私は日ごろ、自然発酵食品の微生物について研究しております。

近年の発酵食品の製造は、大量生産を可能にするため人間が複数の微生物を家畜化してきました。

これは麹菌の Aspergillus oryzae を知らず知らずに無毒化してきた例などがありますが、

過去の偉大な職人が経験と勘による製造を続けて、たどり着いた境地で、

偉大なものに感じます。

自然発酵食品の製造は伝統的で、地域に根付いた文化でもありますが、

扱いの難しい複数の微生物の制御という生物学的に偉業がなされていることが裏には隠されていると感じます。

伝統というものは、近頃は時代遅れのようなニュアンスでとられますが、

こういった過去の偉業に目を向けることは必然であり、当時の人々の目線は

馬鹿にしてはいけないと思います。