三災七難と広宣流布

 

 よくいわれる広宣流布ということについて、一言申しあげます。広宣流布とはどういうことかということを、よく認識してもらいたい。広宣流布を、あたかも本山のため、また日蓮大聖人様のためにやるように考えるのは、間違いです。

 

 広宣流布は、仏様の本意であるが、われわれがこれをするのは、これは一国の民衆を救い、各自の現世安穏ということを現わすためにやるのです。

 

 日蓮大聖人様のご出現の根本は『南無妙法蓮華経』という法門によって、日本中、いな東洋中、いな世界中の人々をしあわせにするためです。日本の国が広宣流布するならば、日本国には災難がなくなり、各自はみな安楽に暮らしていけるようになる。そこで広宣流布を、われわれにご命令になったのです。

 

 いままでも、たびたびこのことはいわれてきましたが、時がこなかったのです。このたびこそ、広宣流布の時がきたのです。なにをもって、それを断ずるかというと、いろいろありますが、

 

一、日本の国が滅びたとどうようの結果になったことです。他国侵逼の難、日蓮大聖人様のときにも、蒙古の襲来がありましたが、さいわいにも、日蓮大聖人様が厳然としておられたために、わずかに九州の一部と、壱岐・対島がおかされただけで終わった。

 今度は、日本の国に他国侵逼の大難が、厳然と現われたのです。しかも、三千年の歴史に汚点をつけてしまいました。悲しいかな、宮城前において、外国の軍隊の閲兵式を目のあたりに見なければならないのです。日本人として、この上ない恥です。これはだれの罪でもなく、日本全民衆の罪です。われわれは、なんのかんばせあって、祖先に顔を合わせることができるでありましょうか。この国の終わりになるときこそ、広宣流布のときであります。

 

二、三災七難がすでに現われている。

 三災というのは、他国侵逼難、物価の騰貴、病気の多いということです。物価の騰貴とは、物の高いときにおいて、われわれの生活の、収入と支出の度合いがとれないことで、いつもいうように、明治陛下の時代は、五十銭玉ひとつあれば、電車で往復し、使いができて、うどんが五銭、カレーライスが十銭、安いところで七銭、ウイスキーがコップいっぱい十銭で、月給はだいたい三十五円から五十円で、楽々食べていけた。そのときも貧乏人はいたが、どこの家でもたいてい勤めている人は、二十円や三十円の貯金を持っていた。いまの金にすると、十万円ぐらいでしょう。いまの世の中で十万円の貯金がある人は少ないではないでしょうか。反対に、十万円の借金を持っている人の方が、多いではないでしょうか。

 このように、いまでは貧乏人が多いのです。しかし、これは好んであなた方がやったのではなく、世のなかの情勢が、われわれをそうさせてしまったのです。

 

 次に、病気のことですが、肺病という病気はむかしからあった。ところが、このごろ医者が、いっしょうけんめい病気を製造している。切らなくてもよいものを切り、殺さなくてもよいものを殺したりしている。次に、小児マヒその他の病いがひじょうに多い。お山にいって、こちらから病気の相談を受けるとなると、おそらく四、五百人はくると思う。このように、病気が多いから、医者が繁盛している。このように、いま三災は、ぜんぶ現われています。

 

 法の上からみると、日蓮大聖人様がご出現のときは、天台法華はほとんど滅びていた。いま創価学会が活躍するときは、もったいなくも富士大石寺はまさに破滅にひんしている。

 

 御本山を守り、自身の寺をあがめようという信者はなく、ろくでもない信者ばかりになった。ひどい寺では、信者が六、七軒しかないところもあった。御僧侶も、生きているのですから、米らしいものを食わなければならない。屋根は落ち、畳は破れ、本堂はみるにみかねたありさまになり、まさに正法は滅せんとしているのです。いまでも地方にいくと、これが日蓮正宗の寺かと思うような、情けない寺がたくさんあります。

 

 世界に誇る大仏法の衰微の姿は、悲しむべき状態です。法華経にあるように、法滅のときにあたってこそ、広宣流布の機会なのです。

 

 いいたいことはたくさんあるが、ほんとうに日本民衆を救済し、一国を幸福にするのはいまです。この物価の高いときに、病人もなく、一家が平和になり、また一国が平和になるのが広宣流布なのです。

 

 いま日本をみれば、一国の首相が外国へ行くのに、どういう目的で行くのか、また行くのが悪いのかは、わたくしは知らぬが、日本の政府の代表として、一国の首相が外国へ行くというのに、国会がこの総理大臣を訴えてみたり、決算委員会では、まるで総理大臣に汚点をつけようとしている。外国から帰ってからでもよいではないか。

 

 わたくしは、吉田首相の肩をもつわけではない。あのじいさんになにももらいませんが、内部の恥を、外国にさらさせるやり方は、少なくとも国会議員として、とるべき態度ではないと思う。このような政治で、われわれは物価騰貴からまぬがれることができるでしょうか。

 

 ところで、つけ加えておきますが、身延でも、立正佼成会でも、霊友会でも、田中智学なども、盛んに広宣流布をやるといっている。どれがほんとうかわからない。そこで、かりに立正佼成会で、あるいは身延で、広宣流布をやったらどうなるか。いつもいうように、天皇陛下が妙法を信ずるときのことを、日蓮大聖人様が、ご在世のとき、ちゃんと予言なさっています。『天皇陛下は必ず信仰する。そのときの御本尊をしたためておく、これを紫宸殿にかざれ』といわれて、残されたのが紫宸殿御本尊様と申しあげます。

 

 この歴史を、天皇は知りませんが、もし知って、紫宸殿御本尊様はどこにあるかというと、身延にも立正佼成会にもない。ただ富士の大石寺の御宝蔵に、厳然としてあります。このように、このことでも、日蓮正宗が日蓮宗の正統であり、もっとも大利益あるということが、はっきりするのです。みなさんも、しっかり信心して、功徳をうけるよう、強い信心をつづけなさい。

 

昭和29年9月19目

築地支部第三回総会

中央大学講堂