1面は「投稿記事」です。

―施設「このゆびとーまれ」(富山市)訪問記―

人は建物じゃなくて 人に集まる

    佐藤 信江

閑静な住宅街に案内板を見つけてから回ること数分、やっと見つけたのは予想外のありふれた民家でした。11月23日、祝日にもかかわらず多くの利用者のにぎわいが玄関口にまで伝わってくる。室内に入ると数人の方が思い思いの姿勢でなごんでおられる。テレビを見ているお年寄り、ティッシュを際限なく丸めている娘さん、無心に折り紙を折っている女性は50代かな? それぞれが別々のことをしながら、何となくまとまっている感じ。 

 部屋の奥にはダウン症と思われる4~5歳の幼児が横たわっている。「前もって知らせて頂けると案内もできたのですが・・・」と申し訳なさそうに言って下さったのは代表の惣万(そうまん)さん。この施設は看護師を退職した彼女が仲間3人で立ち上げられたとか。

ショートステイもできる向いの建物には何人かのお年寄り、奥の部屋では中学生らしい子どもたちがテレビゲームに興じている。帰り際に3年生くらいの小学生が人なつっこく話しかけて来てくれました。「赤ちゃんからお年寄りまで、障がいがあってもなくても、ひとつ屋根の下で『家族』のような温かい時間を一緒に過ごしてみませんか?」とうたう通り、昭和の大家族のような雰囲気でした。車で10分ほど離れた場所にある「このゆびとーまれ茶屋」では、ショートステイ、グループホームも。ほんの数分の、それも“飛び込み”の見学ともいえない見学でしたが、気軽に奥の部屋まで通してくれ、どの職員さんも笑顔で応対してくれたのが印象的でした。   (このゆびとーまれ全景)

 清々しい気持ちで外に出れば初冬の青空。遠くに見える雪を頂いた白山連峰。肩を寄せ合うように暮らす富山平野。厳しい冬を乗り越えるためにもホットな寄り場とつながりが大切にされているのです。そのお手本のような施設「このゆびとーまれ」。市民が行政を動かし、民営だからこそできる温もりのある運営をしているのではないかと推察しました。「富山型」地域の財産ですね。枚方もこうありたい。

*****************(以上)

「このゆびとーまれ」は、必要なときに誰でも利用できる「民営デイケアハウス」として、平成5年にスタートしました。平成10年には県独自の補助金が交付され、行政と連携した「富山型デイサービス」を全国に先駆けて実践してきました。子供も、お年寄りも、障がい者も、いろんな人がお互いに支え合いながら、地域の中で自分らしい暮らしを続けられるように、小規模であたたかい、「ふつうの日常生活」を「このゆびとーまれ」は大切にしています。

(このゆびとーまれ」パンフより)

 

2面は介護学習会の報告です。

介護学習会 参加報告

1126日(日)「介護問題を考えるつどい」(同実行委員会主催)が開催され、参加しました。学習会の基調報告では、2025年には団塊の世代が75歳になり、高齢者人口はますます増え続けるのに対し、政府は、「地域医療・介護総合確保推進法」(2014.6月)で「住み慣れた地域で住み続ける医療から、介護・在宅へ」をスローガンにして、医療費抑制、介護費抑制の方向をますます明確にして来ていること。利用者負担も1割負担から3割負担へ移行する方向が示されていること等が報告されました。

すでに、介護保険制度では要支援1・2の方の訪問介護、通所介護は自治体の事業に移行されてしまいましたが、今度は介護度2以下を保険によるサービス提供から外し、自治体が行う施策への移行を目論んでいます。

近隣の小規模事業所から大手企業の参入へ

  また、この政府方針に併せるように大手資本が利益追求を目的とした医療・介護への参入の準備を始めています。日本郵便がIBM・アルソック・電通・セコム・NTTなどと共同で高齢者支援新会社の設立を計画しているようです。

また地域を1つの施設とみたて、病院とすべての介護施設をパッケージとした巨大法人の創出や、東京では、保険の対象者とその家族等をひとまとめにした混合介護が開始されています。

 この結果、小規模事業所は、地域から一掃され、淘汰されると危ぶまれています。

 介護からの卒業

更に今年は、介護保険制度の改定が行われますが、その狙いは、介護保険法の目的を「介護からの卒業」に変更し、介護ロボットの導入やコンピューターを使ったケアプランの作成など、これまで人が担ってきた仕事をコンピューターが行うといった政策です。

いったい、「人の生死、尊厳」にかかわる問題をコンピューターに任せられるのでしょうか。

税制インセンティブ付与(出来高制)の問

これは自立支援の成果を市町村ごとに比較・公表し、市町村を競争させ、交付金に差をつけるという制度です。

「要介護状態からの改善・卒業」が主たる目的にされます。加齢とともに体力・気力・知力が低下するのは当りまえなのに、自立を目的とした無理が繰り返えされると、かえって重症化を招いてしまいます。

模範例として報道で紹介された大東市では、無理に介護度を下げて状態を悪化させた例が発生しています。また1、2月頃には介護報酬単価も発表予定です。枚方市においても現在、「ひらかた高齢者保健福祉計画21(第7期)」(2018年4月から3年間)が策定中であり、今後その内容の検証が必要になってきます。

参加者からは、大東市の事例について市の職員や市民はどう考えているのかという疑問。自治体の職員は、市民の立場に立って相談にのり問題を解決する姿勢があるのかという疑問。

また事業所の参加者からは、自治体は、介護人材の確保、育成にもっと力を注ぐべき。

議員に求められるのは、市民の具体的な要求で行政に迫っていく姿勢。それにより説得力のある追及が可能となる。

との声があがりました。

締めくくりとして、今後の介護を巡る情勢を睨みながら、行政主導の施策ではなく市民目線で、市民と共に国に対してものを言っていく自治体をめざして、利用者も介護者も、事業者も一緒につながりながら取り組みをすすめて行くことが大事と確認した集会でした。(松田 久子)