ああ、どうしてくれようか。
キョーコには、ジッと見つめる癖がある。
リアルすぎる人形や忠実に作られたそれらの服を作るのが趣味だと知ったとき、それは見つめているのではなく観察しているんだと気付いた。
観察して、何かを得ようとする無意識の行動。
仕事柄、見られるのは嫌いじゃない。
でも、度を越えれば居た堪れなくなってしまう。
「…俺に何かついてる?」
「何もついてないですよ」
「そう」
ちらりと向けた視線と共に問えば、何でもないと答えが返ってきた。
だが、観察を止めようとはしない。
「そんなに見つめるほど俺っていい男?」
ちゃかして困らせれば、照れて視線を外すだろうと思った。
見惚れるほどの笑みといつもより低く甘い声音を使えば、頬を染めてそっぽを向く、はずだったのに…。
なのに、どうしてこういうときに限って予想を裏切るんだろうこの娘は。
「好きだな、と思いまして」
「ッ!」
照れもなにもなく淡々と告げるキョーコの言葉に、思わず手に持っていた台本を落としてしまった。
早く拾わなければ、頭の片隅でそう思っているのに身体が動かない。
頬を染めたのはキョーコではなく、俺だった。
(ああ、もうっ!)
みるみるうちに頬を赤く染めてうろたえ始めた俺を見て、キョーコは数回瞬きをすると満足気に口許を緩める。
そんな表情にすら心を奪われそうになって、台本を拾う振りをして俺はキョーコから視線を逸らした。
「どうしてキミはそうなんだ。俺、心臓もたない」
ボソボソとした小さな声で言ったはずなのに、二人っきりの部屋ではやけに大きく聞こえてしまう。
「私、何かしましたか?」
「…したよ。それはもう、王子のハートを射抜くような台詞を言いましたよお姫様」
この意趣返しは、吐息を奪うほどの口付けなんかじゃ、絶対に足りない。
ああ、ホントにどうしてくれようかっ!