怜は萌波が田辺と会っているのを度々見かけた。それでも萌波に問いただすことが出来ない自分が情けなかった。田辺は背が高くルックスもイイ。次期社長という将来が待っている。それに比べて自分には何もない。不器用でルックスはそこそこ…出世なんて望めないタイプ。

睦と広海は可愛い。でも将来のことを考えたら田辺の元に萌波を返した方がいいのではという思いが生まれ始めていた。

「情けないな」

怜は歩道橋の上から夜の街を眺めながら呟いていた。

「寺本さん?」

振り向くと美弥が立っていた。シンプルなチュニックにデニムのショートパンツというスタイルの美弥はいつもと違うイメージだった。

「あれ?今日は?」

「今日はお店がお休みだったので友達と出かけて今帰りなんです」

「あ、そうなんだ」

「寺本さんお食事は?」

「え?あ…まだだけど」

「じゃぁ一緒に食べませんか?」

美弥に誘われて近くの定食屋で食事をすることにした。家にまっすぐ帰る気にならなかったからだ。不思議なことに彼女といると心が和んだ。

一方怜の帰りを待っている萌波は最近の怜が何か変なことに気付いていたが自分が田辺と内緒で会っていることがあり夫の怜を責めることが出来ない自分がいることに対して苛立ちを覚えていた。つい怜の顔を見ると素直になれなくなってしまう。

「もう駄目なのかな」

深いため息をついた。

つづく。