宮中府中共に一体たり

 

 一言で言えば、ただおめでたいという以外にないのです。

 私も信心して三十年、現猊下の御指導を受けてまいりました。その間、細井宗務総監殿とは不思議な縁がありまして、おたがいに中学校は同級であります。

 

 ゆえに、今日の総本山の隆盛を見るまでに、諸葛孔明の出師の表にあることばでありますが『宮中府中共に一体たり』これは、あなたは総本山の御奉公をしているのだと、この戸田は府中の奉公をすると。信者と僧侶とともに一体にならなければ、総本山の興隆は成るかというのです。なんかいとなく、そういう言い合いを申しておりました。

 

 だれでも、こんなりっぱな寺をこしらえるときには『戸田、いくらか寄付しないか』とたいてい言うのですけれども、細井尊師はいっぺんも言ったことがない。自分の実力で、自分の金で、学会になんか一銭も頼まん。

『どうだい、いくらかいるかい』と聞くと『いらん』と言う。これには驚きました。たまには、言ってくれたら、よさそうなものと思うのに。

 

 だから、細井尊師ではない、太井尊師だと思うけれども。だから、名前を変えるように猊下にたのんだほうがいいと思いますが、これをもって、私の祝辞にかえる。

 

昭和32年10月18日

常在寺改築落慶式

池袋常在寺