微生物学教室で腸内菌の研究に取り組んだ代田稔博士によって開発されました。
1930年(昭和5年)、代田稔博士は、消化管内で有用な働きをする乳酸菌の研究中、
胃液や胆汁など殺菌力の強い消化液にも耐えて腸に到達する乳酸桿菌を
人の腸内から選び出し、さらに強化培養することに成功したのです。
すなわち、人工胃液や人工胆汁を加えた培地で培養し、生き残った菌を選び出します。
これを何回か繰り返して、胃液や胆汁に負けないようにする工夫を行いました。
これがのちにヤクルト菌と呼ばれるラクトバチルス カゼイ シロタ株です。
そして代田稔博士は、この菌を用いて1935年(昭和10年)福岡市においてはじめて
乳酸菌飲料の製造・販売を開始しました。
ヤクルト菌は現在、もともと摂取する菌の数を200億~400億に増やして、
できるだけ多くの乳酸菌が腸に届くよう工夫しています。
ビフィズス菌
ビフィズス菌は善玉菌の代表選手です。ヒトの腸内フローラ(菌叢)を
形成する細菌の1種で、母乳栄養児の糞便中に他の細菌より優位(90%以上を占める)に
存在し、ビフィズス菌叢を形成しますが、人工栄養児糞便中には大腸菌群が多く、
ビフィズス菌は少くなります。ビフィズス菌は、糖を分解して、乳酸、酢酸、ギ酸などを
産生するので、母乳栄養児の腸内は酸性に傾き、
大腸菌や他の病原性腸内細菌は増殖しにくく、またビフィズス菌そのものが、
大腸菌などの増殖を抑制するので、ビフィズス菌は母乳栄養児の腸内感染症による罹患率、
死亡率を低くするのに役立っていると考えられています。
人乳中には乳糖が多量に含まれていますが、この乳糖の一部は小腸で分解されず
大腸に至り、ビフィズス菌叢の酵素の働きで分解されて腸内の酸性環境をつくることを助け、
人乳中のビフィズス因子が、ビフィズス菌の増殖を促進し、さらに人乳中の
ラクトフェリン、リゾチームなどが大腸菌の増殖を阻止するなど、いくつもの因子が重なって、
母乳栄養児の腸内ではビフィズス菌叢が優位を占めるようになるのです。
最近、育児用調製粉乳中にビフィズス菌の増殖を助ける物質
(ラクチュロースやガラクトシルラクトースなど)を添加したものが市販されていますが、
このような操作によって、人工栄養児の糞便も酸性に傾き、
腸内でのビフィズス菌の増殖がみられるようになっています。
ビフィズス菌には、主として母乳栄養児の腸管内で増殖するもののほか、成人の腸内や、
ヒト以外の動物の腸内で増殖するいろいろな亜種があることがわかっています。
ラブレ菌
ラブレ菌は、酸や塩分に強いため、胃液や腸液に耐えて「生きたまま摂取できる」
植物性乳酸菌として、健康食品等で使われることが多くなりました。
ラブレ菌は「すぐき漬け」の中に多く含まれている植物性乳酸菌です。
ラブレ菌が多く含まれている「すぐき漬け」は、平安時代からあると伝えられている
京都の伝統的な漬物の一種で、古くから京都の女性の美しさと深い関係が
あることで知られており、漬物の中でも特に乳酸菌が強く、京都では、
なくてはならない食材として親しまれてきました。
クレモリス菌
クレモリス菌は酸素を必要としない(通性嫌気性)菌なので、酸素のない環境の方が
活発に活動します。アセトバクター菌は酸素を必要とする(好気性)菌なので、
空気と触れ合っている表面近くに集まって層を作ります。
このアセトバクターの層がふたとなって、牛乳の中のクレモリス菌が酸素に
触れないようにするのです。 ヨーグルトの表面が黄色っぽくなることがあるのは、
アセトバクター菌の層ができているからです。 クレモリス菌は乳酸を作りますが、
実は乳酸は苦手です。クレモリス菌だけでヨーグルトを作ると、クレモリス菌は
自ら作り出した乳酸によって死んでしまうことがわかっています。クレモリス菌だけでも
ヨーグルトはできますが、できあがったヨーグルトの中の菌が死んだり弱ったりしてしまうと、
種菌としては不適当です。 アセトバクター菌はクレモリス菌が作りすぎた乳酸を
食べる性質があるので、ヨーグルトができあがった後も十分な数のクレモリス菌が
生き残ることができます。できあがったヨーグルトが種菌として使えるのは、
アセトバクター菌のおかげなのです。
EF-2001
乳酸菌の中でも免疫力を活性化する最も強い働きをするのが、
エンテロコッカス・フェカリス菌のEF-2001株という乳酸球菌と言われています。
乳酸菌には桿菌(細長い草鞋状)と球菌(丸いボール状)のものがありますが、
エンテロコッカス・フェカリス菌のEF-2001株は球菌でボール状の形をしています。
研究の結果、エンテロコッカス・フェカリス菌のEF-2001乳酸球菌は各種乳酸球菌の
中で最もTNF-アルファ活性が高く、ラクティス菌よりも免疫活性に優れています。
EF乳酸菌
EF乳酸菌(エンテ・コッカス・フェカリス菌)は、乳酸球菌の中の腸球菌の一つ
「エンテ・ロコッカス・フェカリス菌」です。
1906年イギリス人のF・アンドリュースとT・ギルダーによって発見されました。
日本では風間博士が健康な人の腸内より選び出し、健康に役立てる研究を進め、
1959年に商品化するなどの研究が行われてきました。
今日では「乳酸菌と健康」の研究は、医学・薬学・栄養学の分野で学者により追及され、
乳酸球菌の有する新しい健康維持成分(BRM・・・生体応答調節物質)の働きが
健康を支える新しい分野として注目されています。
乳酸球菌(エンテロ・コッカス・フェカリス)というものは、今まであまり脚光を浴びて
いなかったのですが、非常に重要です。乳酸菌の中で、白血球をどれぐらい強めるのか
ということをみてると、乳酸球菌(EF菌)という菌が、なかでもが一番強いといわれています。
L92乳酸菌
L92乳酸菌は、新機能性乳酸菌という新しい機能をもった乳酸菌の種類の1部です。
カルピス社が保有する2,000を超える菌株から選び抜かれた、
「ラクトバチルス・アシドフィルス L92株」のことを指します。
乳酸菌はすべてが腸に到達できるわけではありませんが、L92乳酸菌は、
生きたまま腸にとどくことができる乳酸菌と言われています。
本来乳酸菌は、胃酸や胆汁(消化液)によって9割方は腸に届く前に死滅します。
この胃酸や胆汁(消化液)は、通常、口から入った細菌は勝手に増殖しないようにバリア
の役割を担っています。
胃酸や胆汁(消化液)に耐えた乳酸菌が腸に届いてもそこに溜まることが
出来なければ効果が十分に発揮されないわけです。
まずは、生きて腸に届かなくてはいけないのですが、L92乳酸菌は、胃酸や胆汁
(消化液)に強く腸に届く乳酸菌とされています。
コッカス菌
乳酸菌には、球菌(丸い菌)と桿菌(棒状の菌)があります。
乳酸桿菌の方は、ビフィズス菌、カゼイ菌など、ヨーグルトのなかで
生菌として生息しています。 乳酸球菌は、エンテロコッカス菌と呼ばれています。
エンテロとは、腸という意味で、コッカスとは、丸いという意味ですから、
エンテロコッカスとは、腸内に生息する乳酸球菌という意味です。球菌(コッカス菌)には、
ラクティス菌やフェカリス菌などがあり、今まで余り脚光を浴びなかったのですが、
非常に重要です。免疫を上げる(白血球を元気にする、つまり、免疫賦活)
乳酸菌と呼ばれているものがフェカリス菌です。
フェカリスとは、乳酸菌のエンテロコッカス属の中の種類の名前です。
過剰にとったコレステロールを体内に蓄積するのを抑え・排泄する腸内細菌が、
人間の体内に約300種類いる腸内細菌の中から発見されています。 それは、
血清コレステロール値が高い人と、低い人の腸内細菌の調査からはじまりました。
血清コレステロール値の低い人には、特定の腸内細菌が多く存在することが分かりました。
その腸内細菌は、体内に取り込まれた糖を分解して多量の乳酸や
酢酸をつくり出す菌です。その菌はエンテロコッカス(属)の中から発見され、
さらに特定の種、株が分かりました。
それを発見した研究者がエンテロコッカス・フェカリス・AD株101と命名したわけです。
このエンテロコッカス・フェカリス・AD株101 は、エンテロコッカスが属、フェカリスが種、
AD株101が株にあたります。 エンテロコッカス・フェカリス・AD株101のような腸内細菌は、
生きた菌(生菌)の中の一種類として注目されています。
植物性乳酸菌
動物性乳酸菌にも生きて腸まで届く乳酸菌がありますが、植物性乳酸菌も、
胃酸のなかで生き抜き、腸の奥まで生きたまま届くことができます。
乳酸菌ならではのプロパイオテイクス効果(腸内細菌のバランスを改善し、
体の防御機能を高めること)を十分に得るには、
乳酸菌が生きて腸まで届くことが必須条件です。
植物性乳酸菌は、酸やアルカリにも強く、動物性乳酸菌よりも過酷な環境でも
ある程度生息できる乳酸菌であると言われています。
乳酸菌が腸に届くと、腸内に住みつく「善玉菌」であるビフイズス菌を増やして、
大腸菌などの悪玉菌の働きを抑えます。腸内で善玉菌が優勢になると、
腸の機能は高まり、消化吸収が促進され、結果的に便秘や下痢などを防ぐのです。
特に日本人の場合、消化に時間のかかる繊維質の多い食物を食べてきたため、
腸は、欧米人よりも長いと言われています。
そのため、発酵食品においても漬け物など植物性のものを好んで食べてきました。
つまり、乳酸菌についても、植物性の乳酸菌を摂取してきたことになります。
植物性乳酸菌は苛酷な環境でも生き抜くことのできる強い菌です。昔から日本人は自らの体にあった乳酸菌をうまく摂り入れ、腸内環境を守ってきたのではないかと想定できます。
★代表的な植物性乳酸菌の種類と特徴★
ラクトバチルス・プランタラム
日本をはじめ、世界中で広く漬け物に含まれる乳酸菌。日本では、
ぬか味噌漬けやしば漬けに使われる。
韓国のキムチやドイツのサワークラウト、ヨーロッパのサワーブレッドなどにも、
美味しい酸っぱさの素。
ラクトバチルス・プレビス
ラクトバチルス・プランタラムと同様、漬け物やキムチなどの発酵に関わる乳酸菌。
香り付けにひと役買。
テトラジェノコツカス・ハロフイルス
味噌に多く含まれる乳酸菌。耐塩性が強く、独特の風味を生む。
ペデイオコツカス・ペントサセウス
耐酸性、耐塩性が強い乳酸菌。野菜の青臭みをまろやかにしてくれる。
LG21
2000年3月に明治乳業からLG21と名付けられた新しいヨーグルトが発売になりました。
これは東海大学医学部の古賀教授の研究グループと明治乳業、
わかもと製薬の協力によって製品化した新しい菌種の製品です。
過去、胃の中にとどまって生息できる菌はいないという定説がありました。
胃の中は強い酸性で消化の働きもありますが、外部から入ってくる物質に対して
腸へのフリーの侵入を防いでいる働きもあるため、胃を通過できる菌はいても、
胃の中にとどまって生息できる菌はいないとの見方をしていたためです。
しかし、1979年から1983年にかけて、オーストラリアの病理学者等によってピロリ菌が
報告されその定説がくつがえされました。
ピロリ菌は胃壁を守っている粘膜内に侵入して、消化の攻撃をかわし生息する事ができ、
その存在は胃にとって良くない働きをするようです。
LG21の研究報告ではLG21(Lactobacillus gasseri OLL2716)によるピロリ菌に
対する働きを報告しています。
LG21は、まだ特定保健用食品としての認可はまだ受けていませんが、
除菌性及び感染防御性について特許を取得しているので販売権は独占されています。
KW乳酸菌
KW乳酸菌は、キリングループがアレルギー症状や花粉症などの症状を緩和を目的に、
保有していた100種類以上の乳酸菌株の中からの研究を行い、
花粉症症状を有するヒトを対象としてヨーグルト摂取試験を行った結果
用いられるようにしています。
アレルギーに関しては、花粉症や食物アレルギー、アトビー性皮膚炎などに悩む
患者が増加しているものの、治療法は副作用が心配されるものや対症療法的手段が
中心という現状ですので、今後は、KW乳酸菌のような免疫力を高める乳酸菌の
用いられ方や効果が期待されています。
キリンでは、小岩井乳業との共同開発で、KW乳酸菌をヨーグルトに入れたり、
カプセルに入れて発売したりしています。