夫に先立たれ生きていく目標を見いだせない藤崎美弥。本来明るく元気な美弥の顔から笑顔が消えていた。生活する為に飲食店でパートを始めるが美弥の心は一向に晴れることはなかった。そんな時偶然お店を訪れた夫にそっくりな寺本怜と出逢う。

怜と出逢ってから少しづつ笑顔を取り戻し始める美弥。まるで夫が生き返ったみたいな感じがして…しかし怜には家庭があった。

「やってられないよな」仲間との飲み会で怜は愚痴っていた。

「何かあったのか?」同期の山田が聞いた。

「俺はうだつがあがらないダメ男…それに比べあいつは時期社長候補。とんだ貧乏くじを萌波も引いたよな」

「あぁ…田辺のことか」

「ああ。萌波も俺なんかと結婚するより田辺と結婚した方が幸せだったのかもな」

萌波は怜の妻で元田辺の彼女だった。

「何馬鹿言ってんだ!萌波ちゃんは田辺よりお前を選んだんだぞ!寺本お前には萌波さんを幸せにする義務があるんだからな!わかってんのか?」

「・・・」

萌波は俺達同期の憧れの的。未だに彼女を崇拝している同期は多い。それがプレッシャーなんだよ。心の中で怜は呟いていた。萌波はスタイルが良くてタレントでいえば前田敦子似。明るく頭が良い…俺には全く不釣り合いな妻。

俺はおしゃれでも学歴もないただ普通の男。こんな俺のどこが良くて萌波が結婚してくれたのかわからない。それに偶然とはいえ萌波が田辺と会っている所を見てしまった。

俺には萌波を問い詰める勇気さえないのだ…情けない。

つづく。