桜の花が一分咲き二分咲きくらいのここ上野に後輩の佐々木秀一と静川友輝は来ていた。

「すいません先輩付き合ってもらって」秀一がすまなそうに友輝に言う。

「気にすんな(笑)どうせ予定なんて何もなかったからいいんだよ」友輝は爽やかな笑顔で桜を見上げている。男の秀一から見ても友輝は端正な顔立ちで短髪のさらさらヘアーで憧れてしまう。恐らく会社の中では一番モテるだろう。

桜の枝がサワサワと音を立て「また会えたね」「ほら会えた」「何年経っても何十年経っても忘れない」「何度生まれ変わってもきっとみつける」そんな囁きが友輝の脳裏を駆け巡っていた。

「佐々木何か言ったか?」

「え?何も言っていませんよ」

きょとんとして秀一が友輝を見ている。

「あ…いやならいいんだ」

疲れているんだろうか?また桜の枝がサワサワと音を立てさっきの言葉が友輝の脳裏に呼び掛けてきた…ゆっくりと周りを見回したが今日は人影が珍しくまばらだった。その時やさしい風が友輝の体を吹きぬけていきふと友輝が視線を向けた先にひとりの少女の姿があった。

長い黒髪の透き通るような白い肌その瞳が友輝を捉えた瞬間ふたりの時間が止まる。

まるで時間を遡っていくような感覚に囚われて…侍の格好をした自分の姿があった、そして透き通るような白い肌をした少女の笑顔がフラッシュバックのように甦ってくる。

つづく