戸田城聖先生 巻頭言集

戸田城聖先生の御遺影   昭和三十二年  本部幹部会で撮影

 

戸田城聖先生の御筆跡   昭和二十六年六月  巻頭言「僧侶の大功績」

 

 

 

発 刊 の 辞

 

 末法の救世主、日蓮大聖人様のご命令たる化儀の広宣流布達成が、創価学会の使命である。この広布実現への指揮をとられたのが、恩師戸田城聖先生である。

 先生の言々句々は、仏説そのままであり、信心よりほとばしる全学会員の根本指針であられた。今、発刊される、この巻頭言は、全学会員の使命達成に、かつまた仏道修行に、不可欠の眼目である。

 戸田城聖先生が、会長就任第一回臨時総会で宣言せられた誓いは、

 

第一に、一閻浮提総与の大御本尊を日本に流布することを誓う。

第二に、大聖人様の予言を果たす仏弟子として、東洋への広布実現を誓う。

第三に、総本山との交流をはかり、日蓮正宗、日本に在りと仏教界に示すを誓う。

 

の三つであられた。この三大宣言実現への具体的指導の一部が、この書である。

 

 この書を根本として実践していくならば、わが学会は、永遠にくずれることなく、広布への一大原動力となることは明らかである。『在在諸仏土・常与師倶生』のご金言を信じ、この書を通して、常に戸田先生の指導を仰ぐべきである。

 願わくば、戸田門下生として、日本民族の幸福、東洋否世界の幸福建設をめざして、大勇猛心を奮い起こし、前進せられんことを。

 

   昭和三十五年五月三日

              創 価 学 会

                  会 長  池 田 大 作

 

 

 

         
                      序

 

 近代における一大宗教家、戸田城聖先生逝いて二年、その三回忌を終わって、ここに、先生の遺稿となった大白蓮華の巻頭言が集録せられると聞いて、心から一文を贈呈する。

 

 先生は、早くより牧口常三郎先生に就いて、本宗の教学を学ばれたようであるが、法華の真髄を開悟せられたのは、あの信仰のために囹圄の身となって、東京拘置所内に生活している時であったのではないかと思われる。

 その二か年の歳月は、日夜、仏書三昧に入り、入手し得る仏教経典は、すべて読破したのである。

 後日、先生は、余等に向かって、『あの時は、あらゆる経典を熟読したが、ただ法華経だけが私の肝に銘じ、釈尊一代の本懐たるを誠によく知り得た。それ以外の経典には、心に感ずることがなかった』と語られたことで、知ることができる。

 

 そして、出所してからの先生は、先師日淳上人の寓居、歓喜寮の門を叩かれ、共倶に、本宗の六巻抄や天台の三大部を研鑽して、ついに本宗教学の深淵に到達し得たのであろうと、推測することができる。

 それでいて、なお、常に他人との談話中に出てくる法門は、細大もらさず聞き取っていかれたのである。

 

 ある時、余と法門に就いて談話中に、同席した一人が一言を差し入れたことがあった。その時、先生は忿って、『お前の話はいつでも聞ける。外の人の話は、今聞かなければ聞く時がない。よく聞いておれ』と言われた。その時、余は、先生の求道心の偉大さには、即座に敬服したのであった。

 

 かくのごとき求道の功徳と、天来の宗教家たるの性がよく合して、この偉大なる宗教家、戸田城聖先生とたったのである。

 先生の言葉は、この集録の巻頭言のみならず、すべての発言は、決して他人の糟粕ではない。みな自分の信仰と体験によって得た悟りを、後昆の求道者のためへの説法である。

 

 日蓮大聖人は、『一渧をなめて大海の潮を知り、一華を見て春を推せよ、万里をわたって宋に入らずとも……』とお示しになっている通りに、もし、それ、幸福を求めんと欲する者は、心を浄くして先生のこれらの言葉を聞け。

 

 そして、いたずらに、世間の雑多なる邪宗謗法に迷わず、唯一仏乗法である日蓮正宗の信心に精進せられよと、余は勧めるのである。

 以って巻頭の辞にかえる。

 

   昭和三十五年五月三日

 

                   総本山六十六世  日   達