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ー常永久ーシンイ二次創作

☆信義-シンイ-の二次創作ブログ☆
(小説・イラスト・日記等)
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月明かりに華【特別編・俠婦】




「・・・“侠婦”?」


チャン侍医の一言にウンスがギクリと肩を強ばらせた。


朝からの薬員の仕事が一段落終了し、

暇なウンスは診療所に入って来たがその言葉を受け

肩越しに後ろを振り返ると、

チャン侍医が医療道具の後片付けをしていた手を止めジッと此方を見つめている。


その切れ長の目は何時もよりも、僅かに丸くなっている様に感じるのは気のせいだろうか?



「・・・あぁ、そういう事でしたか?」


チャン侍医は何かを納得したのか、小さく笑い、

へぇー、と彼には珍しい気の抜けた声を出した。


「私とした事が今頃気付くとは・・・」

「ヤダわ、チャン先生。何の事かしら?」

「誤魔化すのが下手ですね」

「・・・」


ぶぅと頬を膨らませたウンスを見て小さく笑っていると、

隊士の一人を担いで入って来たヨンがその様子に気が付いた。


「あら?怪我したの?」


「いや、暑さで・・・?、何かあったのか?」


ヨンの問いに、

ウンスはちらりと素知らぬ方へと視線を向けチャン侍医は再び笑い出す。



「・・・何だ?」


わからないヨンは、目を丸くするだけだった――。






「実は燕恵(エンケイ)が元に帰った時に、少し問題があって・・・」


「問題とは?」




隊士は最近の天候の暑さで倒れたらしく、暫く休む様にと寝台に寝かせ、

『熱中症』だと言うウンスは濡らした布を隊士の額に乗せた。


「薄荷が良いと言っていましたね?」

「あら?覚えていたの?」

「先程の元でのを思い出した流れでしょうか?」

「あら、そーですか」


「何だ?何があったんだ?」


薬が出来る間ヨンは診療所に居座り

先程の二人の様子を聞いていた。



患者もいなく休憩を取ろうかと考えていた為、

丁度良いとチャン侍医は三人分のお茶を用意し始めた。



「エンケイと私が元に行った時、二人共高麗の者だからと中々住居を貸して貰えなかったの」

「そんな事があったのですか?」


それは知らなかった。


あのまま親族が全て用意してくれているのだと思っていたのだ。


「エンケイの母方の親族は皇族と言ってもかなり遠縁で、しかも高麗に出される程の身分だった訳で・・・つまりは何の力も無かったのよね」

「しかし、母親の叔母がいると・・・」

「そう、結局はその叔母さんが助けてくれたのだけど、屋敷に住めるまでは暫く小さい家に住んでいたのよ」

「そんな・・・」


そんな事になっていたのなら父親の財産から僅かでも送ってやれば良かった。

だが、あの後ヨンも怒涛の勢いで部隊も環境もガラリと変わってしまっており手助けが出来たかもあやしいが。


神妙な顔付きになってしまったヨンの顔に、ウンスは慌てて大丈夫だったのだからと手を振り声を掛ける。チャン侍医もウンス達と会ったのは既に夫人の屋敷に来てからであり、その前は知らなかった。


そして。



「・・・その時だったのですね、侠婦の噂が出たのは・・・」


「侠婦?」


ヨンはそのまま目線をウンスに戻して凝視したが、直ぐ様いやと声を上げた。



「ウンス殿が?侠婦?」



そんな事、有り得ないだろう。


確かに多少お淑やかさは無いが、

女剣士の如く動けるか?というと無理だと見てわかる。

機敏でも無く武器を扱える訳でも無い。


なのに、“侠婦”とは?


理解出来ず眉を顰めたままヨンは正面に座るウンスを見てしまい、

ウンスもその眼差しを受け居心地悪そうにお茶を飲んでいた。


チャン侍医は淡々と話す。


「私が夫人の屋敷に行く少し前に、立ち寄った町である噂がありまして」

「?」


「どうやら人間の肉を切るのを何とも思わない女人がいると」

「はあ?」


ヨンは口を開けたままその顔でウンスを向く。

湯呑みを口に付けたウンスは、目だけをぱちりと瞬きさせヨンを見つめた――。








高麗から少しの荷物と幾らかの金銀を持って逃げたウンスとエンケイ。



「・・・大丈夫だったのかしら?あの人達・・・」

「彼らは特殊な技も使えるという事ですから・・・、信じましょう」

「そうね・・・」


最後に彼を怒らせてしまった感じもあるけど・・・。


彼女もいるし、仲間もいる。

彼はその方が良いのよ。

自分の様なイレギュラーはあの人達の中に入る訳にも関わる訳にもいかない。

そもそも私にはエンケイがいる。

彼を守ると既に決めたのだから――。


しかし。


元の国境を越え小さな宿屋に泊まった時。


「・・・遅いわね」

「・・・」


二日経っても迎えの馬車は来なかった。


エンケイの母方の親族が迎えに来るという手筈になっていたというのに・・・。


「まだお金に余裕はあるけど、これが一週間だったらもう無理よ?」


一週間という言葉をウンスから学んでいたエンケイはなるほどと言うと、

椅子から立ち上がり荷物から書簡を出した。


それには親族と言っても、エンケイの母方兄弟の側室の子供。

つまりは彼とは殆ど繋がりの無い血筋の者だった。最初に姉側に出したが、その主人が吏官の為二人の身元が潔白だと確認出来るまでは許可が下りないと言われていた。だが親切な叔母は方々探し、遠い親族にまで頼み込んだという。

漸く預かる先を見つけ、その者達が迎えに来るという約束になっていたのだが・・・。


更に三日経っても迎えは来ない。


数日間いる事になるのならエンケイの薬も足りなくなってしまう、

近くの薬屋でも探そうかとウンスが考えていると漸く迎えが来たと宿屋の主が伝えて来た。




「・・・はい?」


ウンスは迎えに来た男の話を思わず聞き返してしまった。どうやら迎えに来る筈の男性は馬車だけを用意し、行先をこの使用人に教えただけだという。


既に二人の世話代は姉側から支払われているにも関わらず、要は金だけ貰い後は勝手にやってくれという事だった。


「はぁー?!何なのそれは!」


怒りで怒鳴るウンスと諦めた表情なエンケイを見て、わからない男はただ戸惑うだけしか出来ずにいる。

そして仕方なしに馬車が向かった先は男性が依頼したという知人が管理する家だったが、まずそこに使用人はいなかった。



小さな町は群主も兵も締まりの無い様子だったとウンスは話す。


しかも、エンケイが密かに皇族の血筋を持っていると聞き付けた商人達が儲け事を持って来てその対応でエンケイの具合も良くはならない。結局は一ヶ月足らずでその家から離れてしまった。


「一人でも護衛を付けた方が良くないかしら?」

「まだ命が狙われている訳では無いし、無駄に貯えを減らしたくはない」


仕方なく、二人は違う家を探し出しそこに住む事にした。



「――結局は二人若い高麗人だから周囲が信用する訳もないじゃない?

そこでも似た様な事があってまた引越しを・・・」


「・・・」


ヨンは唖然となり、更に離れた数年を後悔した。


だがウンスが残りエンケイだけ元に向かっていたら尚酷い状態になっていた可能性もある。どれが良かったとも言えないのは充分に自覚しているのだが・・・。

それでも、ウンスを大変な目に合わす為に逃がしたのではないと苦しかった。


「・・・漸く簡素ではあるけど落ち着いた家を見付けて仕方がないので二人で家事をし、住んでいこうとなった訳。まぁ、傍から見れば新婚さんに見えたでしょうね」

「あ、あぁ、そうか」


もごもごと口篭るヨンをちらりと横目で見たチャン侍医は、三人の湯呑みに茶を足していく。



「でも、やっぱり仕事はしなくちゃとエンケイは寺子屋で子供達に字を教え、私は薬屋の薬草の干し場で仕事を」


表に出て売る迄には信用は無く、下働きから始めたウンスは年配者に混じり採れた薬草を干す仕事を始めた。



「――でも、働くとどうなると思う?」


「・・・それは」


何となく気付いたヨンだったが、

ウンスを見つめた後その顔をチャン侍医に向けた。

チャン侍医は茶を飲みながら小さく頷き話し出す。


「異国民だから狙われやすくなります。私もそうでしたから」

「そうなのよねー」


「・・・何か、あったのか?」


「誘われたり、しつこく寄って来たり・・・まぁ、色々」


「えぇ?!」


真っ青な顔色は彼の天秤が完全に“後悔”に傾いているのか、

だがそんなヨンとは反対にウンスはうーんと腕を組み話し出す。


「時々叔母さん側から、もう少しだから待って欲しいと連絡は来ていたのでそれだけが頼りになっていたし、もう違う土地には行けない。

でも高麗人だと馬鹿にし、騙そうとする者や言いくるめて連れて行こうとする者まで出て来たのよ」


「はぁ」



「――で、ある日、

薬屋に西域から来た貿易商の男が来て、

私を貰いたいと言って来たわけ」


「?」

「いや夫婦だと・・・」


ヨンとチャン侍医はウンスの言葉に驚き、口を開けていた。

夫婦と周りには言っていた筈なのにそれでも良いとその貿易商は言って来たという。



「エンケイが具合が良くない事まで調べていたらしく、

後先無い男なのだからと言われ、

そこで我慢の限界だった私は――」






○その薬屋にて



ウンスは年配者達に守られ、

薬屋の店主が困惑気味に対応している様子を後ろから見ていた。


貿易商がそこにいるウンスを見付けると懐から大きな袋を取り出し机に置いたが、

ガチャンと鳴った音でかなりな量の金銀が入っているとわかった。


「どうだ?この金を今の夫に渡せば良い暮らしが出来るだろう。

お主には更に豪華な暮らしをさせてやる。

今みたいな草を弄るなどもうしなくて良いのだ」


年配者達は後先が無い夫より其方の方が良いのではないかと勧める者、

行って騙されて売られるだけだと言う者それぞれだったが、ウンスの気持ちは最初から決まっていた。


「言っている意味がわからないわ、私アンタの元に行くつもりなんて更々無いんだけど?」

「何だと?」


ウンスに無下にされ貿易商は機嫌が悪くなっていく。


店主もはらはらと焦り出し、ウンスを止めようとしたが――。


「そもそもが私の好みじゃない!そんな事して奥様達が泣いてるわよ?」


この時代は正妻の他に側室がいて当たり前。

どうせ自分もそういう扱いなのだろうが、ウンスは現代人でありそういう男は真っ平御免だ。



――“無意識に何でも手に入ると思うなよ?”


何でもある世界から無い世界に来たウンスには

この数年で痛い程に身に染みた。


「何だと?夫がどうなっても良いのか?」


彼が寺子屋で字を教えている事まで調べていたらしく、彼を追い出すと貿易商は吠え始めた。


「何ですって?!」


エンケイの暮らしを脅かす発言は正にあの夫人と変わらない。


怒りにウンスは近くにあった薬草を切る鎌を手にし、貿易商に近付いて行った――。




「あぁ、ウンスちゃん!」


後ろから年配者達が慌てて声を掛けたが、

その声を無視しウンスはその鎌を貿易商に向けた。


「――はぁ?やれるものならやってみなさいよ。

だけどそこから私に一歩でも近付いたらアンタの命はそこで終わるわよ!」

「な、何を・・・」

「アンタ知らないから言っておくけど、私は体の中の臓器や骨や血を何度も見た事があるの。

人を切って縫う仕事を学んでいたのだから・・・まさかと思うなら近付いてみなさい」


ジリジリと幅を縮めるウンスに貿易商が何故か後退りしてしまう。


まさか女人が、そんな事を学ぶ筈がないとわかっているのにウンスの落ち着き具合は何なのか?



「・・・そうね、先ず腕の上腕二頭筋の筋肉を切ってみる?

大丈夫よ、骨から分離され腕が上がらなくなるだけだから・・・」


「な、く、来るな!」


ヒィッと言って貿易商は袋を掴むと薬屋から逃げて行った。




その様子を見ていた者達は恐る恐る尋ねて来ると、ウンスは鎌を置き振り向く。


「途中まで勉強していたのは確かよ。

エンケイの傍にいるのは彼の治療と看病の為でもあるんだから」


ウンスの説明に、それでエンケイから離れなかったのかと薬屋の面々は納得した様だった。



だが。


数日経ち、町中ではおかしな噂が流れ始めた。



女人は大層腕に自信があり評判の悪い貿易商を斬る勢いで近付き、それに恐れをなした貿易商は逃げて行ったという話しだった。


そして、その噂は更に広まり、


その女人に近付くと身体中の肉を切られてしまう。

酒屋に来た時は気分良く返さないと腕を落とされる。

何故か男装をしている。


等など――。



しかし、その勇ましい女人の姿を見た人は誰もいなかった。





「暫くして私がその町に滞在した時にそんな噂が立ち、だが町に侠婦が見当たらない。

・・・では貿易商を追い払った女人は誰だったんだ?という謎だけが残りました」

「そんな謎が残っていたの?ヤダおかしー!」


ケラケラと笑うウンスに対し、微妙な表情のチャン侍医と何故か難しそうに眉を顰めたヨンがいた。



「・・・それは、貿易商が腰抜けだからまだ良かったですが報復に来る奴だっているのですから」

「まぁ、そこは私も気になったわよ?だから店主に貿易商が来たらあの女人は“生きている人間の身体を切る事を学んでいた”と言って良いからと伝えたのよね」


「ん?んー・・・」


確かに嘘では無い。

・・・が。


生きている者の怪我や病気を治す為に途中までだが大学まで行っていたのだ。


しかしあれから貿易商は来なかった。

ウンスを余程危ない女だと思ったのかもしれない。



「・・・まぁ、現代で言えば“サイコ○ス?”」


「・・・・・」


首を傾げニコリと可愛らしく笑うウンスに意味はわからないが、

危険な言葉なのだろうと二人は感じた。



「でも数日後に連絡が来て、漸くあの屋敷にお世話になれる様になって・・・」


それからはチャン侍医がウンス達に出会ってからで、数年後にエンケイは亡くなった。

最初こそ大変だったが、後半は二人共に苦労する事も無くエンケイ等少しの間小さい子達に字を教える事が出来て、良い思い出だと語っていた。



「まぁ、家事が苦手だからご飯作るのは大変だったけど・・・。一人暮らしの時よりはまだマシだったかな?」


ウンスが楽しげに思い出を語る間、ヨンは何故か納得出来ない部分があり、

視線をチャン侍医に向けると彼もそうなのか、

口元だけの薄い笑顔を貼り付けたままでいた。






「“身体を斬る女人”“男勝りな女人”で直ぐ気づけた筈だったのに・・・」


「おいチャン侍医」

「ん?」




まだ帰っていなかったヨンがチャン侍医を呼んだ――。







【後編】に続く
△△△△△△△△△

Twitterに書いていた話をこちらにも載せました(*^^*)。✨
(そこも途中までしか書いてなかったですね)

※エンケイが誰なのか、前回アメ限記事纏めを読んだ方は覚えているかもしれませんね🐱
月明かり~は宮殿内は平和です。
(王妃様怪我してなかったし)






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