思わず足が彼女の美弥の元に向いていた。何故夫の怜が美弥を気にかけるのか知りたくなったのかも知れない…。
ま、だからと言って直接対決するほどの勇気もないのも確かなんだけどね。
少し離れた場所から彼女を見つめていた。彼女はぽっちゃりした感じで美人というわけでも特別可愛いというわけでもないが不思議と誰もが美弥に声を掛ける。人を惹きつける何かがあるのかも知れない。元気に良く動くそして笑う。その笑顔はどこか淋しげに見えた。
私はというと子供を二人産んでいるとはいえスタイルには自信があるほうだ。自慢をするわけではないけどルックスも若い頃と変わらない。
「ありがとうございました」
美弥と一緒に出てきたのは田辺くんだった。美弥に向けるその表情は私にも見せてくれたことがない穏やかで温かいものだった。
「あっ」
美弥と目が合ってしまった私は思わず逃げるようにその場から走り去っていました。
「どうしたの?」
田辺の言葉に美弥は振り返る。
「今の寺本さんの奥さんだと思うんだけど…」
「萌波が?」
「えぇ間違いないと思う。寺本さんが自慢するのがわかるくらい本当に美人だったもの」
「寺本が?自慢?」
「えぇいつも嬉しそうに奥さんのこと話すのよ」
「そうなんだ…てっきり萌波とはすれ違っていてだから君のとこにって思ってた」
「え?!違います。寺本さんは奥さんのことちゃんと愛していますよ」
まっすぐな美弥の瞳に田辺の心は揺れた。
つづく。