それは七夕の日だった。ひとりの訪問者が、私結城千春の元にやって来た。

「おばさん」

「千春ちゃん御無沙汰してしまってごめんね」

その人は半年前まで付き合っていた恋人沢城たけるの母親でした。おばさんやつれた感じがする。

「ごめんね…たける2ヶ月前に亡くなったの」

「え…?」

「遺品を整理してたらねあの子の日記が出てきて…迷ったんだけど千春ちゃんに貰ってもらった方が良いと思って受け取ってくれるかしら」

「おばさん…待って下さいたけるくんが亡くなったって…遺品って何のことだか良く分からない」

「千春ちゃん。あのねたけるは末期の癌だったの。皆に苦しむ姿は見せたくないって言って市外の病院に入院して…告別式も遺言で誰にも知らせないで欲しいと言っていたから誰も知らないのよ」

「そんな…」

おばさんの帰った後に残ったのはブルーの表紙のたけるの日記。私は怖くてそれを読むことが出来なかった。つい先日友人と女子会した時にたけるの話題が出たのだ。

「あ~ぁこれからイベントが多くなる季節だっていうのに男っ気0なんて情けないな」

「まあね~でもさ何で千春はたけるくんと別れちゃったの?」

「馬鹿!それは禁句でしょ!ごめんね千春」

「ううん大丈夫だよ」

知りたいのは私の方だって思った。何故別れを告げられたのか理由が分からなかった。

「あのさ…私の見間違いだと思うんだけど隣町の病院でたけるくんらしき人見たの」

親友の真由が申し訳なさそうに話した。

「でも本当に私の見間違いかも知れないからごめんね」

あの時真由が見たと言っていたのは本当にたけるだったんだ。末期癌で独りたけるは苦しんでたのに私は傍に居ることも許されなかったのが悔しい。

暫くして千春はたけるの日記を読み始めた。初めのページには私と出逢った頃の気持ちが書かれていて思わずにやけてしまった。しかしページが進んでいくうちに手が震えていくのがわかる。

そして最後の方のページで私は号泣した。

「もうすぐ俺の命も消えてなくなるだろう。今でも心残りは千春のこと…ずっと千春の笑顔だけを見ていたかった。でも俺と居たら千春を悲しませてしまう。千春の笑顔を壊したくないから別れた。最後に千春の笑顔が見たかったな…でも俺のことなんて忘れて幸せになっていてくれるとイイな」

「何で…何でなの…私は…最後までたけるの傍で笑って居たかったのに」

つづく。