彼女を背負って 戯れながら
たどり着いた浜辺の姿
漸く現れた僕達の願い事
沈まない 緑の世界
手前、彼女の白い足先は 水面に波紋を生んで
足跡なんて残らなかったから
すぐに消えるそれを哀れに思うばかり
足首まで浸かる水の深さで
突然、彼女は言うのです
「ここから先には行けないみたい」
首に絡めていた手も
いつの間にか外れて
困ったように立ち尽くした
彼女は手を振って言うのです
「君だって探していたの 知ってるよ
私はここまでだから お願い叶ったから」
遠く遠く昔
たくさんの町が水に沈んで
そんな世界に生まれた僕は
"陸"が見たいと願っていました
ある日 海から一人、現れた少女は
「私を"陸"に連れて行って」
と言ったのです
僕と彼女は一緒だったから
無邪気な笑顔
僕と彼女の旅の始まり
白く光る砂に 足を踏み入れて
振り返りながら歩く君を見送って
「悲しいお願いだったかな」
なんて 思う
私は陸には上がれない
君が見えなくなって
薄く煉瓦の透ける水面に着いて 暫く待って
聞こえる 水の撥ね音
「私 涙も出ない
君のことは 大好きだった」
錆色の電車のドアが開いて
満ちた水は私の分だけ零れて 帰途に着いた
片道切符で
旅の思い出 寂しさもいっぱい
魚の私の
旅の思い出
