この電文に説明は要らないだろう。もちろん、日本海軍の暗号電を平文に直したもので、アメリカが暗号を解読したところで、これが何を意味するのか不明のはずである。日本軍は自らの暗号を「解読できるはずがない」と信じていたのだが、戦後になって、米軍は「あれは日本軍が暗号だと思い込んでいただけの代物」だったと公言している。ドイツの「エニグマ」は日本のものとは比べ物にならない優れたものだったが、対戦初期には英国に亡命中だったポーランドの数学者がその解読の糸口を見つけ、イギリス軍に報告した結果、イキケリスはエニグマ暗号機と同じものを作って、ついに解読に成功している。さて、その「ニイタカヤマノボレ」だが、アメリカがこれを日本語の平文に解読できたとして、これがはたして何を意味するのか、まったく「推定」できないだろうか。まず、ニイタカヤマとは、台湾にある日本領土でいちばん高い山だと知るのは造作もない。それを「ノボレ」と命令したことは何か重大なことを実行せよとの伝達に違いなく、当時の緊迫した日米関係から考えて、それが対米戦開始の指令だと判断するのが自然だろう。おそらくは米国の対日諜報網が日本の空母6隻の所在不明くらいは掴んでいるはずで、それが太平洋にある米国領の軍事基地を攻撃するものと結論付けたとしても一向に不思議ではない。つまり、日本の海軍軍令部は平文に直せば、あのような表現になる暗号文は絶対に使うべきではなかったのである。