出版社紹介文「集落の消滅を憂う老人たち、零細農家の父親と娘、田舎に逃げてきた若者、かつての負け組たちが立ち上がる!地域活性エンタテインメント」
限界集落とは…65歳以上の高齢者が、人口比率で住民の50%を超え、共同体の機能維持が限界に達している集落。
そんな限界集落を復興させるご都合主義とロマンにあふれたエンタテイメント小説。
農業の本当の辛さが描かれていない。
自分たちだけ良くなって、それでおしまい。
現実は小説のように甘くないし、うまくいくはずもない。
チープな成功体験を描いたビジネス書の様な本でした。
話のメインはいかに限界集落を復興させるかというところに置いているため、画竜点睛を欠くような印象を受けます。
しかし、これらを無視して読んでみると、それなりに面白い。
そこには、筆者の限界集落に居住する人に希望を持ってもらうというような意図を持って描かれているのが伝わります。
エンタテイメント小説で今までなかった切り口の小説を書いた時点で、評価すべきではないかと思います。
農協の功罪の罪の部分を上手にクローズアップさせているが、安易に悪玉にしておらず、合併後の町組織を敵にしているものの、最終的に和解させているところなどエンタテイメント的な盛り上がりを作っている。
もっとこうすればよかっただろうにと思う点は以下の通り。
しかし、マイナスポイントは盛り上げ方がうまい分、盛り下げ方が甘い。
絶望感がない。
どうしようもないくらいのダメージを受けているかというと、そうでもない。
トラブルに巻き込まれているものの、本当に大切な農業自体はほぼパーフェクトな状態が続いている。
「農業は甘くない」という様は、度々描かれているが、本当につらいのは、災害で今まで築きあげたものが、ほぼ無に帰することではないだろうか?
また、絶対的な敵が存在しないことも弱い。
頭でっかちの経済学者の一人でもいてくれれば面白かった。
「貧乏人は故郷を捨てろ!」くらいのことを言う完全な悪役経済学者を出して、町組織がはじめは反発しながらも従うが、最終的に集落と和解、協力していくという形のほうが良かったんじゃないかと思う。