言葉は文字の羅列だ。
繋ぎ方ひとつ変えるだけで、同じ意味をもつ言い訳が何通りも出来上がる。
あとはそれを音にするだけなのに、その音にならず、ただ脳内を駆け巡るだけ。
「………」
唇をかみ締めて、恨めしげに見上げる瞳。
反論があるならしてみろと言わんばかりのその瞳から流れる一筋の光から視線を逸らした。
「………俺が悪かった」
「最初からそういえばいいのよっ! 折角楽しみに取って置いたのに!!」
今からお店に行って買ってきて。
そう言って投げて寄越されたのは、コートと財布。
「雨降ってるんですが…」
「知りません。買ってくるまで家に入れないからね!」
背中をグイグイと力の限り押され、玄関から俺を追い出すとそのまま鍵の閉まる音。
おまけにチェーンまで掛けやがったあの女!
「明日じゃ駄目か?」
ドア越しに許しを請うてみると、チェーンがついたままドアが開く。
覗いた彼女の瞳には相変わらず涙が浮かんでいて。
「駄目」
「…せめて傘をくれ」
無言で差し出された傘を受け取ると、俺は降りしきる雨の中を歩き出した。
(食べ物の恨みは怖いな)
男がどんな理屈を並べても、女の涙一滴にはかなわない。
by.ボルテール