチョウミが立っていた。
『やぁ、どうも・・・早かったな。突然すまない・・・』
ドアを大きく開け中へ入るよう促した。
「チェ・シウォン様のたってのご依頼とあっては・・・
ご希望通り、最上級のお部屋を誠心誠意込めましてご用意させていただきました。」
そう棒読みに近い挨拶と共に目の前のチョウミがカードキーをひらひらさせた。
『だから、そういう嫌味を言うなって。』
「いきなり電話してきて今からいつもの部屋と他の部屋も使うって言われて
有無を言わせず電話切ったりするからでしょ?今うちの従業員大騒ぎだよ。」
『いい客だろ?』
ニヤリと笑ったシウォンがチョウミの手からキーを
ひったくるように取り上げ部屋の中へ戻っていった。
もう、他の事は考えられず、とにかくキュヒョンと2人きりになりたかった。
キーを受け取ると自分とキュヒョンの荷物を持ち、
『ごめん、連れてくよ。』
と言ってウニョクと盛り上がってるキュヒョンの手を取り、驚くキュヒョンと出口へ向かった。
「ヒョ、ヒョン、ちょっと、ヒョン・・・あっ、ミーミ!」
「やぁ、キュヒョン。元気か?」
「う、うん。何でいるの?」
「ふん。後でそいつに聞いてごらん。」
チョウミがシウォンに向かって顎をクィっと上げた。
『じゃ、また。あとよろしく。』
シウォンはチョウミの肩をポンポンと叩いてキュヒョンを部屋から連れ出した。