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漫画『ルックバック』
藤本タツキ先生 を読んで
シラスフロントローに載せた文章です(少しネタバレあり)🍀
傑作だった。久しぶりに心の奥深いところにまで連れてきてくれる漫画に出会った。子供時代の喜怒哀楽が細やかな線で丁寧に描かれる。四季の移ろいや、二人がお互いを尊敬し合う様子、その出会いと別れまでが、言葉少ない絵の力で巧みに立ち現れている。
似ているコマを繰り返し並べることで、独特の間合いを生み出している。繊細に重ねられたタッチで描かれた一コマ一コマが物語る。思わずどこが変わったのか、間違い探しのように細部まで見入ってしまった。漫画は、こうでなくちゃと思った。
個人的に刺さる話だった。漫画家に憧れたこと、絵画科に通ったこと、友人を亡くしたこと。絵の上手い下手で渦巻く嫉妬心とリスペクト。青春の記憶が一度に押し寄せて、涙が止まらなくなってしまった。一度読んで泣き、二度読んで大泣きした。
後半は、主人公が強い後悔をやり直す空想の世界が描かれる。前半のリアリズムと対照的だ。その末に届いた京本からの4コマ漫画は、藤野自身の絵のタッチだった。身代わりとなるような4コマ目に、しばし心を奪われた。
二人で一人、そんな感覚に見事に連れていかれた。二人をへだてる扉を4コマ漫画がすり抜けて、お互いの魂に届き合うのがいい。どちらが生きているのか、どちらも生きているのか、ふとわからなくなる構成だ。その複雑さが、より二人の関係性を深く表現することに繋がっていたと思う。
ラストが秀逸だ。二度と取り戻せない輝いていた時を、台詞なしで描く。連続で見せる背中は孤独なのだが、唯一無二の友と別れても一緒にいる気配が感じられる。彼女の背中には支えてくれる彼女がいるようだ。
ルックバックしながら、歩いていけるものかもしれない。この作品を生み出した作者への感謝の思いと一緒に、私も良いものを残したいというエネルギーを頂いた。こんな漫画は描けないけれど、人に感動してもらえる何かをいつか。