小さな町の小さな漁村を目指して走った。上陸が遅くなったため、漁村に着いたのは日暮れ前。
夕陽が照らす海の上を一隻の船が漁村に向かって進んでいる。そんな風景を見ながら、僕は海岸沿いの道を走っていた。
僕が小さな漁村の小さな港に着いた頃、さっき遠くに見えた船であろう小さな漁船が港に船を繋いでいる。
何をしに来たわけでもない。少し遠回りをして、去年も訪れた小さな町の風景を、ただ見に来ただけだ。
バイクを停めて、煙草に火をつける。
小さな子供二人が、スーパーの袋をヒラヒラとぶら下げながら、ちょっと遠慮気味に、さっきの漁船に近づいていく。袋を漁師に差し出しながら何か言うと、漁師はその袋いっぱいに、獲ってきたばかりのイカを詰め込んで子供達に返す。
「魚は買うものじゃない、もらうものだよ」
漁師町で育った人たちは、みんなそう言う。
子供達と漁師のやりとり・・・これが、漁師町の風景だ。
すいません、イカ、譲ってくれませんか?
ん?食べるのか?
はい
どうやって食べるんだ?
ん?刺身かな?
さばけるのか?
うん・・・多分、出来るかな?
夕暮れの小さな町に、ふらっと現れた革ジャンとサングラスの男は、こうやって真イカをゲットしたのであった。イカが有名な町の、有名な食堂で食べるイカよりも遥かに新鮮な、獲れたてのイカを・・・。
刺身用にはこれがいいと、小ぶりのイカを五杯も選んでくれた。お金を払おうとすると、そんなもの要らないと言われた。
小さな町からの贈り物、イカの刺身を五杯分も平らげた、北海道上陸初日。





