だって、ずるいじゃないですか。
私だけこんなに心を揺さぶられるなんて。
故意じゃなのは、分かっています。
それでも思考をどす黒い感情で支配されてしまった私は、とても醜い顔をしているでしょう。
こんな私を見てほしくないんです。
でも、貴方はお構いなしに近付いてくるから。
少しでもいい、この『オモイ』を感じ取ってくれるのならば。
私の気持ちも、はれるのかな?
『好き』
耳に残るのは、甘さを含んだ低い男性の声。
声の主は、目の前に真摯な眼差しで佇んでいた。
耳が声を拾って、脳へと送られる。
言葉の意味を、理解したくない。
理解しては、いけない。
冗談にしようとしても、目の前に立つ人物がそれを許してくれなかった。
どうしてですか。なぜですか。知ってるじゃないですか。
私の、パンドラの箱。
貴方が知らないはず、ないじゃないですか。
(なのに、触れるんですね…)
触れてないで、開けないで、ずっと態度で示していたじゃない。
どうして、分かってくれないんですか。
もう失いたくないんです。
私が、私でいるためには、この感情に振り回されるわけにはいかないんです。
「もう一度言うよ。君が好きだ。俺の恋人になってください」
ドッキリでも冗談でもない、と先に言われてしまった。
そんなの貴方の眼を見れば分かります。
気付いてないでしょう、その眼は以前見たことあるんですよ。
好きな子がいるって、愛しいって教えてくれたときの眼と一緒です。
(好きって言えたらどんなにいいだろう…)
貴方の想いに答えられたらどんなに幸せだろうかと考える。
考えて、考え抜いて出た答えは恐怖でしかない。
永遠なんてないのだから。
アノ最悪ノ結末ハ、モウ二度ト味ワイタクナイ。
「…ごめんなさい」
出てきたのは、否定の言葉。
当たり障りのない、断り文句を並べてゆっくりと頭を下げる。
一瞬だけ目端に映った貴方の顔は、無表情で傷ついた眼をしていた。
そして私は背を向け、その場から立ち去る。
酷く醜い笑みを浮べて、呼び止める声を無視した。
私ばかり、こんな苦しい思いするなんてずるいと思うんです。
だから少しでも同じ思いを感じてください。
失う、痛みを。
(………でも、本当に同じ『痛み』なのかしら?)
ねぇ。その痛みはやっぱり、くるしいですか?