時は大地上げ屋時代。

主人公・鐘もまた、地上げ屋の会社に勤めていた。

宇宙恐慌が広がり、鐘の会社は大財閥に合併されることに。

いったい鐘はどうなってしまうのか……



「ふう……編入試験難しかったな……」


合併されるとき、編入試験が行われた。

社員の持つ暗黒魔界の神より授かりし秘技がはたして真の力なのかどうかを確かめ、

それが偽りの強さなのであれば、切って落とされた。

其れ故、この時代、宇宙は失業者で溢れた。


「俺は宇宙最強と恐れられていた師匠にこの技を教わったんだ。

 それが偽りの強さであるわけがなかろう。」


そう言って、鐘は、会社に向かっていった。

と言っても、空のどこにも明るさはひとかけらもない。

時計は午前2時40分を差していた。


「やっぱり大財閥の下部会社ともなれば、仕事は難しいんだよな…

 でも、難しい仕事をこなせば、給料も上がるかな?」


鐘は、頭の隅にそんなことを考えながら、会社に入って行った。


「おそい!!!!もう3時00分10秒ではないか!!!」


鐘を待っていたのは、上司の怒号だった。

あのはげの上司は切り落とされ、いま鐘のもっとも近くにいるのは、

この頭はふさふさだがデブでチビの上司だった。


「し、しーましぇーーーん!!!」

「わかったらとっとと仕事にいけ!!一瞬の休憩もゆるさん!!」


こうして、鐘は上司に怒鳴られ、彼岸花のマークのついた小型の宇宙船に乗って宇宙へ。


「ちくしょー、10秒遅刻したくらいでなんでそんなに怒られなきゃならないんだよ…

 大体3時出勤って無理だろ……」


そういいながら、地図を取り出す。


「えーと、今日の地上げは、あの星か……」


そして、その小惑星に向かいながら、鐘は思う。

会社が新しくなってからは、仕事が難しくなると聞いた。

今まではなんのとりとめもない地味な星でばかり地上げを行っていたが、

今回の星はどんな星なんだろう……

そのような不安を胸に抱きつつ、小惑星の一角に着地した。


「えーっと、この星の住人は……と……」


すると、人の気配を感じたので、鐘は振り返った。


「Oh――」

鐘はその男を見た瞬間、はっと胸の高鳴りを感じた。

顔は掘りが深く、目はパッチリと見開き、漫画のような作りをしたくっきりとした鼻を持っていた。

そう、その男の顔を見ているだけで満たされていくような……

人々の伝説に語り継がれる、

”天の境界を遮断すべき漢―グレート・ザ・メン―”

俗にいう美男であった。


そのような美しい目鼻たちの男たちが、鐘の周りを取り囲んでいる。

いや、目鼻たちだけではない。

何者にも劣らぬ肉体美を誇っていた。

俗にいうガチムチである。


その男たちは、鐘を見て、なにやらその星の言語でしゃべっていた。


「オーウ!トーテモキーモィオートコゥデース」

「ウワーオ!!モレワーベーツニーイラネー」

「チカーヨルィータクモアルィマスェーン」

「シーーカシーー、クルモヌゥワーコバーマズゥ、サールーモヌゥワーホルー

 コレーワワルェーラヌォーシキタリィー」


そこに、年代を感じさせるローブを羽織ったガチムチのジジイが出てきた。


「ヨースィー、ソノモヌォーヲホルェー

 オキテーニハンスルェーヴァ、タタルィーニアウダーヨ」


鐘は、あれは長老かと思い、声をかけた。

「た、立ち退いてください!!!」


すると長老に腕をつかまれた。

どこか別の場所で話をするつもりなのだろうか、と思い、そのままついていくことに。

なにがあっても、自分には、

”真・暗黒堕天使炎月”があるから平気だと思った。


奴らに連れていかれた先は、公園だった。

見たことのないブランコやシーソーがあった。


その一角に、白い壁の建物が建っている。

大きさはふつうの一階建ての家の半分くらいの大きさだった。


そして、その中には、小さな部屋が何個も並んでいて、

どの部屋にも床に楕円形の穴が開いていた。


「(トイレか…カツアゲでもされるのかな)」


そう思って、鐘は身構えた。


そして、その場で住人たちは立ち止った。

鐘は、何人ものガチムチに囲まれて、戦慄した。

なんとその男たちは、ただ優しく、鐘の尻を撫で始めたのだ。


「アッーーーーー!!!!!」


続く