siva55の趣味部屋

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つぶやき、妄想の広場です

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こんばんはぁヾ(´∇`)ノ

えぇ、では予告ブログ通り、お話を投稿したいと思います!!

なおこちらの作品はBL作品となりますので、苦手な方はスルーしてください┏○ペコッ

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雪解けとともに、蘇る記憶……。
それはとても甘く切なく、体と心に刻み込まれた傷の痛み……。

無機質な部屋に香るジャスミンの香り。
この香りを嗅ぐ度に思いだす、一人の男。
今は、何処で何をしているのか知らないけど、あいつが好きなジャスミンは、今年もちゃんと白い花を咲かせている。

「深(シン)。お前は今、何処にいるんだよ。」
白い天井を見上げて思う。

『ジャスミンの花言葉はね『『愛想のよい』『愛らしさ』『官能的』『優美』なんだよ?司にピッタリだと思わない?』

―――――

題:「ジャスミンの香り」 第1話

深と出会ったのは、働いてる喫茶店に客として来たのが最初だった。
挙動不審にあたりを見回している深に営業スマイルで話し掛けた。

目を丸くして俺を見上げた深の顔は、今でも覚えている。
席についてもなにを注文するわけでもなく、何か難しそうな本を読んで過ごしていた。
時折、携帯に視線を移したけど、すぐにそこから目を離し本の続きを読む。
それを何度か繰り返していた。

見かねた俺は、紅茶をテーブルに置いた。
『あ、えっと、注文してないんですけど。』
『おごり。』
さっきまでの営業スマイルとはまるで違う俺の豹変っぷりに、驚くのは無理もない。
こっちがほんとの俺だから……。
『や、でも……。』
『気にしなくていい。』
きっと誰か待ってるんだろう。
その時はそう思っていた。

その後も、客が入れ替わっても、窓際の角の席の人物が本から視線をあげることはなかった。
俺が出した紅茶は、一度も口を付けられることなく冷めきってしまった。
入れ替えようと紅茶を持っていこうとしたとき、ようやく深が立ちあがった。
それも勢いよく店を飛び出していった。

テーブルの上には、ティーカップと分厚い本が置かれていた。

***

ようやくベッドの上で起き上がり、伸びをした。
背中のひっかき傷が薄くなってきた。
最後に会ってからどれくらいだろう。
最悪な別れ方をしたと後悔する一方で、これでよかったんだと思う自分もいる。

のろのろと仕事に行く仕度をして、玄関に向かい、鏡に映る自分の姿を見た。
やつれた頬、ぼさぼさな髪の毛、時間がなくて剃り忘れたまばらな髭。
「これじゃ、オーナーに怒られる……。」
誰に言うわけでもなく呟いて外に出た。
自転車を思い切りこいで、坂道を登り切って、一息ついてから坂を下った。
下った先に喫茶店はある。
ノンブレーキで一気に降り、街灯に自転車をたてかせ盗まれないようにチェーンを巻いた。

「司?」

鼻にかかる、男子にしては高い声。
この声を忘れるわけがない。
チェーンを握りしめたまま、動くことが出来なかった。
「司」
もう一度呼ばれ、ようやく振り返ることが出来た。
「深……。お前、何して……。」
「司に、会いたくて……。ここに来ればまた、司に会えるかなって……思って……。」
俺は本当に、その言葉を待っていたんだろうか。
深に会いたかった―――――それは変わりない。
けど、あんな別れ方をした今、どのツラさげて深と向き合えばいいのだろう。

お前はどうして、俺に会いたいと思ったんだ―――――。
俺は、お前に謝りたいことだらけなのに……。
両手を広げて抱きしめたい衝動を抑え、代わりに握り拳と、唇をかみしめた。

深は今も一人でいるのだろうか。
色々聞きたいことがあるんだ。
だけど……。

俺は深に背中を向けた。
背中を向けて、反対方向に歩きだした。
喫茶店はすぐ横なのに、店に入る気分じゃない。
兎に角ここから離れたい、深から―――――。

だけど、それを止められた。
「行かないで……。」
か細い声が背中に、体に響いた。
深が、俺の背中に頭をもたれ、腰に腕を回されている。

つづく――――

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字数制限により二話に分けさせて頂きます!

次回更新をしばしお待ちください┏○ペコッ