星煌学院大高校の水野です。
今年の愛知県公立高校入試の「数学」の問題ごとの分析をしていきたいと思います。
今年の中3生達が挑んだ問題の記録と、未来の受験生へ向けて。
2024 愛知県公立高校入試
「数学」問題分析
【大問1小問】
(1)易 (2)易 (3)易 (4)やや易 (5)易
(6)易 (7)標準 (8)標準 (9)標準 (10)標準
(1)~(5)基本的な計算問題。
(6)基本的な不等式の問題。
(7)反比例の整数座標。負の数も考慮に入れることと、選び方に一捻りある問題。
(8)平方根の正誤問題。よくある平方根の性質に関する問題。
(9)箱ひげ図。去年に引き続き出題。四分位数を求めるなど、箱ひげ図の基本的なことを問う問題。
(10)図形。相似の砂時計型とピラミッド型を組み合わせた典型的な問題。
【大問2関数・確率】
(1)確率 標準
(2)関数と図形 標準
(3)関数の利用(速さ) 標準
(1)2点問題。数字が書かれた6枚のカードから1枚ずつ2枚取り出し、書かれている数字に関する確率。5種類の確率を求め、等しい組み合わせを選ぶ。答えに至るまでに樹形図を5周することになるので、途中で混乱する可能性が高い。いかに正確に数え上げることができるかが問われた。
(2)2点問題。2年ぶりに復活した「関数と図形」。最初は、2つの三角形の面積の関係から座標を求めるいつもの流れ。しかし、この後の解き方に詰まる可能性が高い。ABの直線の式を求めるために傾きを出し、AかBを代入して完了と解き方は単純。ただaという文字が座標に残り続けている分、そこから直線の式を求める流れにいくことが慣れていないと難しい。
(3)②が2点問題。ある距離を兄と弟が往復をして、2人がすれちがう回数。過去問で愛知県の関数の利用にしっかり慣れていれば、そこまで難しい問題ではない。2人のグラフを作成して数えていけばいい。速さ計算がしやすいように数値設定されているので、グラフの作成も比較的楽。
【大問3図形】
(1)角度 やや易
(2)平面図形 やや難
(3)平面図形・空間図形 難
(1)角度の基本的な問題。
(2)①は三平方一発で解ける、いわゆる取りやすい図形の①。②が難しい。線分EBと線分HFの関係。EBは①で求めているのでHFを出していく。まず、補助線としてADとBEを延長させることが必要。そしてこの拡張された図形において、合計3組の三角形の相似(延長線の交点をIとすると、△IAB∽△IDE、△IAF∽△IFG、△IGH∽△IED)を使う。順番に線分を求めていき、最後に線分HFに到達する。3組の相似はすべて1つの角を共有する相似なので、気付きやすい形にはなっている。ただルートあり分数ありで計算量も多く、最後までいきつくのはなかなか容易ではない。
(3)①は与えられた比を三平方することと、その比を線分の長さに変換することが必要。(2)の①と違い、決して楽な図形の①ではなかった。そしてまた②が難しい。半円内にある△EABをABを軸に回転させ、できる立体の体積を求める。円錐が2個くっついた立体ができるので、合計の高さと内部にできる底面の半径が必要。高さは①で出しているので、底面の半径を求めていくことになる。しかし、この後の方針をミスると泥沼にはまっていく。一番シンプルなのは、CとEから下に垂線を引き、合計2組の三角形の相似(Eからの垂線とABの交点をFとすると、△DAB∽△FAE、△COB∽△EFB)を使って求める解き方。ただ、数学という科目における残り時間が少ない極限状態の中、冷静にこの対処ができるのは同学年の何%なのだろうか。
【問題全体の分析】
・基本的な問題が13点分(1(1)~(10)、2(3)①、3(1)(2)①)。少し難しい問題が7点分(2(1)(2)(3)②、3(3)①)。かなり難しい問題が2点分(3(2)②(3)②)。昨年だいぶ簡単だった大問2と3が、今年は再び一昨年以前の水準に戻った。なので、昨年と比べ全体としては大幅に難化か。平均点は昨年15.2点から12点台後半になると予想。
・今年の問題で特徴的なのは、1つ1つの作業量が多いということ。マークシートで答え方が簡単になった影響も多少はあるのかもしれない。1(7)は大問1だが複数の条件を基に解いていかないといけない。1(9)や2(1)のデータや確率においては、グラフの正確な読み取りや地道に数え上げていくことが要求される。2(3)は2つのグラフを書き、そこから問題にあった状況を見つけていかないといけない。3(2)(3)の図形は言うまでもなく、答えまでの過程が長く複雑である。数学は1つの方程式を解いて終わりではない。時間がかかる問題をスピードと正確さを維持しながら、地道に考え続ける力が必要になってくる。
・愛知県の数学の戦略は一貫して変わらない。まず、大問1の10問と大問3(1)の角度の11点分をしっかり取る。大問3(2)(3)の図形4点分は①を中心に解き、難しい②は志望校次第ではスルーする。そして、最大の戦いは関数を中心とする大問2の7点分になる。3つの2点問題はすべて大問2にある。すなわち、入試数学を突破するには関数を攻略する以外に方法はない。関数と言っても、直線の式や交点やグラフが書けるだけでは全然足りない。とにかく「関数と図形(媒介変数・面積・2等分・等積変形)」と「関数の利用(速さ・動点・水槽)」。新中3生は今からでも復習できる。新中2生は「一次関数」が範囲になる2学期の数学が大きな勝負となる。もちろん、星煌学院の入試対策や定期テスト対策でも関数は大きな分野としてとことんやり込む。
I can't imagine you with all your complexity, all your perfection, all your imperfection.
-「Inception (2010)」