銀座fiveの前に停まっている黒い高級車。
先日のラフなジーンズ姿とは違う品の良いスーツを着ておられました。
そして、私を見つけ車から降りてきたお客様。
車に乗るようドアを開けてエスコートしてくださいます。
私はアルコールで気持ちよく痺れた脳で今自分がしている行動に少し戸惑いながらエスコートされるがまま車に乗ります。
さて、
どこに行きましょう。
おうちにお送りしますが、その前に少しお茶でもいかがですか?
とおっしゃって、車を走らせます。
カフェでもいいのですが、
ふらりふらりと歩きながらお話しませんか。
と。
なんだか不思議な人だなぁと思いながらもそのスマートさに居心地がよく、流れに身を任せていました。
少し走ると梅が咲く公園に車を停め、お散歩をすることに。
なんだかとても不思議です。
一回だけ恋人ごっこをしたお客様と
酔っ払ったフーゾク嬢が
春がもうすぐそこまできているお天気の良い日に子供達の楽しそうな声が聞こえる公園をお散歩しているのです。
僕は桜が嫌いでね。お花見だ、と人が騒ぐのが嫌いなのです。
初めてゆっくり梅を見ました。とても綺麗ですね。
などとお見合いの時にするような会話をしているのです。
歩調を合わせてくださいながらゆっくりと歩いています。
気遣いのできる方なのか、
お遊びがお上手な方なのか、
私は彼の一挙一動を分析します。
少し心を開いてみてもいいのかもしれない…
そう思った私は少しずつフーゾク嬢としての私ではなく、
自分自身の話をします。
身体が弱いこと。
あまりお店で働けないこと。
私の頭の中は大忙しです。
この人を一男性として信頼していいのか。
それともお客様として接するべきか。
次回お店に来ていただくか。
それとも外出として買っていただくか。
でも、素敵な人だなぁ。
この人はフーゾク嬢としての私に仕事を期待しているのか。
すっぴんの心を見せてもいいのか。
でも、まだ一回しかお店にいらしてないし。
経済力はどの位あるのか。
…
フーゾク嬢としての私と、
1人の人間の私が交互に現れます。
1時間くらいおしゃべりを楽しんだでしょうか。
ランチのアルコールもすっかり冷めお手洗いに行った私。
お外でハンカチを広げて待っていてくださったその動作にこの方の真髄を見たような気がしました。
そして、その瞬間に私は恋に堕ちたのです。
心の中でものすごい音を立てて私は恋に堕ちました。
そしてそれは今までに経験のない衝撃でした。
まるで深い深い落とし穴に堕ちたようでした。