下記の通り、生化学セミナーを開催致しますので、ご興味を

お持ちの方は是非ご参加くださいますよう、ご案内申し上げます。



               記



日時:平成22年9月13日(月) 17:00-18:30


場所:愛媛大学医学部 基礎第一講義室


演題:メカノバイオロジ―の開拓と展開

    - 細胞のメカノセンサーの同定とその意義 ―


講師:シンガポール国立大学 メカノバイオロジー研究所
     準教授 澤田 泰宏 先生

要旨: 
  物理環境は、発生・再生、心血管系機能の維持・障害、骨代謝
、悪性腫瘍の形成・浸潤・転移など多くの生物学的現象の制御に重要な
役割を果たしていることが知られている。これに関わる機構を細胞レベル
で解明するため、機械的刺激(メカニカルストレス)と総称される様々な刺激が
細胞に加えられ、それに対する細胞の応答が研究されてきた。しかし、演者らが
メカノバイオロジーと呼ぶ、物理的な環境や刺激に対する生物学的反応および
その機序を研究対象とした生物学は、それがカバーする領域が広いにも
関わらず長く未開拓の状態であった。
 従来のメカノバイオロジーの大きな問題点は、実験方法に関わる制約のため、
メカニカルストレスに対する細胞内シグナル伝達(メカノトランスダクション)の
急所といえるメカノセンシングの機構が明らかにされていなかったことである。
演者らの報告 (1)まで、物理的刺激を細胞内の生化学信号に変換するメカノセンサー
分子として明らかにされていたのは、細菌におけるイオンチャンネルのみであった。
このためメカノトランスダクションの研究では、本当にメカニカルストレスに特異的な
シグナル伝達を観察しているのかを検証することが極めて困難であった。
 演者らは、1996年にメカノトランスダクションに関する研究を開始し、哺乳類
動物の細胞におけるイオンチャンネル以外のメカノセンサー分子の同定に
とりかかった。MAPキナーゼ→MAPキナーゼキナーゼ→→小分子量Gタンパク質
(smallGTPase)と、下流から上流へメカノトランスダクションをたどり、
Srcファミリー
キナーゼの基質タンパク質であるp130Casを、細胞骨格に存在する、イオンチャンネル
ではないメカノセンサーとして報告した(1-4)。
 本セミナーでは、メカノセンシング機構の解明を中心に展開している演者らの研究を、
p130Casおよびp130Cas以外のメカノセンサー候補分子の構造と力学的特性、さらに
メカノセンサーであうp130Casの細胞癌化における役割に関する最近のデータも含めて
紹介する。また、昨年、シンガポールで開催されたメカノバイオロジーの大規模予算
プロジェクトの概要についてもふれる。

★本セミナーに関するお問い合わせ先
 愛媛大学大学院 医学系研究科 生化学・分子遺伝学分野
                            内線: 5254