若いお客さんから「お姉さん、俺と付き合わない?」と無理なお誘いが。
「えー? どうしよっかなぁ~」
「いや、マジでいい女だわ……今度一緒にべつのところで飲みに行こうぜ!」
「ふふ、考えとくね♪」
という会話をしていたら、後ろからいきなり頭を叩かれました。
「痛っ! 誰よぉ……って、あら、社長じゃないですか!」
振り向くとそこにはお客さん(社長)の姿が。
「あはは、悪いねぇ。この子うちのなんだわ」
そう言って私を指差して腕を掴まれて社長の席に連れていかれました。「ちょっと、社長!? まだ他のお客さんに接客中なんですけど……」
「まあまあいいじゃないか。今日くらいはさ。店長には話をつけてるから。」
「むぅ……仕方ないですね」
そんなわけで私は社長の隣の席へ座ることになりました。
そしてそこから1時間ほど。
「ん……ううん……」
「おいおい、大丈夫か?」
「はいぃ……なんとか……」
「お前酒弱すぎだろう」
「だってぇ……美味しいんだもん……」
私は社長の隣に座ってからというものの、次から次へと勧められるままにグラスを空けていきました。
最初はビールだったりカクテルとか飲んでたんだけど、途中から焼酎のお湯割りを飲み始めて……。
そしたら段々酔いが回ってきて頭がぽーっとしてきたのです。
でも気持ち悪くはないんだよねぇ……むしろいい気分っていうかさぁ。
なんかこう身体の奥底からフツフツと湧き上がるような感じというかなんというか。
「うふふ……社長ぉ……」
「なんだ? 水か何か飲むか?」
「はいぃ……お願いします……」
「ほれ、ゆっくり飲めよ」
「ありがとうございますぅ……ごくっごくっ……ぷはぁ~!」
「おお、良い飲みっぷりだな。ほれもう一杯」
「いただきますぅ……ごくっごくっ……」
ああ、おいしいなぁ。もっと欲しいかも。
「おいおい、あんまり一気に飲むと悪酔いするぞ」
「だいじょうぶれすよぉ……わたしこうみえてもお酒強いですしぃ……」
「そうなのか? だが酔っぱらいはみんなそういうんだよなぁ」
「失礼なぁ……わたし本当につよいんですよぉ……それにしても社長もいけるくちですよねぇ。こんなに飲んで平気なんてぇ」
「まあそこそこにはな。しかしお前の方がかなり飲んでいると思うが。顔色一つ変えずにグビグビいくんだものなぁ」
「えへへ……じつはそうなんですよぉ。わたしってば結構イケる口なんです。だからまだまだ行けちゃいますよぉ?」
「ほう……ならもう少し付き合ってもらうとするかな」
「もちろんいいですよぉ。じゃんじゃんいきましょう。じゃんじゃかじゃんじゃかじゃかじゃん♪」
私は調子に乗って謎の歌を歌い始めました。
「おいおい、ずいぶんご機嫌だな」
「そりゃそうですよ。だって久しぶりにこうして社長と一緒に居られるんですからぁ。すごく嬉しいんです。わたし」
「久しぶりって、たかが一週間程度じゃないか」「それでも私にとっては長いんですぅ。社長がいなくて寂しかったんですからね」
「そんなこと言って。本当は男ができたんじゃないだろうな?」
「ぶー! 違いますよぉ。どうしてそんな事言うんですかぁ」
「だってお前可愛いしさ。俺以外にも狙っている奴がいるんじゃないかと思ってな」

「まさかぁ。社長ったら冗談キツイんだから。私が男の人にモテるはずがないじゃないですかぁ。自分でいうのもアレだけど、私は全然可愛くないし、太ってもいないけど痩せてるわけでもない中途半端な体型だし。胸だって大きくないですし。背だって低い方ですし。性格だって明るいとは思いますけどお馬鹿ですし。頭悪いし。仕事だって出来ないし。要領悪いし。何の取り柄もないですし。そんな私を好きになる人なんているわけないじゃないですか」
「いやいや、俺は好きだぞ。お前のこと」
「またまたぁ~、社長ったら。そんな嘘つかなくても大丈夫ですよぉ。私だって社長のこと好きですから。大好きです。愛してるといっても過言ではありません。結婚して欲しいくらいです。私もう21なので早く結婚したいなぁ~って思ってるんですよねぇ。あ、そうだ! この際結婚しません? 今すぐ役所に行って婚姻届貰いに行きましょうよ。そしてさっさと提出して夫婦になりましょ? そうした方がお互い幸せになれますよきっと。うん、それがいい。善は急げといいますし早速行きましょう。大丈夫、心配しないでください。私こういう時のために貯金してあるので。ほらほら、さあさあ」⬅こんなことを言っていたと社長から後で聞きました。私は全然覚えてませんでした(笑)
私は立ち上がって社長の手を掴んで引っ張ろうとしたけど上手く力が入らなかったのか、椅子から転げ落ちてしまいました。「おいおい大丈夫か?」
「あいたた……ちょっと力が入りませんでした」
「無理するなって。今日はもうここで仕事切り上げて帰るぞ」
「えぇ~、まだ飲み足りないですよぉ」
「駄目だ。飲みすぎだお前。ほら、タクシー呼んだから一緒に帰ろう。」
そして仕事を早退し社長とタクシーに乗り帰りました。