いつでも笑顔を絶やさずにいなさい

そうすればしあわせがやってくる


どこかの雑誌の特集に書いてあった記事

もっともだとは思うが自分には感情があり世の中には理不尽なことが山のようにある、到底できっこないわ

と、心の内で反論した



keep smilin

「めーちゃん、飲みすぎだよ」

テーブルや床に散乱しているビンやら缶をサイドによけながら、カイトが困ったような顔をソファに腰をかけている人物に向ける

「うーるっさいわねー。まだまだ飲み足りないわよー!!」

グラスに並々を注がれた酒を片手にメイコが叫んだ


メイコは帰ってくるなり家中の酒という酒をかき集め、リビングで酒をあおり始めていたが数時間経つとようやく一息ついたのか、

始めの頃の勢いはなくなりなにやらぶつぶつと愚痴のようなものを言葉の端々にこぼしていた

「やってられないわよ~もー!」

「こっちが笑顔でいるからって調子にのっちゃってさ!」

こういった状態のメイコには反論せず、話を聞いて酒の席につきあうのが常のカイトだが、先ほどから

いつ酒を取り上げるべきかタイミングを計っていた

怒りをはらんでいるからか、酒の減る量が早すぎる。あきらかにオーバーペースだ。

「ね、ねぇめーちゃん、そろそろ止めた方がいいんじゃないかな。飲みすぎると明日に響くし・・・」

「あたしだって我慢してたのよ~?ちゃんと笑顔ふりまいてさ~?」

「あ、明日もハードなスケジュールだってきいてたよ?ね、だから・・・」

「なによ!あんたもあたしが悪いっていうの?!」

「い、いや違うよ!そんなこと・・・」

慌てて手を振り弁解しようとするカイトの前に、ずびしっとメイコの指が突きつけられた

「カイト!あんたいっつもへらへらしてるけどちゃんと毅然とした態度とってんの?!」

「え、え、え~?」

突然の自分に向けられた矛先になんと返して良いかわからず言いよどんでしまう

「大体あんたってば笑ってばっかりで、怒ってるところとか全然見たことないわよ!そんなじゃなめられるばっかりよ!?」

「そ、そんなことないよ~。俺だって怒る時はちゃんと怒ってるさ」

「・・・それってリンやレンを叱ってるときのことじゃないの?」

「う・・・・・」

「まったく・・あんたの顔見てるとこっちの怒りまでそがれちゃうわ」

ふう、と息を吐いてチラと横目でカイトを見れば先ほどと変わらない八の字に下がった情けない笑顔のカイトが写る



確かにいつも笑顔でいることは自分にはできそうにも無い

けど、周りの笑顔でしあわせになることは可能だ

目の前の男の笑っている顔は嫌いではないし、今の困ったような笑顔でさえ自分の心の何かを満たす

心地良い酩酊感に意識を手放しながら、メイコは笑みをこぼした


「ふふ・・・」

「なに、めーちゃん?あ!駄目だってここで寝ちゃ!風邪ひくよー」

カイトがぴたぴたとほほに手をあて、起こそうとするがメイコの体はソファに沈んでいくばかりだった

「・・・・もー、めーちゃんは・・・」

このままでは風邪をひいてしまう。メイコを部屋に運んで、テーブルやごみを片付けなければならない

「さっきまで、あんなに怒ってたのに笑ってる。・・・・まったく。いい笑顔だな~」

むに。とメイコのほほをつまみカイトは移動のため、メイコの肩に手を掛けた


「寒…」
仕事からの帰路に着きながらメイコは一人ごちた
予定より仕事が長引いてしまった
春になり日中は汗ばむくらいの陽気になったとはいえ、夜はかなり冷え込む
薄手のジャケットしか持たず出かけたことを今更後悔しても遅い
冷えた両肩を抱きメイコは歩調を早めた


「おかえりー」
玄関を開けてただいまを言う前にかかる声、カイトとミクだ
「ただいま」
玄関から繋がっているキッチンからお玉を片手にしたカイトが顔を出す
「ずいぶん遅かったね~」
「先方の都合でね」
「そっかぁ。おつかれさま。お風呂とご飯どっちが先?」
「体冷えちゃったからお風呂が先がいいわね」
「今日さむかったもんね。ミクー、お風呂沸かして~。じゃ俺なんか体あっためるもの作るね!」
「ありがと」


リビングに向かう途中すれ違ったミクに声をかけながら
今日は熱燗にしよう、そんなことを思いつつジャケットを脱いだ