ゆっくりと吐き出した息は、白くなって暫くすると霧散した。
(…寒い)
声にすると余計に寒くなりそうだったので、心の中に留めておく。
コートのポケットに突っ込んだ手も、寒さに熱を奪われていきそうだ。
待ち人が早くくればいいのにと、辺りを見回すが鬱陶しいぐらいの人ごみしか視界に入ってこない。
きっとこんな中から人ひとりを探し出すなんて、難しいはずなんだけれど。
何故だろう、すぐに見つけてしまう。
(いた…!)
人ごみを掻き分けながら息を切らしてこちらに向かってくる姿が見えると、思わず口許が緩んでしまった。
それを見られたくなくて、グルグルに巻きつけたマフラーで、口を覆い隠す。
「…遅い」
己の元に辿り着いた待ち人に、ぶっきらぼうに告げると、予想通りに目尻をしゅんと下げて「ごめん」という。
ああ、そんな顔も好きだけど今はもっと違う顔が見たい。
「ほら、行くぞ」
寒さで赤くなっている手を無理矢理掴んでポケットへと導いた。
少し驚いた顔をして、それから寒さの所為で朱に染まっていた頬をさらに濃くするアイツ。
「あけましておめでとう。今年もよろしくね」
「仕方がねぇからよろしくされとく」
「うぅ。去年は迷惑かけたけど…今年こそは!多分大丈夫だ、と、思う?」
「なんで疑問系なんだよ…。まあ、お前の迷惑は嫌いじゃないから別にいいよ」
ポケットの中の手をギュッと握り締めて言うと、少しだけむくれた顔をしてそれから嬉しそうにはにかんだ。
それにつられて、自身の顔も緩んでいるだろう。
もっと君が俺を好きになってくれますように。
もっと俺が君を好きになりますように。