あの頃は受験のことなど頭に一切考えず、毎日ダラダラとしていた。
「どうせ、高校に入っても剣道ずくしだろうな。」
そんな生活が楽しみなような、なんだか先が見えててつまんないような複雑な気持ちがあった。
受かるのかもわからないのに。
11月頃から塾に入った。
最初は慣れなかったけど、徐々に慣れたし、それに楽しかった。
「塾なんて勉強するところなんだから、静かにしとこう」最初はそう思っていたけども・・・。
いや、それが正解だったのかもしれないけど、真剣にやるときはやったし、正直ふざけた日も寝た日もあった。
特に冬休みなんか、一日8時間。
寝てる時間を抜けば塾にいる時間の方が長い。
朝勉強して、昼休みになればコンビニへカップ麺を買いに行く。
地面は雪だらけで滑ればもう大事故。今思えばかなり危険な行為を毎日繰り返してたけど、とにかく楽しかった。
皆で塾で生活してるような感じがして、意外とすぐ終わった。
そして、私立の入試。問題は簡単でボーダーラインも余裕で越えてたし、普通に受かった。
もともとこの私立には行く気がなく、練習程度のものだった。
そんで何週間かたって、公立入試。
特に緊張はしなかった。ボーダーはぎりぎりだったけど、問題が簡単で、面接もしっかりしたから、合格することができた。
正直高校に合格した喜びよりも、「やっと遊べる!」「やっと剣道ができる!」って喜びの方が数倍あった。
それで、合格後、春休みはとにかく遊んだ遊んだ。皆で外でワイワイもするし、家でゲームもする。
休日しか後輩の部活に顔出しちゃダメというルールがあって、中々いけなかったがそこで剣道もした。
その時…。
当たり前だけど、なまってた。体が思うように動かなかった。
正直「なまってるな~、これから取り戻さなくちゃ!」なんて気分にはなれなかった。
「ハァ、後輩に負けちまったよ。ライバルのあいつは、顔が知れてるから高校でもう練習してんだろうな。あぁ~、差、ついたな。」なんて気分だった。
差なんて、取り戻せば良い。それが俺の今までの考え。けど今はそうはなんなかった。
剣道部を引退してメンタルが衰えたってのもあるし、差をつけられるのが大っ嫌いっていう性格のせいもある。
その差を埋めるのは必死の練習が必要だろうし、覚悟がいる。
前の俺なら面と向かってその勝負を受けたけど、それは面倒くささへと変わった。
それで1つ選択肢が増えた。
「剣道をやめる」
俺を見てきたやつらからすれば、絶対にありえないことだ。俺は「剣道バカ」「剣道しか取り柄がない」「もちろん高校でも剣道を続ける」「剣道一筋のヤツ」なんて思われてただろうから。
それでもどうせ、俺は剣道をやるんだろう。だって剣道しか取り柄がないんだから。
自分でもそう思ってた。いくら迷おうと結局は剣道にするんだろう。本当にそう思ってた。
ボクシング部に入る1日前までは...。
結果、意外なことに俺はボクシング部に入部することにした。
理由としては、廊下の張り紙。「初心者から初めても全国いけるよ!」
これだった。俺ならやれるかも。剣道であそこまで上り詰めた俺なら!そんな考えがちょっとず
つ沸き上がってきた。
でもまずは体験しないと、と思って練習場へ行くと不良ばっかのイメージだったのがガラリと変わって、強そうで優しい、大らかな人たちばかりだった。
「サンドバッグ打ってみろよ!」
キャプテンの言われる通りサンドバッグを打ってみた。
周りの体験しにきてるやつらとは、音が違った。剣道で培ったパワーだ!
キャプテンから「良い筋してるね、入れ、絶対成功する。」って言ってもらえた。
よ~し、俺ボクシングやる!絶対全国いく!
…
でも。
剣道を忘れることはできなかった。
必死で考えた。毎日考えた。どっちに入ろうどっちに入ろう。
とりあえず剣道の見学も行くことにした。
始まる前はワイワイして楽しそうだったけど、始まった瞬間ビシッと殺伐とした雰囲気になる。
強い強豪校の特徴だ(笑)
特に先輩方とは話さずそそくさと帰った。
次の日はまたボクシングを見に行った。見終わった帰り…。
中学の剣道部の先輩で、その高校でも剣道を続けてる人とあった。
「お前、剣道続けるか迷ってるだろ?」
見ぬかれてた。当たり前か。前の俺なら速攻入部届けだして、速攻練習参加してたはず。
「ボクシング部と迷ってます」
そしたら、後ろからでっかい剣道部の怖そうな先輩が来て
「なんでボクシング部なんだよ?剣道やってたんだろ?なんでやめるんだ?剣道やれよ!」
と脅すような感じで言われた。
その脅しは正直きかなかった。「考えます。」っていったら、舌打ちされた。
その先輩とは電車が違うので別れて、中学の時の先輩と同じ車両にのる。
やっぱり、驚いてる。あの俺が剣道をやるか迷うなんて。
その先輩も、手段にこまったのか俺をいれようと半分脅すような姿勢をとった。
「俺と今からボクシングしよう。負けたら剣道やれ。」「剣道入んなかったら完璧目付けられる」
正直どうでもよかった。目を付けられたところでどうにかなるような気がする。
この程度か。
生意気ながら、こんなことを思った。
それでも、俺は考えた。考えて考えて。
翌日、ボクシング部に入部した。それから今二週間ぐらいたってる。
剣道部の人とすれ違うのはとても気まずいが、部活はとても楽しくやれてる。
ボクシング部に入部してよかった。本当にそう思ってる。
それが、4ヶ月間の自身の変化。
この4ヶ月は、これからの人生でも決して忘れることはない。

