未央奈side

あすかの目にはいつも誰がいるの?
だれからの連絡を待ってそんな顔するの?

もうあの人はいないのに


あの人よりも私の方が飛鳥を見てる
早く気づいてこの感情に私はあなたを必要としているから


話は唐突だった


「ねぇあすか」

「ん?」

「今日家いっていい?」

「はぁ?なんでよ」

「いいじゃんおねがい!」


飛鳥は意外にも強引な押しに弱い
だから私はその隙にはいるしかない


お酒飲んで色んな話して多分私もあすかも溜まってたのかもしれない
そういう雰囲気になってはじめはダメだって言ってても
何度も強引に口付ければしだいに自由になっていく

そうやって迎えた朝はなんともいい互い気持ちの悪い朝だった



飛鳥side


未央奈の目は不思議だ
お願いされるとなぜか断れなくてわたしはずっとあの人しかいないのに

こんな関係になったのも2人とも気の迷いなんだ


『今日家いく』


LINEを開くと出てくる文字
少し変わったのは行っていい?から行くと決定事項なこと

ダメなんて言ったってみおなは結局来てしまう

迫られて断れないのは未央奈がそんな目でみるから
だから私はまたなにも言えない



する時だってロマンチックなんてない

「ヤろ」

からはじまってそのまま

唯一の優しさはわたしが起きるまで腕枕をしていること
いつだってそうだ未央奈だって仕事あるのに

でも決して好きなわけじゃない身体だけの関係

どちらかが否定してしまえば終わることなのに否定できないのはあの人穴埋めだからなのかもしれない




未央奈side



飛鳥とはそういう関係になった

だからといって恋人な訳でもない心はずっとあの人で
埋まってない空いた隙に私がいるだけ


はやく心も身体も全部私のものになればいいのに


私だって辛いのかもしれない
一方的に追いかける恋は苦手だ

もういっそのこと否定してくれればこんな感情おかしな感情もどうにか出来るのに


最近は身体を重ねる度にあの人の名前を呼ぶようになった
無意識なんだろうけどね

ふとした瞬間に聞こえるその声に私はいつも惑わされる

あすかの目の前にいるのはわたしだ

抱いているのわたし

飛鳥は一体誰に抱かれているの?






『今日家いく』

いつものように同じ文章を送る

飛鳥には私しかいないよって言うように



いつもと変わらないご飯食べてお風呂はいってヤって終わりだったのに
急な拒み


「ごめん...こんなのおかしいよ...」

「......」

「...こんな関係おかしい」


彼女の言ったことは正論だ
好きでも恋人でもないやつに抱かれてそのままのやつがおかしいか
結局わたしはあすかの中で何者でもなかった


「そうだね...もう終わりにしよ」


わたしの方が年上だから我慢なんて慣れてる


初めの方に誓ったじゃんか


どちらかが拒んだらそれで終わり
そんな関係にしたのは紛れもなくわたし





飛鳥side



「こんな関係おかしいよ」


どの口がそう言ったのだろう


いざ離れると嫌なくせに



あの日はそのままなにもなく寝た
未央奈は朝までいてくれたし何も変わらないと思っていた



けど、次からはLINEなんて送ってこなかった

家いく


そんな強引な短文もなにもかも

楽屋でだってほらこんな近くにいるのに1度も目なんか合わない



話しかけても皆と同じ目

みんなに見せるようなあの時の表情でなぜか胸が苦しくなった





ピコンッ

未央奈だと思った


でも違ったずっと待っていたあの人だったから


『久しぶり』

そんな短文にでも熱くなるわたしがおかしい

何年も待たされたのにこの文ひとつで空いた穴が埋まるのもきっと


「飛鳥」


心地の良い音声

ずっとよんで欲しくて待っていた人


「な...なみ」

「もう、何泣いてんの」


そうやって笑ってくれるのを待っていた


少しだけ楽屋に寄ってくれてしーさんとも話していた


「飛鳥めっちゃ会いたがってたんだからね」



そんな問題発言のオンパレード


楽屋のざわめきも落ち着いてきてそろそろ帰ろうとなった時
未央奈に話しかけられて一緒に行ってしまった


30分くらいで戻ってきた
未央奈はいなくてすこし機嫌の悪い奈々未だけがいた


「今日家行っていい?」

急なお誘い

嬉しかった

奈々未が私を求めていることが


「うん!」



その日で未央奈の匂いも何もかもが奈々未の匂いへ変わってしまった







未央奈side



奈々未さんが戻ってくることは分かっていたのかもしれない

私たちの関係が終わる事のように


意を決して話しかけた

あすかは一時的でも私のものでしたよって



「未央奈どうしたの?」

「いちを報告したくて」

「なにを?」

「飛鳥のこと奪っちゃってすいません」


その時の歪んだ顔は面白くなかった
ほんに好きなんだって思いたくないから

「って言っても終わったんですけどね。まぁ、遊びだったって言うか」

そこまで言うと胸ぐらに掴みかかってきて

「ふざけんなよ」

結構こわかった

「ずっと奈々未さんが飛鳥の中にいるから身体奪えばなんとかなると思ったんですけどね......ダメでした」



言ったと同時に頬に痛みが走る

殴られたことを認識するのに少しだけ時間がかかった



「そんなので飛鳥を傷つけないで」


あー、怖いなぁ
これで奈々未さんは飛鳥の元に居るんだろうなぁ

全部これで良かったのかもしれない


あなたが幸せになるのなら私はなんだってできる