実家には手乗りのセキセイインコがいます。
 ヒナの時、専用スプーンでエサをあげていたのですが、ノドのエサ袋がいっぱいになっているのに、スプーンを追いかけまわすぐらい食いしん坊。
 体が小さいのにバリバリ食べるので“食い過ぎ”の“くう”で“くうチャン”という名前になりました。
 先代のインコに比べてあんまりしゃべれなかったのですが、『くーちゃん。くうちゃん』と自分の名前ぐらいは言えました。

 休日、午後から図書館へ向かおうとしていた時、父の悲鳴(?)が聞こえてきたのです。
「うわーーー!! えらいこっちゃ!!」
 私が慌てて奥へ引き返すと、洗濯を干していた母も父の声で家の中へ戻ってきました。
「なにがあったん?」
「白もの洗っているのに、オマエの青い靴下がいっしょに回ってると思って引き上げたら、インコやった!!」
「ええーーーーー!! なんでよ!」
 インコは黙ったまま叫び声も上げず、洗濯物といっしょにぐるぐる回っていたそうです。
「なーんも言わんと、ええ調子でぐるぐる回っとるからびっくりしたがな!!」
 私はコバルトブルーのレッグウォーマーを持っているのですが、父はそのレッグウォーマー(父に言わせると靴下)だと思って覗いたら、インコがぐおんぐおんと回転していたそうです。
 インコのくうチャンはびしょぬれになって放心していたので、タオルで拭きましたが、しばらく何にもしゃべらず寝ていました。(失神??) 

 その後、さすがに洗濯機には近づかなくなりましたが、今度はトイレについてきて、洋式とトイレの流れる渦をのぞき込むのでひやひやしています。 
 そういえば、外に洗濯機を置いている友達が脱水済みの洗濯物を干そうとして、スズメが入っていたというのを思い出しました。(残念ながら、スズメはお亡くなりになっていました。)

 鳥って、ぐるぐる回る水が好きなんでしょうか??
 アブナイなー(汗)
 野生のキツネを初めて見たのは向オンチの友人の車でK市へ行く途中、どんな運転をしていたのかR牧場の近くまで来てしまった時でしょうか。
 ほんとうにっ(怒)めちゃくちゃな運転をする友人で、外灯もない真っ暗闇につっこんでいってしまうのだから、いや、まいりました。(汗)
「ここ、どこ?」
「知らん」
 舗装されていないガタガタ道をバウンドしながら進んでいると、ヘッドライト照らされた【禁猟区】の看板……。
「き、き、きんりょうくー?」
「大丈夫、大丈夫。看板立ててあるってことは人間入ってこれるところや」
 強引な理論をぶちかましている前方に、ふと、躍り出た物体が……。
「ぐお!!キツネじゃん!(驚愕)」
「別に珍しくもないやん(即答)」
 なんでやねん!珍しいやろ!!!!っと、心の中で裏拳でつっこんでいる間も、キツネはヘッドライトに照らされて、赤く両目光らせながら
「は? おまえらなに?」みたいなあきれ顔でした。
 そりゃあきれられるわ!! 深夜に禁猟区へ車でのりこむアホがいるでしょうか? 
……ここにいます。(ぐへー) その後キツネは慌てもしないで優雅に去っていきました。(私たちもなんとか帰れましたが……)

 二度目の邂逅は最近で、車で自宅まで送ってもらう途中でした。横断歩道に差しかかった時、ふわふわ長いしっぽの生き物が横断歩道をわたっているじゃないですか!!
「もっちゃん!(友達のアダナ)キツネ、キツネが横断歩道わたってるー!!!」
「え! うそ! どこーーー?!」
 わたり終わったキツネがこっちを向いているのを私はばっちり見ましたが、元綱ちゃんが振り返った途端、後ろの車がハイビームしたので逆光で見えなかったのです。
「うわーん、なんでよー! ……うう」
 もっちゃんはしょげてましたが、後日、近くの土手で戯れる二匹のキツネを見たそうです。

よかったじゃん♪(笑)

 その日、夕方に友達が本を取りに来てくれるというので、1階でTVを観ながら待っていました。チャイムが鳴ったので急いで玄関を出て、一歩目でカニを踏んづけて思いっきり転倒してしまいました。(ビーチサンダルを履いていた)
「なにしてるの?」
 友達は冷ややかな反応でしたが、私は姿を消したカニをさがしていました。
「カニがいた。でっかいカニ!!」
「嘘ばっかり……っ(疑いの眼差し)」
「いや、ほんまにカニがおったっちゅーねん!!(`皿´)」
 転んだのをカニのせいにしていると思われるのはイヤだったので、真剣にさがしてようやくすぐ横の車庫の隣にそれらしき茶色い姿を見つけました。
「ほら! おるやん!」
「これ石やろ? こんな大きいカニ、この辺りにおるはずないやん!」
 確かに、たまに見るのは3~4㎝ぐらいの沢ガニぐらいなんですが……。 
ほとんど喧嘩になりながらも、「じゃあ、ちゃんと見て!!」と友達を強引にカニの所へ連れていくと、二人とも愕然としてしまいました。

 足の先まで合わせると約17㎝のカニが、青く目を光らせながらガボガボと盛大に泡を吹いていたのです。
 指をさした私もびっくり。
「な、なにこれ? こわ……!」
 友達は怖がって、さっさと自転車で帰ってしまいました。(むかつくわー)

 多分、玄関の灯りにひかれてやって来た所を、私が思いっきり踏んづけたのだと思います。
 あれだけ踏んでよく生きてたな~。  

 夏、特に雨の降る前日、近所の畑の上をよく飛んでいるコウモリ。
 余談ですが、ほ乳類約4000種の内、約1000種がコウモリだそうです。
 かなり多いですよね?
 さて、夏の暑い夜、二階の自室へ向かい、廊下を歩いていると何かが動く気配が……。
 薄明かりの中、開けっ放しになった部屋の引き戸の上を、音もなく、行ったり来たりしている影が。
『…………?』
 最初は目の錯覚かと思っていましたが、よく見て仰天。
 一匹のコウモリが家の中、しかも私の部屋と廊下の間をハタハタと飛んでいるじゃありませんか!
「わ!」
と私の声に気づいたコウモリはパニックになり、ただ、羽ばたきながら部屋と廊下を行ったり来たりを繰り返すので、廊下の窓を開けて出ていくよう促しましたが、ムリ!
 彼はますます興奮して、びゅんびゅん飛び回る。ひたすら飛び回る。
 仕方がないので、母を呼び、あちこちの窓を開けて追い出そうとしましたが、今度は部屋のなかをぐるぐると旋回するばかり。
 キーーっ! と癇癪を起こした母は、丸めた新聞紙で追い回し始め、私と母は悲鳴や奇声を上げながら大暴れ。
 勢いよく振った新聞紙がベシっ!!っとコウモリへ命中、うつ伏せで動かなくなった所を、母はコウモリの小さい片足だけつまんで窓の外へ放り投げました。
 二人で窓の外をじーっと見ましたが、姿はなかったです。
 飛んでいったのかも……。
「あんた、窓あけっぱなしにしとるからや!」
と言われましたが、外出していたので防犯上窓は閉めていたのです……。
いったいどこから来たのか?
 ナゾは残ります。
 しかし……、時刻は夏の夜7時、外からみたら激しい親子ゲンカにしか見えなかったと思います。

 うーむ。

 夏になると決まって繰り広げられるイベントがあります。
 母とアリの戦い。
 母は毎年ケトルに熱湯を湧かし、麦わら帽子をかぶって庭で奮闘するのですが、相手は恐らく億単位、敵うわけがない。
 熱湯攻めが終わるとアリ駆除専用のスプレーを片手に、一日中アリを追い回していたりするのです。
「ちょっと、あいつらスゴイで! スプレーかけたらどうなると思う?!」
 扇風機の前で涼んでいた私に、ものすごい形相で鼻息も荒い母が、汗でデコをてらつかせながらそう言ってきました。
「はあ? どうでもいいやんそんなこと」
 毎年見飽きたイベントで、何も目新しいことなどないだろうに。
「なんでもいいから答えてみ! あててみて!」
 ムキになりすぎで、訳がわからない。
「死なへんねやろ。アリ、強いから」
「違う! 私、あいつらにスプレーかけたあと、逃げたから追っかけたんよ」
「へー」
「あいつら、隣りの家の庭に避難していったわ! またちょっと間したら帰ってきとんねんで!」
「なんじゃそれ! 追っかけんな! 近所の人見たら恥ずかしいやろ!」
 アリを隣りの家まで追っかけている母の方が、アリより怖かったです。
 
 一日中アリを追っかけていた母は、熱中症になりかかり、次の日寝込んでいました。

【はじめに】

 私の家の周りには自然がまだほんの少し残っています。
 庭にはアマカエルだってクロアゲハだってナメクジや果てはムカデまで……。
 昔は家の前が沼地だったので、ゲンゴロウやミズカマキリや小脇の小川にはメダカが泳ぎ、トノサマガエルが優雅に水泳を楽しんでいました。
 裏には今も神社があります。大きな椿の木、ドングリの木。子供のころ実をとってよく遊んでいました。それが当たり前だったのですが……、最近はどうでしょう?
 切り身の魚が海で泳ぐのを信じる子供たち、トンボやセミやザリガニはデパートで売られていると本気で思っているなんて、ちょっと気の毒になっちゃいます。

 私は大自然とまではいかないものの、『いったい何処で住んでるの?』と聞かれるぐらい【ちっちゃな自然】の中で生活しています。
 でも、段々と文明が迫ってきたのです。
 当然といえば当然なんですけどね。
 近所には団地やマンション、学校、コンビニエンスストアまで出来ました。
 便利です。
 何でも手にはいるし、振り込みだって近所でできちゃう。
 だけれど、ゲンゴロウ、メダカはいなくなりました。トノサマガエルはどこへ消えたのでしょうか?
 ご近所さんだった生き物たちの種類は確実に減りました。
 でも、まだ、生き物たちいますよ。書いてお伝えできればいいな、と。
 幸か不幸か私はぎょっとなるような虫や動物のちょっと変わった体験がたくさんあります。
 友達に話して聞かせると驚かれたり、笑われたり、最初は疑われたり……。
『おおげさな』とも言われますが、私と一緒に出かければそのうち信じてもらえます。
 巻き込まれた人達数知れず。『歩く虫感知器』『小動物使い』などネーミングは色々ですけど、感度は衰えていません。

 ここではその一部を集めています。虫の話が多いかもしれないので、苦手な方は無理なさらず、興味を持っていただけた方、よろしかったらおつき合いください。
 文明が追っかけてきても、図太く生きている命の日常です。
 もしかしたら、あなたの身近にある日常です。
 不定期に更新予定ですが、よろしかったらおつきあいください。

 私は一時、隣町まで電車に乗って出勤していました。某和菓子屋勤務をしていたのです。
早番と遅番があり、早番の時は朝六時起きなので、低血圧で夜型の私には辛すぎました。(涙)

 九月に入っても暑い日が続いていました。
 その日は早番、朝一人で店の開店準備をしなくてはならなかったのです。
 カギを開けて掃除をし、お知らせボードを出して、ふと見上げるとノレンをかけるフックに茶色い枯れ葉が引っかかっている。
「?」
 ほうきで落とさないととは思いましたが、妙に気になる。
 よーーーく見るとそれはハチでした!
 しかもどう見てもスズメバチっぽい。
「げ!! やべーよ。お客さん来るのにどおしよう!」
 一気に血の気が引き、パニックになりかけました。
 落ち着け、店長は三十分後に来るから、それまでの辛抱だ。
 自分に言い聞かせるがどうにも気になります。あらためて見に行くと、数が増えているているではないですか!!
「うぎゃっ! だめだーーー! ひーーーー!」
 彼らは同じ方向に頭をきちんと並べて、フック相手になにやらもぞもぞしています。
 な、なんで? なんでこんな町のど真ん中でスズメバチが堂々とたむろってるんだ?
 店の中を熊みたいにうろついているとようやく店長が出勤してきました。
「て、ててててん、店長! ハチです。ハチが入り口のところに! しかも体型からしてヒメスズメバチですうう!!」
 店長は虫が大嫌いなのです。
 小さなアブラムシでさえ泣きそうになったことがあるのだから、もはや顔面蒼白でした。
「いやーーーー! どうするっていうか、本部に電話!?」
 急遽、本部に電話してどうするか聞きましたが
「ほうきで叩けないの?」
とのんびりした返事でした。
 バカタレ! スズメバチはハチの中でも凶暴で、攻撃性が強いんだぞ!
 髪や瞳が黒いだけでも機嫌が悪かったら刺しに来る時もあるのに!
 心の中で絶叫していましたが、口では
「害虫駆除呼んでいいですか?」
と冷ややに許可を迫っていました。
 さらに腹の立つことに、電話した害虫駆除の会社の人は
「アシナガバチじゃないの? スズメバチが巣を作る時期はとっくに過ぎてるからー」
とまったくやる気がないのです。
「過ぎてるって言ってもいるんだから、見に来てもらえませんか? だいたい、体の長さが女の小指ほどもあるアシナガバチっているんですか?!」
 私が食ってかかると、
「そんな大きいの? ま、一応見に行きます。一時間後でいいですか?」という答え。
 電話から手が出せるなら、キサマをタコ殴りにしとるわ!!!(-_-メ) 
 怯えと怒りの一時間後、駆除隊がやって来てフックのハチを見て一言。
「え、スズメバチや」
 しかもこの業者、防護服も駆除剤も車には乗せていなかったのです。
 本当に、見に来ただけだった!
 私の怒りはピークに達していたがお客様もいる手前、スマイルは引きつりながらも絶やせない。
「駆除剤と防護服持ってきます」 
 さらに四十分後、ヒメスズメバチは十匹以上になっていました。
(たぶん。もう怖くて数えられない)

 へっぴり腰の駆除隊がようやく到着し、とうとうスズメバチVS人間の戦いの幕が切って落とされました!

 駆除剤がまき散らされ、ボタボタボターーーっとスズメバチが落下し、防護服に身を包んだ駆除隊が落ちた彼らを足で踏んづけて潰していくさまは、身の毛がよだつ光景でした。
「うへーーー」と呻いている私。
 店長は声のない悲鳴を上げながら店のすみっこで震え上がっていました。
「巣を作りかけていたので取っておきました。しばらく気をつけてください。何匹か逃げたのでまた来るかもしれません。一応、スズメバチの嫌いなニオイを散布しておきます」
 駆除隊は二センチぐらいの巣を見せてきました。
 私はトング(和菓子をはさむ用具)で、へなちょこ駆除隊の鼻を思いっきりつまんでやりたい衝動に堪えながら、
「ありがとうございました」となんとか微笑んでみせました。
 後で店長に「笑顔が怖い」と言われたましたがね。

 後日、店長がぽつりと
「開店して十年以上になるけど、こんなこと初めてや」
【虫感知器】は動いているようです。はい。
 余談ですが、九月頃は新しい女王バチが誕生しています。
 新女王と共に群から外れたグループが流浪の旅に出るのです。巣のないハチは、どんな種類のハチであっても不安定で攻撃性が強くなるようです。

 春のはじめ、初夏、秋の入り口にかけてはハチにはご用心。

H市のM通りに入る入り口近くにはハゲた花壇があり、ゴミのポイ捨てが多く見られていました。
 しかし、4月最初の土曜日、老人会の皆様が花壇へ色とりどりのパンジーを植えて、ポイ捨てを禁止を促し、町の人たちに緑化を訴えておられました。
『おお、きれいだー。これでゴミも減るだろう』と思っていましたが……。
 次の日の日曜日、花壇を見てびっくり!
 鳩が!
 ドバトの五、六匹群れが花壇へ降り立ち、
「ぐるっぽ、(鳴き声)ぐるっぽ、ぶちぶちぶち~~!!!!」
と、パンジーの花をちぎりまくり、バクバク貪り食らっているではないですか!!!
「ひっ!」
 周りの人も引きまくり、ドバトのバイキング状態に唖然。
「ちぇーい!!」
と裂迫で追い払ってみたものの、平和の象徴らはおかまいなしに、まだ咲いていないツボミまで食う始末……。
 パンジーは見る間に葉と茎だけの無惨な姿に……。
「ぐるっぽ、ぐっるぽ、ぐるっぽ!」
……正直ムカつきましたね。

 翌日、【花壇にいたずらしないでね!】と小さな立て札が立ちましたが、老人会の皆様、人間の仕業ではないのですよ。
 あの小憎たらしい『ぐるっぽ』の集団が、あなた方の誠意を踏みにじった……もとい、食い荒らしたのでございます。この先、荒らされないことを祈っています。本当に。

 お風呂から上がり、焼酎のお湯割りを飲んでから二階の部屋へ戻ろうとした時、ふと廊下の突き当たりの壁、当時、父が絵に凝っていて私の知らない間に、額縁付きで勝手に設置していた風景画へ目がいったのです。
 普段はあることさえ忘れているのに……。
 そのまま部屋へ入ろうとしましたが、どうも気になり、絵に近づいて違和感に気づきました。
 絵を掛けるフックが、額からズレた下の方にあるじゃないですか。
「…………?」
 もっと近寄ってみると失敗したフックが一つ、絵のすぐ下に付いていました。
「もー、フック付けるなら、なんでちゃんと付けへんねん」
 父のテキトーさに腹が立ちましたが、どう見てもこのフック、息をしているように見える……。
 かなり至近距離になって初めてギョっとなり、思わず後ずさってしまいました。
 それは、逆さまにぶら下がっているコウモリだったのです!
 横から見ると、壁側へ顔を向けているので、人間に気づいておらず、冬で寒いせいもあったのか、眠っているようす。
 冬眠か? よくわからない……(自問自答と困惑)
 父を呼ぶと、父はむずっと手で鷲づかみにし、窓をあけて寒い中、コウモリを下へ向かって投げつけました。
「ひ!!!!!」(私の悲鳴)
 コウモリはハネを広げたうつ伏せ状態で玄関先へ落ちていました。
「うわ! 死んでもたん違う?」
 怯える私に、
「コウモリ、ハネあるから心配ない」
 きっぱりと父は答え、そのまま一階へ下りて行きました。
(寝ていたので、飛べてないと……おも……う)
 怖くてしばらく見れませんでしたが、三十分後再び見るといなかったので、飛んでいったのだと思います。……たぶん。
 どこから入ってきたのか?
 もしかして私は知らず内、コウモリと同居しているのかもしれませんが、確かめようもないです……。
 ま、まさか、雨戸の戸袋にぎゅうぎゅうに詰まっているんじゃ……いやいや考えないでおきましょう。

 秋、今のところ近所の田んぼの稲はなんとか被害を免れています。
 スズメ達がノドの餌袋”をいっぱいにしてまん丸になり
『げっぷー。お腹いっぱい。しあわせー♪』
と耕耘機が置いてある車庫の屋根の縁で、一列に並んで満足そうにしているのは、なんだか“うまそう”もとい“かわいらしい”です。
 目の前の田んぼは特にスズメ対策していないので、彼らは稲穂に食らえついてぞんぶんに秋の実りをつつきまくっています。
 仕事の行き帰り、手作りシュークリームを売っているお店の前を通るのですが、ここのシュークリームはとっても美味しいのです。
 添加物入ってませんし、お店で焼いているのでできたてのふわふわー♪ カスタードはバニラビーンズ入りでとろとろーん♪ なので気をしっかり持っていないと誘惑に負けて買ってしまうのです。
 つい最近も仕事帰りに甘い香りに誘われてふらふらと……。
 ふと視線を感じて見上げると、一匹のスズメが熱心にお店を見ているのに気が付きました。
 足を止めてそのまま観察し続けていると、スズメはさっと舞い降りてきました。
 お店の人はたまたま袋が切れたのか、レジの下に屈んだまま立ち上がってきません。
 スズメはちょんちょんと素早く店の前までくると、思いっきり背伸びをして、山のように積まれたできたてのシュークリームを、必死の形相でのぞき見しているではありませんか。
『まさか……』
 このお店、カウンターの向こうはすぐ作業場になっていて、正面に壁やドアがないのです。
 スズメはパパッと飛び上がり、シュークリームの側へ歩みよります。
『あーーーー!!(心の叫び)』
 フワフワの表面パリ、美味しそうなシュー皮へ首をのばし、クチバシがまさに届こうとした時!
 お店の人が紙袋の束を片手にむくりと立ち上がってきました。
 スズメはすばやく元いた電線へ飛び上がると、夢やぶれ、悔しげにお店を見下ろしていました。

 一部始終を見ていた私は、しかし、被害はなかったのでお店の人に報告することなく
(言っても『は?』って顔されるだろうし。)
 シュークリームを購入し、袋を下げて帰りました。切なげなスズメの視線を浴びながら……。
(苦笑)
 そんな、夕方でした。