沢のほとり 物憂げに
ただ漂うしか出来なくて
夢魂のように 仄かに光る蛍は
哀しみに沈んだ
滂沱の泪も枯れ果てて
それでも空虚の心を
何かで埋めたくて
心のままに手を延ばしたら
欲するほど すり抜けていく幻が
目の前で何度も映し出されて
絶望と諦念を
交互に繰り返した日々
剥がされていく心
裸になっていく思慕
雲居の月のように
まだ覆われていたかったけれど
霧消していく今宵の帳は
時を待ってはくれない
振り返らずに
過去の面影にそっと
さよならを告げた
もう、あの夏の蛍はいない
どこか寂寥の尾を引きながら
私は秋風を仰ぐ
2025 10 6 十五夜の夜
Sara

