ー常永久ーシンイ二次創作 -11ページ目

ー常永久ーシンイ二次創作

☆信義-シンイ-の二次創作ブログ☆
(小説・イラスト・日記等)
二次創作に嫌悪感のある方はオススメいたしません。


2周目は幸せになります11.5





「どんな環境でも人間は学ぶ権利がある」


アメリカの大学にいた頃、とある教授が言った言葉だった。

小さい頃から自分は何事も周囲の目を気にしていた記憶しかなく、それは幼少期に両親から植え付けられた躾が関係しているのだと理解していた。
元々代々貿易商を営んでいた家系の影響で張(チャン)家はあまり定住した国が無かったという。
まるで流浪の民の様だと内心揶揄った事もあったが、ある時持病を患っていた祖父が倒れてしまいその街の病院に運ばれた。
元々心臓が弱い祖父が無理をし、海外を飛び回ったツケが来たのだと両親は言い結局永住する事になったのがこの韓国だったらしい。
その影響だとは思わないが、国に馴染めなかった自分は生まれ故郷のアメリカの大学を選んで渡米し、気付いたら何故か医学を学んでいた。

「何故医学なんて・・・」
「貴方はチャン家の跡を継がなければならないのに」

――だからだよ。

そうとは言えずに、曖昧な返事だけを残し飛行機に乗った事を今でも覚えている。

昔から医療に興味はあった。

だが現実は疲労ばかりが増して儲けは予想より遥かに小さい。
リスクばかりが積み重なり、はたしてこれは割に合っているのか?とさえ不満を抱く様になった。
“商売も時と場合によっては損するだけだ。”
などと実家の仕事を揶揄していた自分が両親に弱音を吐ける訳もなく、悔し泣きしながら仕事をした過去もある。
自分が費やした労働に何時も見返りを求めているそんな精神も嫌だった。

「そんな事ばかりしていたら何時か無駄死にをしてしまうよ」
「私の考えはおかしいのかもしれないですね」

両親の呆れた表情が今も記憶に残っている。

数年経ち苦笑気味に話せる様になったのは、最早自分に何の期待もしなくなった両親に気付いたからだろうか?

だが、今それが幸せだと実感出来る。
縛りの無い人生は何てこんなにも清々しいのだろう。
漸く籠の中から出れた様な開放感さえ感じていた。

暫くしてチャン家は姉夫婦が継ぎ、そろそろお前も落ち着いたらどうだ?との手紙に今度はそれかとため息を吐きながらも細胞膜再生の論文で博士号を取得していた自分は、韓国のとある病院の医師募集の求人を知り数年ぶりに帰るかと転勤希望を出した。






そんなある日、同僚の1人がイベント会場で怪我をしたという。
運ばれたのはこの病院でチャンが出勤するや看護師が顔を真っ青にしこちらを振り返った。

「ユ先生が・・・!」
「え?ユ先生ですって?!」

ユウンスの名前を聞き何故か背中に水を掛けられた様な寒気を感じ急いで病室に向かったが、室内からは何も感じない程に静まり返っている。
無意識に嚥下し病室の扉をゆっくりと開けると、そこには何時も笑顔で話しかける彼女からは見た事が無い程に真っ白になった顔色と、閉じたままの瞼に整った顔のせいかマネキンが置かれてある錯覚さえ感じた。

「・・・どうして?」

看護師の話では、週末開催された医療イベント会場におかしな男が入って来て刃物を振り回していたという。
近くにいた数名が負傷し、ウンスは倒れた際に企業ブースの衝立が倒れその下敷きになったという事だった。

「それでもユ先生はまだそれで良い方で、その男はどうやら爆発物を所持していたらしく、会場のガラスなどが吹き飛んで警察部隊などは重症者も出た様ですから」
「今、ご実家の方がこちらに向かっていますが大邱市からでしてあと1時間は掛かるそうで・・・あ、でもあの男性・・・」
「男性?」
「ユ先生の恋人だと思うのですが・・・。暫くユ先生の様子を見ていたのですが直ぐ帰ってしまいまして・・・」
「・・・そうですか」


「・・・・・何故?」

数日経ってもユウンスは意識が戻らない。
しかし精密検査をしても異常は無い為静まり返った病室内にピ、ピ、ピと機械音だけが鳴っている。
チャン医師がベッドの横にあるパイプ椅子に座っていると看護師が入って来た。

「そういえば、あの男性来ていませんが・・・何かありましたか?」
「え?ユ先生の恋人の?そういえば確かに・・・」

あれからその男性も面会にも来ていない。
どういう事なのか?



「・・・もしかして、何かありました?」

質問した相手が答えない事も理解しているのに、チャン医師は静かに眠っているウンスに話しかけていた。
あれきりあの男性はウンスの見舞いには来なかった。
慌てて走って行く顔は悲壮感で今にも彼の方が倒れそうになっていたと看護師からの情報だったが、だからといって2人がどの様な関係だったのかは自分は知らない。
そこまでユウンスとの関係も深い訳でもなかった。


――なのに、倒れた彼女を見て何も出来ない自分に腹を立てているのはどういう事なんだ?



勤務中にユウンスの意識が戻ったとの連絡を受け、精密検査が終了した頃チャン医師はウンスの病室に向かおうとした。

だが。

曲がり角を曲がる寸前男女の会話が聞こえ足を止めた。それは何やら落ち着きない様子さえ漂わせている。

「・・・今の、まさか恋人?」
「・・・・・」
「まあ、いいわ。私には関係ないものね」
「・・・・・」
「ところで、私はまだ貴方のご両親に挨拶さえ出来ていないのよ?早く行かなければ、妻として恥ずかしいわ――」

だんだん近付く会話に佇んでいると目の前を急いで通り過ぎて行く2人の男女がいた。
どちらも病院には似つかわしくないインテリなスーツ姿と匂いに思わずチャン医師の片眉が上がってしまう。
前を歩く男性はただ黙り後ろの女性だけが構わず話し続けている。
向かった先は出口で患者の面会だったのだと理解した・・・が。


・・・この先は・・・。


チャン医師が廊下を曲がって進む先にはユウンスの病室がある。
足を進ませて行くと、女性のすすり泣く声が聞こえてきた。

―――まさか?

病室に入る前にチャン医師は後ろを振り返っていた。

あの男女・・・。

いや、あの男は・・・。

ユウンスが意識不明になった途端面会に来なくなった恋人。
おそらくユウンスの状態を病院からでも連絡を受けたのかもしれない。
しかし、隣にいたあの女性は・・・。


”妻として――”だと?


そんな恋愛経験は多くはない自分だが、有り得そうな想像と病室から聞こえるウンスの鳴き声でチャン医師は手を額に当て深い溜め息を吐き出した。





ユウンスという人間は意外と弱い部分を持っている。
だが、自らの環境に不満を持ちそれに刃向かう様に違う道へと進んでいた。


「諦めないで下さい。ユ先生の人生は貴女のものなんです」


時々、過去が振り返し荒ぶりそうになる彼女にチャン医師はそう言う。
自分も似た様な環境だったと話すとウンスは真っ直ぐ見つめて来て、

「チャン先生もですか?」

と聞いてくる。

「はい。漸く解放された気持ちになれたのは数年前でした。だから、ユ先生も夢があるならまずそれだけを見つめて下さい」

過去など過ぎれば、何時かは笑って語れる日になります。

「・・・そうよ、そうですよね」



―――貴女は泣いてはいけない。
笑顔の人生を歩んで欲しい。
どうか、幸せな人生だったと
私に示して欲しい。



寂しそうなウンスの表情が徐々に前の様に戻っていくのを見て、
チャン医師はそうですとにこりと頷いた――。





⑫へ続く
△△△△△△△△△


・・・・・こちらは載せるか迷ったもの。
(別に無くても話は進むので)
個人的にチャン先生好きなので彼の人生書いてみたかった。






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・・・・ふふ、
でもこの記事の何かに気付いた方ははたして・・・。😌