君に降る華(14) | ー常永久ーシンイ二次創作

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ここからは、原作と少し違う展開になります。
原作が好きという方は違和感を感じるかもしれません。それでも良いよという方はお進み下さいませね(*´`)



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君に降る華(14)



「ユウンス!」

「チェヨンさん?!」


光の中から出て来たのは何故かとても美しい女人で、

しかも隊長はその女人を抱き締めている。


少し離れた場所でその光景を見ていた隊士達や王様達は、唖然と二人の様子を見ているしかなく誰も声が出なかった。

だが、中に入らなかった隊長にテマンがいち早く我に返ったのか何だ?!と叫んだ。

「え?あの女人が神医?!」

その言葉にチョイルシンはそんな馬鹿な、と頭を抱えている。

「いやしかし、天門を通って来たのだ。何か治療法を知っている筈です!」

今だにヨンが抱き締めている女人が神医には見えないが、あの光から出て来たのだから天界の者に間違いない。
早く宿屋に戻り、王妃を助けて頂かなくては。

「隊長!」
離れた場所からのチュンソクの呼ぶ声に漸く今の状況を思い出し、ヨンはウンスの身体を離した。

「・・・あ、すまない」

まだポカンと呆けた顔をしてヨンを見上げていたウンスだったが、周りの景色やヨンの後ろにいる隊士達を見渡し、まさかと叫び再びヨンを見る。

「・・・ここ、高麗?」
「ああ」
「また来たの?!」
「ユウンスがここを考えていたのだろう?俺にはあの道に霧の膜が見えたぞ」
「・・・考え?・・・あぁ、そうだった!」

そう叫ぶとヨンの身体を上から下まで確認し、何も無い事に長いため息を吐いた。

「あの後、急に行けなくなったからチェヨンさんかあの場所に何かあったのかと思っていたのよね」

「・・・やはり、ユウンスは頭が良いな」

ウンスの言葉にヨンは苦笑しか出ない。


――理由を話したら、この者は何と言うだろう・・・?


ヨンは後ろを振り返り、今だ呆然と此方を見ている隊士達を確認し再びウンスに顔を戻した。

「・・・ユウンス、医者には?」
「なったわよ。外科だったけど、今は美容整形外科に移ったばかりで・・・」
「げ・・・では、人を治せるのか?」

ヨンの先程とは違う真剣な眼差しに、ウンスも眉を顰めてしまう。

「怪我人がいるの?」
「王妃が首を切られた」
「首ですって?」
ウンスは驚き口をまた開けてしまう。

・・・やはりウンスでも駄目なのだろうか?

難しそうな表情に変わり黙ってしまったウンスを、ヨンも何も言わず見つめている。


「・・・無理か?」
「診てみないとわからないけど、・・・道具が足りるかしら?」
「道具とは?」
「手術道具よ。でも他も足りないわ・・・」
「チャン侍医もいる。何が足りないか言ってくれ」
「そうじゃなくて・・・」

医療機器が足りないと言っているのだが、おそらくヨンに話しても一つも理解は出来ないだろう。
手術道具が無い訳ではない。しかし、これももしもの為に常備していただけで全て揃っている訳でも無い。

ウンスはくるりと首を祠に向けると、自分より少し背の低い石の祠がありその奥にはうっすらと今迄歩いていたソウル市が見えている。背を屈め中を見ようとしたが、腕をヨンに掴まれてしまった。

「待て、ユウンス!」

「一旦戻って足りないのを取ってくるから・・」
「駄目だ」
「どうして?道具が揃っていないと・・・」
「今ある道具でしてくれ」
「は?」

「・・・霧が消えてしまうかもしれない」


――消えたら。

再びウンスとは会えなくなってしまう。
それはもう無理だ。

ヨンの言葉にウンスは少し考えていたが、

「・・・わかったわ、とりあえず診てみましょう」
「頼む」

頷くウンスにヨンは小さく安堵の息を吐いた。


――再びウンスが中に入り、
この霧が消えてしまうのを見るのは今の俺には耐えられない。




――・・・二人は何の話をしているのか?

大人しくなった彼らをまだ遠くから見守っていた迂達赤隊だったが、二人が此方に歩いて来て何故か身構えてしまう。

あの赤い髪の女人は一体誰なのだ?

二人を見ているとお互い知っている様だが、まさかあの隊長が女人と慣れた様子で会話をし、更にはその女人を抱き締めた事にも理解出来ない。
今迄妓生や重臣の娘達が近付いても、嫌そうに睨み付け会話も続かなかったあの隊長が?

ヨンの後ろにはあの中から出て来た女人がいる。
・・・何が起きたのか?

皆はヨンとウンスを交互に見ていたが、先に声を出したのはチュンソクだった。

「隊長、一体・・・?」
「この者は医者だ」
「は、はぁ・・・え?・・・神医、ですか?」
「“神医?”何それ?」

テマン達の女が神医?!との声に、ヨンの後ろからウンスが不思議そうに尋ねて来たが、見つめられたテマンはビクリと肩を跳ねさせ隠れてしまう。
だが、ヨンは後ろを振り返り大丈夫と話し掛けて来た。

「此奴らは迂達赤隊だ」

確かヨンが数年前に愚痴を零していた部隊があったが、そう言いながら現在も彼がこの部隊を指揮しているという事なのだろう。
彼は次に隊士達が護る様に囲っている王様を紹介して来たが、彼もまた何も言わずウンスを不思議な眼差しで見つめている。ウンスはどうしたものかと、考えていたが背中にあるバッグを思い出した。

「ま、まぁ、今は王妃様よね?何処?」
「山を下りた所に宿屋があり、そこにいる」
「山を下りるの・・・?」
私ハイヒールなんだけど。

爪先をトントンと鳴らすとヨンが気付き、冬とは違う履物に気が付いた。

「歩き難いのか?背負うか?」

「ッ、結構よ!」

隊長が女人を背負う?!

再び迂達赤隊達はそんな会話に驚愕したのだった――。




宿屋に到着し、王妃がいる部屋に入るとヨンの隣りにいるウンスにチャン侍医と付き添いの女人は驚き硬直している。
てっきり男だと思っていたが、来たのは若く見目が良い女人でとても神医には見えないのだ。

「・・・隊長?」
「医者だ」

「・・・・・」

チャン侍医はちらりと隣りにいるウンスを見て、顔を顰めヨンに戻した。

「隊長」
「兎に角、王妃の傷をウンスに見せてくれ」

チャン侍医からはウンスに対する不信感がありありと感じたが、今はそんな事に構ってはいられないとウンスを見る。

「診てくれ」
「大丈夫かしら?」

寝ている女性の横に立つ男性は、確実にウンスを怪しんでいるとわかるのだが?

そろそろと王妃に近付き、首に当てられた布を剥がすと10cm程の切傷と更には中の血管が綺麗に切られている。

「・・・意識を失ったのは?」
「切られた時に」
では、意識を失い暫く経っているという事か。

出血も激しかった様だが来る迄にヨンの話では、血流を止めたという。話の中での雷功だの気の流れだのと意味はわからなかったが、とりあえず今は大丈夫の様だ。

「・・・あぁ、やっぱり少し足りないかも・・・まぁ、何とかするしか」

そう言いながらウンスは背中に背負っていたバッグから小さな箱を取り出した。
更にそれには錠が掛かっているのか、違う場所から鍵を取り出し箱を開けると、中からは長細い棒や金属の見た事が無い形の物が幾つが入っていた。

「これが道具・・・?」

小さい刀か?
ヨンの質問に、ウンスは準備をしながら苦笑している。

「・・・これは、またここに来るかもしれないと考えた時の為の物だったのよね」
「何故?」
「だってチェヨンさん、何時も傷を作っていたじゃない。
しかも何もせずに放置しているし、最終的に感染症を起こして腕が使えなくなるわよ?」

ウンスは何時も道具を持ち歩いていた。
何時か高麗に来た時、自分の治療をする為に・・・。


再び胸が苦しくなり手を伸ばしそうになる気持ちを抑え、
ヨンは胸元にある髪飾りを強く握り締めた。



ウンスが道具を取り出しながらチャン侍医に指示を始め、チャン侍医はどうやらヨンの関わりある女人だと気付いた様で、そのうち何も言わずウンスに従い動き出している。


刺客の襲撃で荒れてしまった部屋の中、
眠る王妃の傍では治療する二人と忙しなく動き回る女人がいたのだった――。



治療を始めてから、どの位経ったのか――。

ヨンが座ったままその様子を見ていたが、ウンスがチャン侍医に頭を下げ長い息を吐き出した。

「まだ意識が戻らないし、安静にしてあげないと駄目ね」
「目は覚めないと?」
「出血量が多かったのでしょう?様子を見ないと・・・」

チャン侍医はウンスが使った道具を凝視し、持ってはカチカチと音を鳴らしている。

「見た事がない」
「メスや鉗子や鑷子は有るけど1種類しかないし、ガーゼも縫合糸も1箱だけ。開創器も無い、何とか出来たけど・・・」


ウンスは疲れたのかうーんと背中を伸ばしていたが、ふとヨンに顔を向けた。

「・・・そういえば、道が通れなくなったのはどうして?」

「・・・ッ」

ウンスの問いに一瞬、動きを止めてしまった。
顔だけをウンスに向けたが、
口が開かず真っ直ぐに見つめて来るウンスを見返すしかなく・・・。

「・・・・いや、あ」


――どう話せば良いのか。


ヨンの言葉を待つウンスと、横目で二人を見ているチャン侍医。


誰も話さない部屋は、
治療中よりも静寂に包まれていた――。










(15)に続く
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ウンスを見守るヨン。

・・・色々あったのよ、ウンスさん。´-`)✨



さらりと手術は流すという笑