本をしこたま仕入れた。

休み中に読み切るのは難しそうだけども。

第一弾

『幻の光』宮本 輝

この人は関西出身で、戦後の大阪や阪神間を舞台に、物憂く優しい小説を書いてくれるから、気に入っている。

登場人物は、決して甘い人生を送るわけではないしむしろ逆で、優しい物語ではないんだけども、彼らに寄り添うことができるような気がして。

描かれる情景や空気が煌めいていて、この人の生み出す世界はなぜこんなに綺麗なんだろうと考えた。

思うに、戦後間もない、お金もモノもなかった時代。

ひとの心しか頼るものがなかったから、その陰影が際立つのかもしれない。

そしてそんな世界は、たとえ幼い時分にでも同じ時代を実際に生きていなければ、決して描くことはできないんじゃないか。

宮本輝のほかの作品を読んだときは思いつかなかったけども、今回、表題作の『幻の光』を読んだら、BGMがゆるりと流れてきた。

ちあきなおみの、『喝采』。

思えば彼女も、人生の物憂さを見事に謳い上げたひとです。