辛い記憶しか残っていない景色というものは、ある。

たまに通りかかる時は、眼球だけを気忙しく動かし、顔はまっすぐに前を向いたまま一瞬で通り抜ける。



そんな景色の中を、今日はいくらか上向いた気持ちで自転車を走らせた。

そこから目と鼻の先のホームセンターに買い物に行ったからだ。

30cm四方の人工芝を3枚、ミニ懐中電灯をひとつ。

人工芝は艇庫の自分のスペースに敷き詰めて道具をキズから保護し、艇庫の一番奥まった場所にあるそのスペースで作業するときに懐中電灯を点ける。

たったこれだけの買い物に心躍らせ、芝は毛足が長いほうがいいとか、小物を掛けるフックも買おうかとか、ホームセンターで半日過ごした。



吹いた風は、確実に流れていくのだね。