※少し原作やドラマに被る部分がありますが、あくまでもこの話は“蝶が舞う~の中の二人”ですので、そのつもりで読んで頂けるとありがたいです。
宮殿に帰って来た頃にはうっすらと空も明るくなり、少しの寒さに眠気も覚めてしまい、
二人は歩きながらキチョルに対して次の対策を話し合っていたのだが――。
「わかったわ。もう逃げるのは止めたわ」
「はい、良い判断です」
「彼奴らとどう対抗出来るかよく考えなくては・・・」
「っ、そうでは無く。宮殿内にいて下さいと――」
暫くしてヨンとウンスは市井から帰って来た。
その後ろからトルベとテマンも二人の会話が聞こえる程の距離を保ちながら付いて来ていたが、彼らの会話は平行線のままで野次馬の二人は離れられないでいた。
しかもウンスが乗って来た馬でさっさと帰って来るのだろうとテマンの予想は外れ、馬上にウンスを乗せヨンはその手綱を掴み歩いて来たのだ。
「市井からだからそんな遠くは無いが、あの隊長が?」
不思議そうな表情のトルベと目と口を丸くして、そんなヨン達を見ているテマン。
宮殿の門前で遠くから近付いて来るヨン達を二人はそんな顔で迎えていたのだった。
――数刻前の事。
ヨンは朝が好きだった。
静かだが強い光を放っており、空気が澄んで良い匂いさえすると思っていたからだ。
だが、最近は寧ろその暴力的な清々しさが煩わしく、今の自分はどの様に日に晒されているのだろうか?そんな事を考える時もあった。
その理由は既にわかっていて、それでも口には出したくはなかった。
出したら終わりだと思ったからだ。
しかし。
その気持ちは一瞬で消えてしまい、残ったのはまさかという衝撃と見つけた事が偶然ではなかったのではないかという奇跡。
あの時のいよいよ深まっていく森林と霧の湿った匂いの中で嗅いだ甘い香りが、
今目の前の人物の物だったのだと先程から高揚感が冷めないでいた。
何か会話を――。
探れば探る程会話の糸口が見えず心底にある衝動で焦りが強くなっていく。
驚きと少しの戸惑いを表情に乗せたウンスがこれ以上離れない様にと、ヨンはゆっくりと手を伸ばし指先に触れてみた。
「・・・イムジャ」
二人の時でしかこの方をそう呼んではいなかった。
初めてそう呼んだのはウンスが刺した俺の腹を治すと叫んだ時だったか。
――あぁ、だからか。
思わず何かが掠め、落ち着いてくれと言いたかった。
あの山小屋のこの方も泣きそうな声だった。
なのに、そんな気持ちが申し訳なくも嬉しかったのだ。
「・・・手に痛みは?」
小さな声に視線を合わせるとウンスはジッとヨンを見つめていた。
だが、微かに染まっている頬に気付き乾いた喉を嚥下し潤してしまう。
「痛みは、ありません」
「そ、そう」
「イムジャ」
「え?」
「俺は・・・あの時の事全てを覚えています」
「・・・」
「言った言葉も・・・」
「言葉?」
「軽い気持ちで欲しいと言っていないと」
「あ」
ヨンの言葉でウンスも何かを思い出したのか、肩を跳ねさせおろおろと目を狼狽えさせる。
あの時ウンスはそこまで深く考えなくても良いと言っていた。
だが今はその言葉はヨンには意味が無い。
「あの時の気持ちは今でも変わらない・・・。
イムジャが俺に対して憎いと思い許していないとしても、
俺は・・・イムジャと何か繋がりが欲しい」
――繋がり?
かち合う彼の瞳は特有の熱量を持ち、正面からウンスを射抜く。
あの時も隠れていた瞳はこんなにも深く強い光を持っていたのだろうか?
ぼんやりとした灯りしかないこの場所でも、その瞳が綺麗な濃い鳶色の虹彩なのだと改めて知った。
確かに怒りはあったが、それが薄まってしまったのは何時からか、気付いたら近くにいるヨンを見ていたからかもと何とも甘い自分が情けなかった。
追いかける事は平気でも逆には慣れていない私はそれだけで参ってしまう。
しかも、この彼は―――。
・・・あぁ、どうして思い出せなかったの?
まさか向こうに来ていただなんて誰が想像するだろうか。
「イムジャ」
再び呼ぶ声にウンスが俯いていた視線を戻すと彼は何時の間にかすぐ傍まで来ており、緩やかな動作で手を伸ばす。
彼も遠慮しているのか冷たい手でウンスの指先に触れ、まるで先程の戦いが嘘の様に静かに覗き込んで来た。
「信じられないのなら何度でも・・・」
「・・・そういえば貴方って、頑固な性格だったわよね?」
「二人共そう変わりは無いと思いますが?」
確かにこの方に触れた事はあったが何時も何かに追われ、警戒心でヨンもウンスも落ち着いていなかった。
――あの時の様にゆっくり確かめたい。
触れていた指先から徐々に上がり、そっとウンスの頬に触れていき、近付いていくヨンの顔を見ていたウンスが目線を下げ、
それが了承と理解したヨンは薄く柔らかい唇へと自分のを触れさせる。
知らなかったら、この方にこんな風に触れる事はなかっただろう。
やはり懐かしい。
この方もそう感じているだろうか?
それなら嬉しいが――。
何時の間にか力強い腕がウンスの腰に回されており、少しの戸惑いはあったがチェヨンがあの時の青年だったと知ると抵抗感は無くなっているのが不思議だ。
一線を既に越えていたという事実があったからだろう。
触れて来た彼の唇は微かに覚えていたあのままの柔らかさと匂いと、後は・・・。
だが少し間の後唇を離したウンスは、隙間に手を入れヨンの口を抑えた。
「・・・ちょっと、目・・・」
「は?」
「目開けたままするの止めてくれる?」
「何故です?」
・・・は?貴方が昔言ったんじゃないの?
昔見れなかったウンスとの口付けをつい凝視してしまうのは仕方がない事だと思っているヨンは、暫くは閉じないつもりだった。
「しかも、チェヨンさん・・・!、わ、わっ」
徐々にズルズルと押し倒されそうになり、ウンスは慌てて覆い被さるヨンから這い出ると、彼は待ってと逃げるウンスの腕を掴んで来た。
「先程の返事を聞いていないのですが?」
「へ、返事?」
繋がり云々という話?
ウンスが尋ねると真面目な顔付きでヨンは頷く。
彼の真正面からの告白に内に隠している何かさえ打ち砕かれて、
頑なに張り巡らせていた防御も崩壊してしまう。
私を愛おしいと告げていて、それを見つけウンスの本能が震えた。
――捕らわれてしまう。
いや、もしかしたら、
山小屋で既に彼の姿に心を奪われていたのかもしれない。
庇護欲とはまた違う何かがあり、彼を見捨てられなかった。
「・・・私って結構重い女なのよね」
そんな言葉しか出て来ない。
だが、ヨンは頷きわかりましたと返事をした。
何故か嬉しそうな彼の表情にウンスが尋ねると、
「俺も実は執念深い故、受け止められると思う」
「・・・ん?」
不思議そうな眼差しを送るウンスに
彼は更に嬉しそうに目元を緩めるだけだった――。
宮殿に戻って来たヨン達は王様からウンスにも武閣氏の護衛が付く許可を貰ったが、ウンスと先の話をするしないで二人は言い合いになりヨンは再びウンスの機嫌を損ねてしまった。
康安殿を出たウンスはヨンに付いて来るなと言い、一人典医寺へと戻って行き、少し立ち尽くしていたヨンは肩を落としながらも兵舎へと戻って行く。
だが、前日兵舎を出た時とは違いキチョルへの警戒はあったものの気持ちは清々しいものに変わっていた。
部屋内の階段に座ったヨンは握っている鬼剣をジッと見つめる。
ボロボロになったメヒの形見をずっと巻いている意味は何なのか?
許嫁だったメヒを忘れない筈が隊長や兄弟子、メヒの無念を忘れない為の形見に何時の間にかすり替わっている。
“あの時の苦しみを忘れるな”
だが、今はその苦しみよりも使命が心を占め、頭の中には常にあの方しか出て来ない。
違う最初から決まっていたのだ。
「・・・・・」
ふぅと小さく息を吐くと、
剣からするすると布を剥がし私物入れにそれをしまう。
――すまない、メヒ。許してくれ。
今更かもしれない。
自分があの世に行ったら頭を下げるが、
今はまだ死ぬ訳にはいかない。
「そもそもイムジャから、直ぐに命を掛けるなと怒られてしまったからな・・・」
ふと部屋の扉が開く気配がし、ヨンは箱の蓋を閉めた――。
〔2〕に続く
△△△△△△△△
お久しぶりですの蝶🦋です。
これはこれで空想的~とはまた違う話ですからねぇ。
どちらのヨン氏もグイグイ行くので、
そんなヨン氏好きな人の為に・・・✨
え〜、隊長ガン見するタイプ?( ˙꒳˙ )スゲー
でも昔見れてなかったんだから仕方ないかー。
彼は漸くメヒの呪縛から離れましたね。
(メヒ側はアメ限記事にて)
あ、こちらは長くないお話よ。🐣
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🦌🦅🦮🐧🦊🐈🐥~🎤✨パリお疲れ様です!ꉂꉂ📣来月はまた日本🌟
