少年少女諸君へ
長州といっても皆はわからないだろうが、今の山口県に、吉田松陰という偉い先生がいた。松陰にはふたりの弟子がいた。ひとりを久坂玄瑞、もうひとりを高杉晋作という。
久坂玄瑞は、まじめな上に親孝行だったので、松陰からたいそうかわいがられた。そして病気で寝ている松陰の代わりに多くの弟子たちを教えていた。ところが高杉晋作は、酒のみの上に親不幸だったので、松陰から勘当されてしまった。そして山口県にいられなくなって江戸(東京)に出てうろうろしていた。
後に久坂玄瑞は蛤御門の戦いで長州軍をひきいて、徳川幕府の軍勢にやぶれて大けがをしたため、このみじめな姿を敵に見せては自分のみか松陰先生の恥になるといって、いさぎよく、刃にふした。時に二十四歳だった。
一方、高杉晋作は、幕府の長州征伐の時、いちはやく山口県に帰って、奇兵隊をつくった。これは、それまで武士がいばっていて、バカにされていた百姓や町人を集めて組織したもので、みごとに幕府軍をやぶっている。
この人も二十九歳の若さで死んだ。生きていれば国家のために大活躍をしたことだろう。だが、ふたりながら、惜しいことに仏法をもっていなかった。
君たちは久坂玄瑞のように勉強するのも大事、高杉晋作のように自分の好きなまま、思うがままに生きるのも大事。しかし長生きはしないといけない。そうして、国家民衆のために戦わなければならない。
日本民族は秀れているというのが、私の民族観です。あなたがたは、皆、秀れた人です。釈迦滅後九百年に出た『ゆがろん』という本に、東洋に一小国があって、この民族だけは大乗仏教がわかると書かれており、日蓮大聖人様は『御義口伝』で今留在此と説かれた時に、日本の国に南無妙法蓮華経を留めておく、とおおせになっている。
先生(私)は、今、五十八だ。先生(私)が死んだ時、あなた方が先生(私)の言ったことを一言でも覚えていて、そして実行してほしい。
あなた方が大きくなった時、世の中はすっかり変わっている。資本主義でもなく、共産主義でもない、民族主義の勝利となっているだろう。先生(私)は教えられるだけ教えてあげる。皆、勉強して偉い人になりなさい。だけども、親に心配をかけてはいけない。
エジソンという大科学者は小学校を一度退学させられたこともあった。この人は自分の考えどおりに行動したからです。ある時、学友に風船をあげる薬をのませた。さあ、吐いたり、くだしたり、たいへんな騒ぎになった。
その子の親からは文句が出る、お母さんからはしかられる。ところが、しかられながら言ったそうです。『あいつバカだな。もう少したてばブーっと……』
いずれにしても、あんまり心配させないで偉くなりなさい。
昭和32年4月3日
杉並支部少年の集い
学会本部広間