「やっぱり勝てないな」

田辺がポツリと呟いた。カフェテラスでコーヒーを飲みながら一緒にいた萌波は田辺の見たことがない弱気な表情に驚いた。

「田辺くんらしくないわね」

萌波の言葉に田辺は深いため息をついた。

「俺らしいって?いつも自信満々にしているのが俺らしいってこと?」

「…」

「萌波さんは何も分かってくれてなかったんだね」

淋しげな田辺の表情に萌波は胸が痛んだ。

「皆そうなんだよ。俺のプロフィールに惹かれて寄ってくるんだよな…TANABEのブランドにね」

「そんなことないよ…私は田辺くんのまっすぐな所好きだったよ」

「でも寺本を選んだ」

「不安だったのよ。田辺くんの傍にはいつも色んな女の人がいて…信じ続けることができなかった私が悪いの」

「なんで寺本だったんだ?」

「怜は不器用だけど一生懸命想ってくれるから一緒にいて温かいの」

そうよいつだって怜は私を全身で守ろうとしてくれていたのに…いつのまにか当たり前になって我儘になっていたのは私。今頃気付くなんて…。

「そっか。俺に足らなかったのはそれなのか…結局寺本にも先輩にも勝てないな」

「?」

「この間から相談している彼女のこと俺じゃ駄目みたいだ…初めてデートに誘ったらOKしてくれて嬉しかった。だけど歩道橋でふさぎ込んでいた寺本を見つけた彼女は彼の方に行ったよ」

「どういうこと?!」

「寺本と彼女の亡くなった旦那さんはそっくりなんだルックスも性格もね」

「え?!」

つづく