早く全学会員が裕福に
私は、若い時には、いろいろなものを楽しみました。芝居も浪花節も、あるいは料理屋の遊びも、楽しいと思ったこともありますが、今では、そんなものは、ちょっとも楽しいとは思いません。また、ありがたい説法を伺って感激したこともありますが、今は、説法も、ありがたいとは思いません。
私のうれしいことは、皆さんのなかで、ほんとうの功徳をうけた人の話を聞いた時が、いちばんうれしいのです。
秋田で百姓をしている人がまいりまして、そして信仰した時の話を、いろいろ私に話してくれて、しょっちゅう貧乏で困っていたというのです。それから畑をどのくらいつくっているかと聞いてみた。『それだけ畑をつくっていれば、貧乏しなくてもいいではないかね』と言ったところ『先生、それがだめなのです。家のものがしょっちゅう病気をするので、金がたまる間がないです』と言っていたが、それが、このごろでは『先生、病気もしないし、ものもたまる』と喜んでいた。こんなことはあたりまえです。
なにしろ、日本の国は、今、貧乏という疫病で、どこへ行ったって景気のよいところはどこにもありません。その不景気のなかで暮らしている皆さんには、どこへ行っても、やはり不景気であると思います。ペストが日本じゅうに流行している時は、やはりペストにかかる。今、日本じゅうで貧乏がはやっているから、このなかで、生活が安定した金持ちになることは、なかなかむずかしいのです。
そこで信心しても、ただ一時的には功徳が出るでしょうが、根底から、もう大丈夫だと、これなら毎月たまっていくのだというところまで、すぐにはなかなか到達できない。だが、日蓮大聖人様のお約束では、この御本尊様をたもてば必ず金持ちになるとおっしゃっている。なぜ貧乏をするのか、根本が不景気な国にいるからだという。いくら貧乏でも、金持ちもいるのだから、貧乏人だけではない。ただ不景気な時には、貧乏人が八割、金持ちが二割、あるいは金持ちが四割、貧乏人が六割というわけでございます。この金持ちの四割のなかに、はいればいいわけです。
邪宗の輩は貧乏人のほうへおけばよい。かんたんなわけです。だが、かんたんだというが、いつも話すことだけれども、水道の水はきれいなものにきまっている。ところが、そこにホースを付ける。そのホースは、そうとうに長い。その中にクモの巣や、サビや馬の糞がはいっていたとする。そうすると、水道の水を出したのに、きたない水が出る。そこで、水道の水はきたないものだと、こうくる。だが、すっかり出てしまえば、きれいな水が出るのである。
あなた方の命も、このホースみたいなものです。気の毒だが、中にいっぱいゴミが詰まっている。馬糞なんかが詰まっている。ですから御本尊様のあらたかな功徳は、中から流れてくるのだけれども、よごれたものが、すっかり出てしまわないと、りっぱな功徳が出てこないのです。
そうとう皆さんのなかには、長いホースの人もおるだろうから、しっかり信心して、そして私のところへおいでなさい。『先生、こんなによくなりました』『自動車を五台買いましたよ』などと、早くそうなってきてほしのです。これを願って私の話は終わります。
昭和鐵30年10月2日
志木支部第三回総会
中央大学講堂