春風をうけて、この世で1番美しげにラッパ水仙が咲き誇っていました。
川では、カルガモファミリーが大騒ぎでバタバタしています。
土手の桜の木は、今にも咲きたくてうずうずしている蕾を大切に育んでいました。
空は青く、白い雲は十字架のように重なっていました。
「あー、ここは天国だ」
宇宙からやってきたばかりの少女は、お気に入りの黒髪をなびかせながら思うのでした。
そして、今年も又、同じように春はやってきたのです。
やってきたはずだったのです。
でも、春の声と共に、新しいウイルスもやってきていたのです。
マスクが買えなかったり、トイレットペーパーが買えなかったり、ウイルスと共に品不足もやってきたのです。
今日も、おばちゃんが、生活必需品のアレコレを大きな文字で書いたメモ用紙をもってお買い物をしていました。
最近は、こんな感じのお客様が多いと、スーパーの販売員さんは思うのでした。
おばちゃんは、都会で働いてる子供に送ってやるために、あれこれ一生懸命お買い物してるのです。「あー、このおばちゃんの気持ち、子供さんにちゃんと伝わるのかなー」販売員さんは、母親達の強い愛を感じるのでした。
新しいウイルスは、初めて見る世界を楽しむかのように、どんどん広がっていくかにみえました。
そして人々は、不安の中でも自分ができることに気づき、協力しあって新しい社会ができて行きました。
1年がたち、あの土手の桜の木は、今年も咲きたくてうずうずしている蕾を大切に育み、水仙は春風に吹かれ気持ちよさそうにしていました。
そこでは、あの少女が「やっぱりここは天国ね」と、微笑んでいました。