日々銭湯の魅力を発信しておられる、京都在住フリーライターの林 宏樹さんによる新著(淡交社 発行、3/24発売)。
(林さんによるウェブサイトはこちら→『お風呂屋さん的京都案内 』)
2004年発売の『京都極楽銭湯案内』が、京都のお風呂屋さんをカラー写真もふんだんに紹介している銭湯ガイド本と称されるのに対し、今回は、銭湯にまつわる知識のあれこれを深く掘り下げることができる、味わい深い1冊となっている。
平成18年に京都新聞で計23回のコラムとして連載された内容に加筆修正された本書は、
銭湯を建築としてとらえたり(地方や時代によって建築様式にもカラーがある)、
タイルなどの内装を美術としてとらえたり(このタイル絵が見事!)、
利用する地域の人々をとおした民俗(銭湯を利用する人々や、地域文化と銭湯とのつながり)、
そして地域活性のコミュニティの場としての銭湯(最近では銭湯を会場としたイベントも増えている)
など、実に幅広く興味深い内容。
あえなく廃業となり、ぽつぽつと、趣ある建物や価値あるタイル絵が失われてゆく昨今。
銭湯をイベントスペースとして提供されるバイタリティ溢れるお風呂やさんや、地道な普及活動を展開される京都銭湯部さん、そしてこうして読者に情報を提供してくれる林さんなどの存在に加え、大切なのは、私たちひとりひとりが銭湯を利用すること。
頻繁でなくとも、「あ、なんかそろそろ行ってみたい」そんな感覚がきっと貴重なんではなかろうか。
あとがきに、「身近な方に『京都の銭湯ってなあ』と、ちょっと話したくなっていただけたなら、とても嬉しく思います」とあるけれども、きっと、この「誰かに話したくなる」という気持ちは大切なんだと思う。
どんなことでも、そこから始まるような気がするから。
個人的には、国の登録有形文化財にも指定されている船岡温泉が、とっても気になる。
浴槽の底に鯉や蟹や貝の形をしたタイルを散らしてあるお風呂屋さんも気になる。
お風呂屋さんのいたるところにある、使い込まれたプラスチック素材のレトロさ加減も好き。
林さん、ついついいろんなページに行きつ戻りつしながら読み込んでしまう素敵な新刊、ありがとうございます。
夏のイベント『ふろいこか~2011』も楽しみにしていますよ!