座談会集
生命の不思議をめぐって
折伏教典を開くと、まず誰でも最初の生命論に度胆をぬか
れるにちがいない。これほどすごい論文に接していなかった
せいもあろう。しかしその割りに十分に納得して理解する人
も少ない。けだし大聖人の仏法哲学のなかでも最も難解な奥
底なるゆえんであろう。また最近、オパーリンの〃生命の起
源〃説等が問題となっているが、これを仏法哲学では、どう
解明しているだろうか?
幸福生活を営む指導原理たる唯一の宗教の側より、生命の
発生、十界論、成仏論等について、戸田会長先生をかこんで
いろいろ質問することにした。なかでも、われわれがもっと
も知りたい成仏の境涯とは、どんなことであろうか?
結局、信心以外にはないことを知るのである。
地球上に人間はどうしてできたか
小平 それでは座談会を始めます。
今回からは従来の研究座談会とは少し方法を変えまして、
戸田先生にいろいろとご質問して、お話を承るように企画し
ました。本日は、その第一回として「生命論」をとりあげる
ことにします。
生命の起源などについて、最近特にいろいろの学説が発表
されておりますが、その辺から先ず取り上げてみたいと思い
ますが。
石田(次) オパーリン学説あたりから。
渡部 オパーリンのものは、「生命の起源」という膨大な
著書がございますが、生命の起源について、彼は「観念論」
と「唯物論」に分けまして、観念論というのは生命を霊的な
非物質的のものだとみる。そして、物質というのは生物を構
成する材料になるものであって、それに、魂とか、あるいは
生気が吹きこまれるとはじめて「生命」になる。これがいわ
ゆる観念論の立ち場であって、いわゆる宗教的立ち場は全部
これと同様であるから間違いであると言っているのです。
彼のとる立ち場は唯物論ですが生命というのは、本質的に
物質的なものであって物質の特殊な存在形態である。法則に
したがって発生し、法則にしたがって消滅するものであって、
なにか超物質的な"霊的根源の存在"なんていうものはない
という。その実際の証拠としては宇宙の中にある星を観測し
ますと、いろいろな状況が現われてくる、はじめガス状の集
塊が冷却して温度がだんだん低温となってくると、生命体の
物質を構成する基本的要素としての炭素が凝縮して地球の中
核体にはいりこんできた。そして炭素が水素と結びまた、炭
素が他の金属と結び、窒素と結び、炭素同志が手を結びとい
うように、だんだんいろいろ結合してくるわけです。
すなわち初めは炭素と重金属元素と化合してカーバイトを
つくり、カーバイトは水蒸気と反応して炭化水素という形で
出現する。さらに温度が下がってまいりますと水と化合し、
それによって炭水化物その他のものに発展してゆくわけです。
それは、金石その他を分析してみることによっても判るし、
また他の天体を観測することによって、その温度と反応のよ
うすとを調べることによってもわかる。結局は、こういうふ
うにして炭水化物、炭素と水素の化合物というのが、一番最
初にできるんだろうというのです。その次に、窒素化合物と
いうのになりまして、それと水とが化合してアンモニアその
他が発生する。この炭素と水素に窒素とか、酸素とかいうも
のがつながってきて、現在の有機物の非常に基本的なもの、
アルデヒドとか、ケトンだとか、アルコールだとかいうもの
が、できてきたのであろうという。
それから、「生命体」というものは、いずれも蚤白質とい
うものを含んでいる、蛋白質はどういうようにしてできたん
だろうか。それは、そういう有機物体が次第にたくさん、ま
とまってきて、できたんではないだろうかという。それの説
明としてアミノ酸が非常にそういうものから簡単に合成でき
るわけです。また、ホルマリンあたりから蛋白がただちに合
成できます。これは温度が、百度か二百度くらいの低温でそ
ういう反応が起こるわけですから、これで蛋白の非常に小さ
いものができてくるだろうという。
次に蛋白質が、どうなるかということを問題としているわ
けです。その点では、コアセルヴェートといって、そういう
ような高分子化合物が、ちょうどアメーバのように、他から
物質をとり入れ、また物質を放り出すというような行動を行
ないますが、そのようなものが発生してきて、それがだんだ
んと不適当なものは追い払われ適当なものは残って、現在の
ような、まあアメーバというのは非常に高級なものですが、
それよりもっと低次の生命体ができ上がるのではないかと。
そうしてその結果として現在に至る生命……生物というもの
が、進化の結果だんだん出てくるわけです。そのようにオパ
ーリンは言っているのです。
小平 こちらの朝日新聞に出ているのはもっとやさしいで
すよ。
これは、はじめ地球が太陽系の中へできたわけです。はじ
め熱の球だったものが、だんだん冷めてくるにしたがって、
空気ができ水ができ、そうしているうちに、海水の中に蛋白
質ができてきたのです。その蛋白質が海水の中で、同じよう
なものがくっついたり離れたり、ゴロゴロしてるうちに、ア
メーバというような、生物に似たようなものが、合成されて
できてきたと書いてあります。それが、いろいろなふうに、
くっつきようによって、植物になっていくものや、動物にな
っていくものがある。動物の系統は片方がチョウチョウ片方
がカニで、もう一つはイカができたのです。(笑)それから魚
になったのは今のマスみたいなものになるんですね。同じく
魚から一方はカエル、一方はトカゲみたいになって、そのト
カゲが今度はリスのようになって、そのリスのようなものか
ら一方は人間になり、一方はサルになる。一方はクジラにな
った。(笑) サルから人間になったんではないんです。ここ
でもくわしく説明していますがね、サルがだんだん人間に変
わってきたのではないんだと。だから今、動物園のサルを何
万年飼ってみたところで人間にはならないわけです。(笑)
戸田 その、人間とサルにわかれた前のものがあるわけな
んだな。それは何なんだ?
小平 えゝ、それはリスですね、これ。(爆笑)
神尾 分類からすれば、脊椎動物の哺乳類の、たしか嚙歯(ごうし)
類というわけですかね。
石田(栄) どうしてまた、リスが突然人間になったのでし
ょうねえ。
柏原 人間の先祖であるというリスみたいなものの中に、
とっても人間味を帯びたリスがいて……(爆笑)
戸田 まあ、そのリスの親分が地球上の状勢が人間を生む
ような状勢を感ずるわけだ。そのようにして人間が生まれて
きたととるわけだ。
石田(次) 説明によりますと、生命の発生とは、水の中で
できたというのです。水といえば大体海水になるわけですが。
渡部 その朝日新聞は、少しオパーリンの説とは違います。
太陽から地球が別れてきて、それから冷えたとこっちでは言
っていますが、オバーリンの取ってる方は、塵みたいな宇宙
塵というものが、いちめんに散らばっていて、それがだんだ
ん集まって重力の結果収縮してくる、一番なかが猛烈な高圧
になった結果、熱を発してきたと言っております。
戸田 生命の発生が海の中ででき上がろうと、どんな形か
で生命は出たので、説明としては、オパーリンの説でもよい
と思う。しかし進化論的一方で解決はできない。それは、色
受想行識の説明になるわけです。物質が色・受でそれがだん
だん進化して色・受・想・行・識という形になり、物質が完
全体になってくるわけだ。それがはじめて衆生として、われ
われの見えるものになってくるわけです。