昨日、ホークスとロッテのCS戦を、4回から観たのは、
その前に、映画『怒り』を観てきたからなのですね。
映画『怒り』も『君の名は。』同様、評判を呼んでいる映画ですが、
『怒り』についても、感想文を残しておきたいと思います。
この映画、タイトルは「怒り」と付いていますが、
「信頼VS不信」と替えてもよいかと思います。
人間の持つ信頼感と不信感。
その二つは、反比例する感覚なのかと思います。
そのバランスは、主には、生来的な感受性の細やかさと、
養育環境、敢えて言うと、幼少期における周囲の大人からの守られ方、
によって決まるものではないかと考えます。
僕はどちらかと言うと、人をそう信じられないで生きてきた方で、
今はだいぶ人を信じられるようになったのですが、
この映画の、松山ケンイチ演ずる田代と、綾野剛演ずる大西の気持ちは、大体想像できます。
もちろん、田代は親の破産、大西は孤児という体験をしており、
僕には、そのどちらの体験もないので、
厳密にはわかりません。
大体の信頼と不信のバランスがわかる、といったぐらいです。
特に、田代は、基本的には信頼の体験が整っているので、
最後、ああいう希望の持てる形で終われたのでしょう。
渡辺謙は、信頼をテーマにした役者としては、ピカイチだと思うので、
雰囲気に信頼が漂っていると思いますので、
ナイスキャストだと僕は思います。
僕がわからなかったのは、森山未來演ずる、田中です。
田中は、最後、ああいう終わり方しかできなかったのでしょう。
むしろ、ああいう終わり方で、良かったのかもしれません。
生育歴について何も明かされていませんが、
犯罪の性質、多重人格のような人格変容の激しさ、
恐らく、不信の連続の生育歴だったものと思われます。
例えば、虐待やネグレクトなどを受けてきた人なのかもしれません。
一見、信頼を感じさせるような雰囲気は、本物らしく見えて、でも作り物が目に見えるような感じがして、
森山未來の演技の上手さに、ほんと感嘆です。
人間、いろいろな感情がありますが、
その感情の中で、唯一、怒りだけが、その人の真実を表すのかもしれません。
他の感情は、言葉で何かとごまかせるような気がしますが、
怒りだけはごまかせず、その人の真実に近い姿を示すものと思います。
怒りとともに、その真実の姿を、忍耐強く受け入れることができれば、
関係は信頼の方に向かうかもしれませんし、
または、持ちこたえきれず、不信の方に向かうかもしれません。
田代の今後は多難ではありますが、宮崎あおい演ずる、愛子の感受性の細やかさにより、
何とかなるような気がします。
妻夫木聡演ずる、藤田の感受性の細やかさは、今後更に信頼の方に向くでしょう。
大西との出会いによって。
藤田はゲイとしての自分を、より大切に生きるのではないかと想像します。
僕の今後の心配は、佐久本宝演ずる、辰哉です。
開かずに済めばこしたことのない、怒りと不信の扉が開かれ、
今後、立ち直れるのか、立ち直れないのか、見当もつきません。
続編を作るとしたら、田中の過去と辰哉の未来とをリンクする形で、
例えば、辰哉が田中の生きれなかった、信頼の世界を代わりに生きる道標を見つけるなど、
そのようなものを観てみたいと思います。
もちろん、広瀬すず演ずる、泉の道標の物語も必要ですね。
わかりにくい感想になりましたが、
信頼と不信、それに基づく過去と現在、そして未来について考えることのできる、
とても良い作品だと思いました。
観る前に、幾つかレビューを読み、
観るにあたって、重さやスッキリしなさを覚悟した方がよいと、
何人かの方が書かれていましたが、
僕的には、重さはあまりなく、
むしろ、希望を予感させる映画だと思いました。
この映画も、人間理解には、大変おすすめの映画だと思います。
では!