本当に好きなら我慢できるでしょ?
とは、幼い頃にデパートで当時最先端だったミニ四駆をねだる私に母が言った言葉でもあるし、大学時代の彼女にホテルのソファーの上で言われた台詞でもある。
前者は苦く、後者は甘酸っぱい記憶なわけだけれども、中々に難しい事のような気がするわけなのである。
快楽を前に忍耐をできるのか。
忍耐の先により大きな幸福はあるのか。
これは実に難解な気がするわけだ。
例えばサウナ。喉はもうカラカラで脱水症状待ったなし。耐えに耐え、飲むコーヒー牛乳はさぞうまかろう。
これは容易に想像できる。
しかし、例えば目の前に大好きなデミグラスハンバーグがあるとしよう。いや、別段チーズインハンバーグでも、オムハンバーグでも構わないのだが、その真横に大嫌いなセロリが山盛りになっていたとしたらどんなに愛を示さなくてはならなかったとしても私の手はセロリに伸びないだろうし、間違って食したとしても、その後にハンバーグを食べる許可を得たならば素直に美味だとは言えない気がする。
これはサウナの後にコーヒー牛乳ではなく熱々のお汁粉が出て、完飮を義務付けられ、その後に水をのむ許可が出たと想定しても同じような気持ちになるだろう。
忍耐からの幸福倍増理論は、欲望を違う形で先に刺激すると駄目になる気がするのである。
リカちゃん人形を買い与えられてからのミニ四駆では行っけーマグナムとは素直に叫べないだろうし、お預けをベッドの横で食らった後にシャワーを浴びながらマスターベーションで自分を抑えた後に彼女が全裸で布団に寝ていたら勃つものも勃たないのである。
ふにゃちんなのである。
明日は雨の中のゴルフが中止になったと教えられ、代わりに何故か参加者全員でゴッド縛りの″パチンコ″勝負が決行されるという知らせを上司から受け、恐る恐るせめてスロットのゴッドを、いやむしろハナビを打ちたい、と上申した私のそんな思いを上司には良く考えていただきたい。
中折れどころじゃない。EDになりかねない。
