「裏切り」


僕達サジカゲンがやっと冠番組を持たせて貰えるようになった頃、苦い思いのある2人と再会することになった石嶺秀人と琴乃。

2人は元はサジカゲンのメンバーだったのだが、秀人がダンサーになる夢を諦められずに琴乃を引き連れて勝手に脱退してしまった。

辻浦一也と秀人は親友で秀人の裏切りが許せないというか、透…メンバーの水谷透の気持ちを考えると複雑だった、透は琴乃に想いを寄せていたからだ。

「何であいつらが居るんだよ!」

楽屋でリーダーの村下光がぼやく。

「仕方ないだろうあいつらだって仕事で来てんだからさ」

透がなだめるように光にコーヒーを渡しながら言った。

「良いのかよ?透は平気なのか?」

「あぁ、秀人が脱退したのだって自分の夢を叶えたかったからだし、目指す場所が違ってただけなんだよ…誰も悪くなんかないよ」

透は比較的冷静に話していた、透がそう言っている以上、光も一也も何も言えるはずがなかった。


深夜の新宿の居酒屋で秀人と一也は呑んでいた。

「琴乃とはどうなっているんだ?」

一也は様子を伺うように聞いてみる。

「いずれは結婚できたらいいかな…と思っている」

照れくさそうに秀人は言った。

「そうか…」

「でも、結婚したいっていう想いは僕の一方的な想いなんだけどね」

さっきとは打って変わって淋しそうに呟く秀人。

続く。