土木建設の10月支払い時、最初の事件は起こった


事の発端は当社の請求書明細の内容についてだった


ちなみにこの時点で当社の追加は


元請けが契約以外で発注した材料のリース代170万円(この後も継続リースだったので更に金額は増える)


追加工事費 200万円くらいだった


以前にも書いたが、当社は請求の際に請求明細書をメールにて送る


ゼネコンが絡んでいる今回の新築現場に関しては、工事項目ごとに更に詳しい請求明細がエクセルデータで添付されていた


専門業者にしか分からない表記で申し訳ないのだが


仮設工事の手間に関してだけでも「足場架払手間(4F以下部分)」「杭打用養生単管足場」「○棟鋼製階段架払手間」など、その項目は30項目を超える。


それに加えて仮設リース料、生コン打設という他契約がある


なので、各工事項目の各月の出来高の%を打ち込み、契約金額に対して出来高が何%ありいくらの請求が起こっているかをエクセルデータで送る


請求書にそれらの項目を入れていては膨大な数字になるので、請求書には「仮設手間」という書き方をしていた


この頃には土木建設安岡との請求前の打ち合わせは無くなっていた


安岡自身の多忙さも影響していたが、9月に起こった出来事が発端だった(今回テーマになっていることも、実は同じ原因なのだが)


土木建設の経理を取り仕切る実母がいることは先述したが、こと細かいことを現場を知らない実母に理解させるのは到底不可能だったため、今までは安岡が請求前にチェックしていた。


だが当社が上げている請求書の「仮設手間」という項目の中に、追加工事が含まれていることを7月請求(9月支払い)の時点で実母が突っ込んできた


請求書だけでは確かにそのとおりなのだが、毎月送っているエクセルデータを見れば、追加が含まれていることは明白なのだが


「分かりにくくなるから、そういうことはしないでって言ったでしょっ」と、実母の鼻息は荒かった


私としては安岡が理解し、当然実母にも理解してもらっていると思っていたので驚いた


「いやですが、安岡さんには言ってましたし、エクセルデータも送ってますよ?」と言うと


「そんなことは知らない。とにかく、追加工事を契約工事の請求の中に含むとは何事かっ!」という一点張り


どうしようもないので


「じゃあ、請求書作り直してきますよ」と言い、土木建設の事務所を後にした


作り直すと言っても、例えば合算で100万円請求しているものを、70万と30万に表記を直すだけだ


もちろん、追加金額の確定作業は安岡と終わらせている


事務所を後にしてすぐに安岡に電話を掛けた



「安岡さん、どうなってるんですか?私が毎月送っているエクセルの表は実母さんに理解してもらっているのではないのですか?」


大体、9月に話題に上っている請求分も、当社が作業したのは7月だ。「何を今さら・・・」と私が思うのもしょうがなくはないだろうか


「何回見せて説明しても、「そんな数字と項目の多い表なんて見たくないっ!」の一点張りでして、話を聞いてくれないんですよ」


会社対会社の話としては、この時点でお話にならないのだが


このような経緯があった10月上旬の支払い(6月末請求分)で事件は起きた



当社が請求した額は630万円。この頃の年商が9000万円程度だったことを考えれば、当社の土木建設に対する依存度がどのくらい高かったか分かっていただけるかと思う


8月末に請求したその金額に対して、10月上旬に送られてきた支払いは


小切手105万円、手形105万円。計210万円だった


いつも先方から支払い前に送られてくる支払い予定書(当社の請求書に手書きで減額されたFAX)も、この月は無かった


何の予告も無しに400万円の減額である


「こちらにも支払い予定があるんだから困る。とりあえずそういう金額になる根拠となる資料を、すぐにでも送ってもらいたい」と依頼すると


例のごとく当社の請求書に手書きで減額されたFAXが送られてきた


今この文を書きながらそのFAXを眺めている。


請求金額に×印が付けてあり、その横に


「ゼネコンに請求していない」


「来月請求予定」


などという文面があり、当社の請求金額が消され、減額された数字が書き込まれている



何の予告も無しの400万の減額だ


この頃から私は「あぁ、これが噂の土木建設のヤリ口か・・・・もしかしたら揉めるかもな」という


覚悟を決め始めていた

新築工事を受注し、仮設工事・仮設材料リース・生コン打設工事それぞれの契約書を交わした


請求書を作成する前に出来高計算書を作成し、土木建設安岡宛にメールを送る



それぞれの項目の何%を出来高として計上したか、追加でどのくらいの金額を請求するか


もちろん、安岡から「この項目、待ってもらえませんか」という話が来ることがあったが、キチんと経緯を話し合い妥協点を見つけて金額を入れていた



追加工事の一つに常用という項目がある


どこからどう見ても契約外の工事をゼネコンの監督から頼まれることがある


それを行わなければ工事が中断するような場合に行うものだ



そのような類のものは「人数」で計算される


例えば「今日頼んだ常用は1.5人分だよね」のように。


これも毎回伝票を切り、ゼネコンにサインをもらってから土木建設にメールなりFAXなりで送っていた


そして月末請求時の話し合いにそれも入れて計上するのだが、ここでも建設土木業界の暗黙ルールなるものが適用される


依頼時には現場にて


「施工してもらわないと工事が進まないから」と言い、現場サイドで発注する


これはその都度当社の責任者から私へ「施工しても良いか?」という確認がとられていた


そしていざ請求時になると「ちょっと請求人数を減らしてもらえないだろうか?」と土木建設から言われ、交渉する


ヒドい時は「元請けゼネコンが認めてくれないから・・・・」と25人が9人まで減らされたこともあった


あまりにヒドいので「今後常用はしない。そちら(土木建設)で対応していただけないか?」と切り出すと

「足場工事のことは当社では対応できない。ゼネコンにも言って今後気をつけさせる」という対応だった


さらに着工から3ヶ月ほどすると土木建設安岡から


「ゼネコンの所長が変わり、今後は10万円以上の常用は請求できなくなった」と言ってきた


「ではその金額を超えるくらいの常用を現場で依頼されたら断って良いんですね」と答えると


「それは困る」ということだった


まぁ分かりやすく言うと元請けに圧倒的に有利な後出しジャンケンのようなものだ


結局10万円を超えた常用金額請求分は別に架空の請負を作ってそちらに上乗せして帳尻を合わせることになった


ここまでは常用という追加について述べた


次は仮設資材について述べたいと思う


契約時には図面などから必要と思われる材料を拾い出し、契約金額を算出する


だが以前にも述べたが新築工事というのは見えない部分が多い。仮設資材は


ゼネコン→土木建設→当社(下請け工業)→仮設リース業者


という図式で契約が行われている。にも関わらず、ゼネコンがリース業者へ勝手に材料を発注し始めた


大工、左官、設備業者などが脚立などを必要とした時に監督に手配させるのだ


契約時に含まれていないものだから、当然追加になるのだが、新築工事の慣習として全部込み、又は現場終了清算時に金額を決めるというのが一般的だ


今書いていても理不尽な慣習だと思う。


もちろん本来ならば契約形式に従った命令系統を作らなければならないのだが、それでは手配に時間が掛かるために、今回はゼネコンからリース業者に物品の数量や期間を流し、その後当社に金額等の報告が来て、それを当社が土木建設に報告するという流れをとった


上記2つの追加以外に正式な追加項目というものもある


明らかに追加工事として発生したものだ。当社は追加工事見積もり依頼を受けて土木建設に提出する(もちろんこの時点で既に対象の追加工事には着手している)


その後、ゼネコンと土木建設との協議があって、当社に減額の依頼が来る


全ての対応が後手後手になっているのは命令系統の複雑化と土木建設担当の安岡の多忙さからだった


現在裁判は進行中であり、具体的に書けない内容が多いこと


そして当時を思い出しながら記事を書くだけでも私自身の気分が悪くなること、などで記事を書くペースが遅いことを申し訳なく思います


自分の経験を書くことが何かの役に立てると信じて、可能な限り書き続けるつもりです


土木建設はゼネコンに強かった


接待もマメに行っている様子だった



大手マンションデペロッパー会社が新築マンションを数棟作るという情報が耳に入った


土木建設と付き合いの深い会社だ


ゼネコンの発注形態は「土木」「鳶工事」「生コンクリート」の3業種がセットで発注されることが多い。

この状態だと「解体工事」と「土木工事」を施工する土木建設はどうにかして切り離し発注を頼むしか仕事を受注するチャンスは無い


土木建設五月社長から電話にて問い合わせがあった


「鳶工事と生コンクリート工事を山下くんの会社が引き受けてくれるなら、まとめてセットで受注できるんだが、そうなった時に施工する意思はあるだろうか?」


マンションの新築工事。正直私は好きなジャンルの仕事ではなかった


解体工事やリフォーム工事など、手離れの早い工事を得意としていた


問い合わせをもらった時に、当社は同業者同士で職人をやりとりするシステムを作っていた


ネット上でパスワードを入れて相互の職人の状態を確認するというシステムだ


マンションの新築工事に限らず、新築工事の難点は着工前に見えない工事内容が多いということだ


ほんの少しの設計変更があるだけで、現場では見えない予算が飛んでいく


「これは追加だよね?」と確認しても、予算が確保されるケースは珍しい


が、利点も当然ある。


ある程度の仕事の予定が長期に渡って立つということだ。最低限の仕事の確保が約束されるというのは、毎月の仕事の確保に追われる経営者としては有難い


当社の職人だけの仕事なら十分に確保できる自信はあったが、新しいシステムの発案者としては、システムに加入した全社分の仕事も確保したいという欲が出た


「当社の安岡が担当になるが、彼はこういう工事を担当した経験が無いから、山下君のほうで色々と教えながら進めてくれると助かる」


新築工事は大変複雑だ


未経験の人間が担当者というのに若干の不安を感じたが、しっかりと工事契約書を交わしての受注となった


大手ゼネコン→土木建設→当社という発注形態だ


なお、この案件は請負項目、施工状態があまりに複雑なために実母は一切ノータッチという形で進められた


経験された方なら分かるだろうが、例えば追加工事が発生したとする


だがその追加工事はゼネコンの現場監督がしっかりと準備をしていれば発生しない類のものだった


そうなると現場監督としては当たり前の工事名称で追加請求を上げられると具合が悪い


しかしその追加工事をしなければ工事が止まってしまう


すると、下請けに違う工事名称で請求を上げるように依頼する



「○○という名称では請求が通らない。△△という名称に変えて欲しい」


請求が通らないということは支払いが行われないということを考えると、もはや依頼ではない。


ゼネコンとのこういったやりとりを安岡が担当していた



なので現場を何も知らない実母が請求内容を全て理解するというのは不可能なのだ


この現場に関しては当社でエクセル式のデータに毎月ごとの出来高、細かい工事項目、金額等を入れて請求毎に更新して土木建設宛にメールしていた


安岡のチェックを済ませて、請求額面通りの金額が支払われていた


この頃になると新築案件以外の解体・土木案件も多数あり、土木建設への売り上げだけで毎月3~500万円ということが続いた


ここまで来ると実母の勝手な査定は100万前後だったが、当社のほうも資金計画に額面通りの集金を期待することは無くなっていた